◆『健康教育・健康管理のレシピ』
神田 晃,谷原真一,亀田高志 編,南山堂,2005年,188頁,3,360円(税込)
日本健康教育学会で,会員のための小冊子であるNEWS LETTERの編集委員長として,年に4回発刊してきた.3,4年と続けるうちに,産業保健分野の健康教育・健康管理に関わる記事が数を重ね,充実し広範囲をカバーしてきた.そこで,是非,これらの記事の内容を核として,職域の健康教育と管理について分かりやすくまとめて一冊の本に活かしたい,という思いが募り,それが本書の発刊へと至った.
共同編集者かつNEWS LETTER編集委員である亀田高志先生,谷原真一先生と,出版社との話し合いや調整の中で,NEWS LETTERでご執筆の先生方に加えて,各方面から,専門性と話題に通じた方々にもご依頼した.また,NEWS LETTERで出された記事はあくまで参考として,全ての原稿を改めてご執筆頂くこととした.各項目は,少ないページ数の中で,実施のステップを明示した実践編,注意点・成果・工夫の各面からまとめたポイント編,実施の直接の参考となる資料編がそれぞれ明示された,分かりやすいハンドブック的なものにするということで,作業が進行して行き,この度出版の運びとなった.
1章:産業保健活動 産業保健活動の意義,組織,活動の基本的な面や準備事項,心構えや,異職種間のネットワークの整備など,産業保健を円滑に進められるような条件は何かをいくつかの事例と共に述べられている.その際に,非常勤産業医の場合と,大企業,また,小規模の事業所(産業保健師等)別にそれぞれの事例と取り組み方があげられており,規模による準備や対処の仕方の違いに注意して読まれることが望ましい.いわゆるテキストとしての項目と,トピックス,コラムとして,ある一事業所や,一人の産業医の健闘ぶりが活き活きと紹介されている欄があり,読者はそれぞれの視点からの,考え方,計画の仕方,実施方法を読み取られたい.
2章:健康教育 産業保健活動における健康教育が中心に述べられる.一次予防,健康診断結果を見ての対応では二次予防を主に,社員が自分の生活習慣の改善や普段の心がけとその継続を気分良く行えるには,産業保健医や産業保健スタッフはどのような考えかたで,どう計画して,どのようなアプローチをして健康教育を実行するか,その結果をどう活用するかが,たばこ(肺がん等),飲酒(肝疾患)を始め,感染症HIV/AIDS等)の理解と予防への支援方法が,いろいろな生活習慣病に関わる個人,グループでできる予防,対処について述べられている.オフィスの環境づくりについても項目を設けており,快適な環境下で健康教育を実施するためにどんなやり方があるかを,様々な項目と事例によって知り,応用することが出来るであろう.
3章:健康管理 健康教育や健康診断やその併用を実施した後に,その結果をどう解釈して,どのように表し,どう評価するかについてまず述べられている.折角健康管理の計画をたてて実施したのであるから,ある結果が出た場合,それがどのような効果があったのかどうかを評価する準備を予めしていて,健康教育・管理の実施の間も常に意識してそのチェックを定期的に行っていれば,実施した結果の評価を適切に行うことが出来るし,その重要性は明瞭になる.更に,その評価は,次の健康教育,健康管理に活かされることが出来るだろう.健康診断の有効な活用について詳細な記述と共に,代表的な生活習慣病別に栄養相談・管理がこの章では記述されている.また,メンタルヘルスについても,自殺予防と,現代的なテクノストレスを例に,それらの管理について述べられている.
4章:行政の動向と法律,指針 産業保健に関わる行政の動向と,法律・指針の2本立てで,大きな流れの中で産業保健における生活習慣病予防の役割と,それに関わる法律とガイドラインが紹介される.日本の国民健康づくり計画である,健康日本21を,企業においてはどのように職員,管理側が理解し,実践するように計画−実施するか,目標をどのように立てるかが述べられる.これに関しては,健康日本21が産業保健向けに紹介される.また,健康日本21の法的根拠である,健康増進法の概要が,産業保健の視点を大事にして説明されている.倫理面における配慮は最近,特に厳密である必要があり,職域における個人情報保護とインフォームドコンセントについて,その定義,とるべき心構え,事例がコンパクトに紹介されている.
4章の後に,資料として,労働衛生管理ガイドラインの特に本書と関わる点について紹介される.今までの章で述べられてきたことと,法律面,指針面における原則とを関連付けて,読者が関わる産業保健との有機的なつながりを感じる事が出来ることを期待する.
本書は,職域の健康教育・健康管理が主体となっているが,多くの医療保健系に携わる方々にとって,活用頂ける内容であると感じている.
神田 晃(岡山大学医学部)