「アメリカの国立公園、国有林における持続可能な森林管理のための法制度〜その歴史、政策、文化」
CharlesF.Wilkinson氏
(アメリカコロライド大学ロースクール教授)
6月28日札幌市・共済ホール
合衆国は、国土の27%を越える6億5000万エーカー(2億6000万ha・日本の約7倍)を所有してい る。国有地の中で森林は高い価値を持つ資源である。国立公園は7,900万エーカー(3,200万ha・日本よりも広い)あり、ほとんどは森林に覆われている。森林局が巨大な広さの森林を管理しており、その広さは1億9,3000万エーカー(7,720万ha・日本の倍以上)に及ぶ。
70年代から始まった環境保全の立法は、国有林の森林伐採を減少させていった。これは生物多様性、絶滅危惧種の保護、原生自然の保護など認識が広まった結果である。
国有林管理法(NFMA)
1976年、国有林管理法が制定され、持続性を基礎とする国有林管理という現代的考えが芽生え始めた。国有管理法が目指す大きな目的の一つは、森林伐採や林道建設などによって森林や沢が荒廃することを防ぐことであった。この法律でも皆伐は否定されていないが、そうしなければならない場合のみの手段とされている。
この法律はまた、国有林によって保護されている動植物の多様性の維持をも要求している。1997年、農務省長官は新しい森林管理の規則制定に関して、科学者委員会を設置し、諮問を求めた。この委員会は二つの大きな点について答申を行い、2000年に新規則が制定された。新規則の重点の一つは動植物の多様性のために強力な保護を与えること、もう一つは自然の持続性の保持について、森林管理局に大きな責務を課したことである。
絶滅危機種法
1973年、絶滅の危機にある種の保護法(ESA)を制定した。ESAは森林伐採にあたり、大きな影響 を与えている。森林管理局は木材生産にあたり、指定種の生存を脅かし、あるいは、それらの生息地を改変するようなことは禁止されているからである。
現在ESAによって指定されている種は約1,200種の動物と750種の植物であり、それらの多くは森林を生息、生育地としている。まさにESAは、国有林における森林伐採の大きな歯止めとなっている。
国内環境政策法(NEPA)
この法律は1970年に制定され、連邦政府の環境政策全般に影響を与えている。法によれば連邦職 員は環境に大きな影響を与える行政行為に関して、詳細な環境影響評価を義務づけられている。森林管理局は、他のどの機関よりこの影響評価書を作成しなければならず、特に法が求める事前評価によって、森林伐採の影響を浮き彫りにし、広く市民が知る結果をもたらすのである。
国有林における自然の持続性:土地の保護
原生自然地域法
1964年に、原生的自然を保持している地域を保存地域として指定する法律が制定された。
当初9,100エーカー(3,640万ha)を指定したが、その後、森林管理局、国立公園局などの管理する土地をも追加し、現在では1億700万エーカー(4,300万ha・日本の1.5倍)で、アメリカ全土の5%にまでなっている。原生自然地域は現在でも着実に広がっており、これは市民の原生的自然を守らなければならない強い信念に支えられているからである。
ロードレスエリア
2001年、森林管理局は国有林の3分の1に相当する5,800万エーカー(2,300万ha)を、今後一 切の林道などの建設をしないロードレスエリアとして保全するという計画の進捗状況発表した。この結 果、国有林の半分に当たる森林が全く開発できないことになった。国有林はこの結果、原生自然地域 法で3,500万エーカー(1,400万ha)、ロードレスエリアとして5,800万エーカー(2,300万ha) が保護されることになった。
北西部計画
1994年、森林管理局などによってアメリカ北西部(北カリフォルニア、オレゴン、ワシントン)の地域に 対し北西部計画が制定された。この計画は、この地域での森林伐採を大胆に見直し、4分の1まで減 らすこと。この計画は主にマダラフクロウ、サケなどの野生生物を保護することが目的であった。この計画によって原始の森の2,400万エーカー(960万ha)が、あらゆる伐採から保護されることになった。
国立公園制度
国有林と異なり、国立公園では森林伐採は厳格に禁止されている。木材生産は如何なる理由を付けても不可能となっている。ほとんどの国立公園内は原生的自然に溢れているが、細い道路やビジターセンターなどは、訪れる市民のために認められている。国立公園はあらゆる開発から守られているが、「将来世代のために手付かずで守られる」というその歴史的責務は、まだ十分には果されていない。
結論として
私たちは、あまりにも多くの山や川、森林や平野を傷つけてきた。多くの種を絶滅に追いやり、あるいは絶滅の淵に追いやっている。私たちは、世界中の社会を脅かしている地球温暖化の原因にもなっている。私たちは、今、自然の持続性の維持こそがこれからの目標であり、この自然の持続性という考えが、国立公園や原生自然地域の基礎にあったことを。私たちは国有林の中でこ、大きな経済的価値を有するとしてあまりに伐採しすぎてしまったことを反省しなければならない。
(*日本の国有林管理政策は、余りにも無秩序的な政策の下で、天然林が自然の持続性、動植物等の生物多様性や土地の保護(国土の保全)に果している役割を、完全に無視した乱伐と乱開発を行ってきたのかが今回のシンポジウムで明らかにされたことである。
国は国有林野事業に掛かる情報や、国民共通の財産である国立公園内の国有林皆伐事業などを国民に情報提供していない。
また、国民・市民も、国内における天然林が人間の生活活動にとってどれだけ貴重な生きる源の財産と資源であるのか等を、国民自らの問題として考察をしてこなかったことについて気ずかされたことである。 尾田)
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