『死霊のしたたり』(原題:Re-Animator)のスペシャル・エディションが出たのでつい買ってしまった…。メイキングやインタビュー等で特典ディスクが1枚ついてくるのと、出演者たちのコメンタリーがついていた…。
っていうかさ、映画の価値って特典には一切無いんだけど、何で特典につられてDVD買ってしまうかね。ショスタコーヴィチが自分の音楽に対して、「それを評するいかなる言葉よりも、音楽そのものの方が真実だ」みたいな内容の発言をしていて、音楽は音楽によってのみ語れる、言い換えれば、映画は映画によってのみ語れる。という芸術論だが、これってもっともすぎるぐらいにもっともだ。
だから、特典付きDVDなんて何の価値も無いわけよ、本来。あくまでオマケ。ものによっては作品理解を深めるサブテクストになる可能性もあるが、こういう舞台裏って見せないのがプロだ。出来たものだけを見せて、「どうだ、これが俺たちの芸術だ」というぐらいの気概がほしいね。
…なんて言っておきながら、『死霊のしたたり』買ってしまいました…。カットされたシーンとかも入ってるってことだったし、つい。
『死霊のしたたり』ってそもそもヒドイ邦題だけど、内容もヒドイから丁度いいのか。だいたい「死霊の〜」ってチープなタイトルをよくも付けるな、と。いや、それがB級ホラーの醍醐味でもあるんだが、あまりに多いとどれがどれだか分からなくなってくるんじゃないか。Bホラ界で一般的に「死霊」はゾンビ、あるいはリビングデッドの訳語として用いられているが、「霊」ってついている時点ですでに矛盾してるよな。霊じゃなくて実体、というところにリビングデッドの面白さがあるんだから。ロメロ3部作も最後が『死霊のえじき』ってタイトルどうよ?あれはナイト、ドーン、デイの流れを無視したヒドイ邦題だな。
しかし、『死霊のしたたり』とか『死霊のはらわた』って、妙に「死霊」って言葉が似合う。これがまた。おかしなことに。
さて本題。
本作は、原作が偉大なるH.P.ラヴクラフトの『死体蘇生者』だが、ラヴクラフトを映画化してこうなるかね、というツッコミどころが満載である。しかし、マトモなラヴクラフト映画なんてほとんどない。その中で、ブライアン・ユズナとスチュアート・ゴードンのコンビはB級エログロでそれを成功させたので称えられるべきであろう。『ダゴン』の映画化(というよりあれは『インスマス』だろうが)もなかなか良かった。彼らはラヴクラフト魂を受け継ぐクトゥルー神話の語り手なのだ。ある意味で。
原作の重苦しいインテリな文体をそげ落とし、狂っていく内面を外面に置き換え、美女を登場させたら彼らの映画になる。だから、こんな映画になるのだ↓
そう。これこそ『死霊のしたたり』である。裸のバーバラを生首がイタズラする話。…はぁ。ほんとにラヴクラフトか?
しかし、彼らの映画はこうなんだから仕方がない。でも、いいのだ。バーバラ・クランプトンの見事な脱ぎっぷりと、ジェフリー・コムズのマッドサイエンティストぶりが見れれば。バーバラって大学出で劇団とかやってた役者なのに、いきなり映画デビューでこれだけ惜しみなく脱ぐんだから。しかも彼女は85年当時まだかなり若いし、驚くぐらい美人だ。さすがだね。
タイトルの死体蘇生者とは、言わずと知れた医学生ハーバート・ウェストで、彼のマッドサイエンティストぶりが楽しい。天才なのにシャバ増。カッコイイのか悪いのか。このキャラクターの不気味さは、もしかしたら正統的にラヴクラフトなのかもしれない。
正統的にラヴクラフト、という変な表現を使ってしまったが、他にもそう考えられる場面はいくつか存在する。そしてそれが結構面白い。例えば、ラストでジェフリー・コムズが内臓に巻かれてなにやらもくもくと煙の出る光の中に引っ張られていくところとか。
逆にツッコミどころはいくらでも出てくるので、挙げていくとキリがないんだが、この後半の設定の破綻の激しさは笑うしかない。死体蘇生薬を開発して、その実験やら何やらするのが大筋なのだが、首を切断された死体を生き返らせたら、それが別々に動くってどうよ? ヒル博士だけど。首が話すのはまだ分かるけど、胴体が何で遠隔操作できるのよ? (しかも、そんな異形に復活させられたヒル博士がまず一番にやるのはバーバラにイタズラすることなんだな。ぷぷ。)
内臓が飛び出てきて巻きつき攻撃しかけてきたり。この後半の荒れっぷりは凄まじい。でも、こういうのがやりたいんだよな、彼らは。で、そういうのが面白いから、DVD買っちゃうんだよな、我々は。
最後に一応、映画としての出来はかなり高いと言っておきます。オープニングタイトルも秀逸だし、ラストのオチも良い。主人公とウェストの関係も面白いし、それぞれのキャラクターが面白い。一見の価値あり。しかし忠告しておくが、体調が悪い時に見ると吐きます。ほんとに。気をつけよう。