
「もつ焼き屋。」私が行く店は豚モツですがとても美味しいです。やはり新鮮さが鍵ですね。
さて、皮が剥がされた後は、尾を取り除き、胸部分を切り開いて内蔵を取り出します。内蔵は消化器系の白物と、循環器系の赤物が分けて取り出されます。殺されて30分程度しか経っていない牛の胃や腸などの白物は、もうもうと湯気をたて、どさーっと白物専用のコンベアーになだれ落ちていました。食道、第1胃〜第4胃、小腸、盲腸、大腸、直腸がどさーっ(この表現は合っていると思います)と落ちてきて、ぶるんぶるんとしています。見ていて判別できるのは第1胃(ミノ)でしょうか、大きい袋状の塊がひと際目立ちます。しかし、直腸もあるということで先ほど結束した肛門もあります。見た目にはよく分かりませんが、あの中に糞も入っているのでしょう。ぶるん、とゆれている内蔵を見て、内臓壁は相当に丈夫そうに見えました。
さらに興味深い光景を見ました。赤物と言われる循環器系が4つに分けられ、丁寧にならんで吊るされています。1つは、心臓(ハツ)と肺(フワ)と気管(フエガラミ)が切り離されずに吊るされていて、そして肝臓(レバー)、横隔膜(ハラミ)、尾(テール)の4つです。1頭ごとの内蔵が同じ向きで吊るされ、レールで流れてくるそれらの内蔵はきれいに見えました。尾は循環器系ではないですが一緒に並んでました。ちなみに尾椎は脊柱の延長ですが、BSE規制の範囲外で、食用になっています。今後、何かが原因で規制が厳しくなったら、今は食べられる骨付きカルビもなくなってしまうんだろうか。
「牛せき柱を含む食品等の管理方法」に関するQ&A
ハラミの量が意外と少ないんだなと思ったり。でもじつはハラミが横隔膜だというのを、実物を見て初めて知りました。伸縮するのが横隔膜だから、深い呼吸をしている牛?ほどハラミに弾力があるのだろうか…。心臓はゴムのボールみたいで堅そうだなと思いながら、確かにハツは噛みごたえがあったなあ、ともつ焼き屋に行ったときのことを思い出してしまいます。レバーは、深い赤色でほんのわずかに表面が白みがかっています。と畜検査員がよく切れるナイフを使ってレバーの表面をするりと切っています。中身を確認するだけなので表面を軽くそぐ程度。そうすると、わずかに白みがかった赤色の内部にさらに濃い赤が見えます。それを見て美味しそう、と。これはほんとにそう思ってしまいました。
と畜検査員とは、獣医師の資格を持った都から派遣された職員だそうです。吊るされた内蔵を見て、市場に出せないものは廃棄する。そういう判断をする人です。といった説明を聞いている時、と畜検査員が目の前のレバーをズバズバ切りました。そしてそばにいた補助の方が、細かく切って廃棄ボックスに流しました。異常があったのでしょう。案内の人(牛の課長さん)に説明されてそのレバーの断面を見ると、確かに穴がいくつか空いていました。
さて内蔵を摘出された牛は、背割りという行程に移ります。両足で吊るされた胴体を、上方(尻)から背割りバンドソーで切り、2つの枝肉にします。昇降する電動式チェンブロックに、電動式のばかでかい鋸を抱えた1人の作業員が乗り、上から下まで昇降機を移動させながらバンドソーを牛に入れていきます。大きな音がしていたような気がしますがよく覚えていません。
「背骨ひとつ切れるたびぱちんぱちんと音がする」『世界屠畜紀行』
背骨の真ん中を切らないといけないらしく、それには相当の技術が必要のようです。背中側から切っていましたが、何か目印があるのか、非常にうまく背骨の真ん中で切れるのです。いやー、すごい!これがずれると値段に大きくひびいてしまうそうです。そしてスチームバキューム(O-157対策)、高圧洗浄にかけ、硬膜除去(BSE対策)を行って、これで2つの枝肉が出来上がります。この後、枝肉に格付けがなされ場内で競りにかけられ流通していきます。
レポートは以上で終わろうと思いますが、今回と場に行き、牛が殺され解体される様を見ました。胴体はもちろん足や頭、大きな舌、堅そうな心臓や、糞のつまった腸、検査の結果棄てられてしまったレバー、など体を構成している器官そのものを詳細にではないにしろ、目視しました。また、解体される前の生きている牛を見て、目が黒いねとか、体が大きいなあとか、黒毛だけどこの牛のお腹の毛は白いんだねとか、そういったことを見ました。仮に、と場に連れられてきた1頭の牛に注目して、こんな感じで特徴づけて、そして心臓などの臓器まで見たにしても、でもこの1頭の牛の全体をあらわすことは出来ないのでしょう。
絵を描く時にこういう感じのことを思ったことはありますが、と場見学でこう思えたのは発見でした。
今回、レポートするにあたって参考にした本やサイトです。
『世界屠畜紀行』内澤旬子
『屠場文化―語られなかった世界』桜井厚編, 岸衛編
東京都中央卸売市場食肉市場・芝浦と場ホームページ
花木工業株式会社