映画”ムルデカ”に描かれた、インドネシア独立戦争に殉じた日本の十六軍と、中国大陸で”悪の権化”となった日本の”関東軍”は戦前の日本の光と陰を表す対照的な存在だった。
※映画”ムルデカ”= 戦後隠されてきたもう一つの真実の物語
http://www.nipponkaigi-tokyo.com/merdeka/home.html
”ムルデカ”の日本兵が日本ナショナリズムの”誠”を体現した存在なら、”弱者の中国人”相手に威張り散らし、好戦的な虚勢をはり続けた”関東軍”は、悪しきナショナリズムが陥る”虚勢”を象徴する存在だった。
現実はごまかしを見逃さない。事実”関東軍”は、仲代達也主演の映画”人間の条件”で描かれているように、国家の威光をかさにした”勇ましい強がり”と”醜悪な弱いものいじめ”という人間の罪業を象徴する存在だったと思う。そのチンケな虚勢は、ソ連参戦により、白日の下に晒される。
国民を守るはずの軍隊が、30万人もの在満同胞の民間人の盾になるどころか、彼らを置き去りにして遁走し、10万から20万もの日本人をソ連軍と現地中国人の略奪にまかせ、見殺しにして、大陸に草生す屍にさせた。その一方で、”関東軍上層部”は戦後ものうのうと生き続けた。
最近やたら威勢がいい”タカ派”気取りの連中を見ると、その虚勢の裏側に”卑怯者”の”関東軍上層部”と重なる体臭を感じる。連中は日本が他国に占領された時、戦うより侵略者の手先となって、国民を裏切るDNAを持っている気がする。
事実、”関東軍”的な”虚勢のナショナリスト”たちは、”非国民””鬼畜米英”と声高に叫んでいた過去を偽り、軍国主義の被害者面して、アメリカに摺り寄り、日本の国家権力の中枢に居座り続けている。またそうした連中の2世3世は、政府与党の中にごろごろいる。
戦後日本で”ナショナリズム”が敬遠されるものとされてきたのは、これらの悪臭を放つ”虚勢のナショナリズム”の胡散臭さによるところが多いと思う。しかし、その一方で、歴史の片隅に追いやられながらも、一筋の光を放っていた日本人の”誠のナショナリズム”を忘れてはならない。
自らの命を、民族の歴史を紡ぐ、一片の光の粒子として前向きに位置づけ、戦いの中に散華していった多くの命の真実は、戦後20年近く封印されてきた。戦勝国が作った”国家信仰のファシズムの犠牲者”という虚構を揺るがすような、現場の将兵一人一人の物語は、当初は占領軍の検閲により、あるいは”犠牲者ぶりっ子”の世論を意識した自己規制により、長い間封印されてきた。
ちょうど僕たちの世代は、それらの戦争文学をはじめとした戦争当時の物語が解禁された時に小学生だった。それまでの抑圧がとけ、一斉に巷に氾濫した日本の戦争映画、戦争文学、戦争漫画と濃厚な付き合いをする中で成長してきた。その辺が、他の世代と違うのかもしれない。戦前の日本に対するシンパシイは、占領軍教育を受けた僕らの上の世代(五十代、六十代)より強いといえる。
そんな僕たちの世代でも、インドネシア独立戦争に参加した元日本兵の”ムルデカ”の真実は”タブー”として、大学生になるまで、封印され知ることがなかった。
”ムルデカ”という映画のベースになっていると思われる”行き行きて神軍”というドキュメンタリー映画が最初の出会いであったが、なんとこの映画は、新左翼系の、成田闘争などの実力闘争記録映画を主に撮り続けていた反体制的な映画プロダクションの作品だった。(ナショナリズムに右も左もないことを証明している)
学校教育の中で、戦前の日本はアジアの民族に対して侵略行為をおこなったことを教え込まれながら、自分が幼い頃から触れてきた物語の日本の戦いは卑怯なものばかりでなかったという反発を持ち続けた自分にとって、この映画は”わが意を得たり”の感激を与えてくれた。それと同時にこうした歴史の真実を黙殺し続ける日本の政治が、うそ臭く汚らしく思えた。
映画”ムルデカ”は、ドキュメンタリーの”行き行きて神軍”と違い、ストーリー仕立てになっていて、今の若い人が見ても見やすい映画だと思う。”アジア解放”を本気で信じて戦い死んでいった日本将兵がいかに多く存在したかということを、歴史の事実として教えてくれる。
彼らは”虚勢”の”関東軍”と違い、インドネシアの民衆と共に、インドネシア独立を目指して、”全滅”するまで戦った。戦争は終わったのだから、インドネシア民衆の戦いにも目を瞑り、おとなしくしていれば、故郷の地を踏むことができたのに、、、、、
しかし、彼ら数千名の日本軍将兵は、日本のナショナリズムが、”虚勢”だけでなく”アジア連帯”の”誠のこころ”も発信していたことを後世に残した。そして、それが今日の”イスラムの民”の日本への親愛感情にもつながっている。
PS
現在公演中のミュージカル”南十字星”も映画”ムルデカ”と同様、日本の戦争のもう一つの真実を問うテーマになっている。