2008/12/19

「容疑者Xの献身」  上映中

テレビドラマのガリレオシリーズはヒットしたのが情けないほど
チャチだったので、2回で見るのを止めた。
そんなドラマの映画化だ。
だから、東野圭吾原作には惹かれながらも、
この映画のために劇場へ足を運ぶ気にはならなかったのだが、
なかなかの評判に騙されたつもりで、恐る恐るレイトショーへ行ってみた。
ふうん・・・・・・・
面白いテレビドラマでさえ、映画化されてしまうと
冴えない作品になるのが常だというのに、この映画は面白い。

ベンチから消えたホームレスは解かり易かったが、
そういう犯罪のトリックだけでなく、
堤真一演じる犯人の意図をめぐっても、こちらの推理は二転三転。
2時間を越えて、飽きずに見ていられた。
また、冗長な感情移入シーンがないことで、かえって、
登場人物それぞれの感情をストンと受け止めることができたように思う。
動機を、ベタベタの片思いや固執系狂気へ持ち込まず、
人情の機微に沿わせていったストーリーには溜飲が下がる。
現実はこんな綺麗事などないし、ここまでの解明はされないものだろうが、
だからこそ、フィクション犯罪の良さがあるのだ。

それに引き換え、現実の殺人の不条理さといったら。
2人を殺してその動機が「犬の敵討ち」だと言われた日にゃ、
どうすれば気分が晴れるのか。
この映画は、あんな殺人が起こった後だからという訳でもないが、
見てよかった、と思わせてくれる作品になっていた。
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2008/12/17

「主人公は僕だった」  WOWOW

ウィル・フェレル主演ということもあり、バタバタコメディかと思っていたが、
最初から終わりまで、主人公をシンミリ見守っていた気がする。
ウィル・フェレルといえば、「プロデューサーズ」を思い出す。
確か、ナチ狂いの脚本家を好演していたはずだが、
ここでは、とっぴな状況の男をコミカルかつシビアに演じていた。

主人公の男は、何事も自分の定めた数字や規則に従って、
無味乾燥な生活を送る国税庁の検査官。
ところが突然、自分の行動を描写する女の声が頭の中で聞こえるようになり、
彼は変わっていく。
女の声で流れていたのは、ある小説家が実際に執筆中の小説で、
男はその主人公だった、という理解しがたい状況だが、
非現実下で時間軸が錯綜する割には、わかりやすい映画だった。

彼は、自分のことを描写する声を聞きながら、
恋愛を知り、生活の潤いを知り、少しずつ人間的な柔らかさを得ることになる。
どんな些細な出来事も様々な過去の偶然や人との関わりがもたらした果実であったことに
気付かされるのだ。
その主人公が小説のストーリーで死ぬことになるなんて!とカワイそうに思っていたら、
死という悲劇で終わらない人生はないのだ、と念押しされて、
映画を見ている自分も彼と同じなのだと気付く。
笑う場面はほとんどないが、苦笑を誘うあたり、
皮肉の効いたコメディだともいえる。

生きる姿勢を変えていった彼を見ていると、
自分の状態を客観的に見ることがいかに大切かよくわかる。
自暴自棄になったり、堂々巡りに陥った時、
出口をみつけたければ、まずは自分に距離をおいてみることだ。
ただし、自分が演じる主人公は、どうやっても絶対死ぬことになっているわけだが、
まあ、そこまで考えなくてもいいか。

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2008/12/5

「さらば、ベルリン」  WOWOW

舞台は、陥落直後のベルリン。
ポツダム会議の最中、米ソが情報戦の火花が散らす前線で、
米兵の殺人事件から様々な事実が明かされていく。

映像はモノクロで、音楽は重厚なオーケストラ。
フィルム・ノワールを再現したようなムードがたっぷりだが、
なぜか始めから入り込めなかった。
わざとらしさが鼻についたのだろうか。
全体を通して、事実を坦々と追う丁寧さもなければ、
エンターテイメントとしての盛り上がりにも、サスペンスとしての見応えにも欠けている。
期待はずれも甚だしい作品だ。

ラストシーンでは、ケイト・ブランシェット演じる女レーナが
自分がユダヤ人でありながらナチの世を逃げ延びた理由を明かすのだが、
どんなに惨い事実が明かされるのかと思っていたら、
全く意外ではない想定内の答えなもので、その呆気なさに驚かされる。
レーナの告白によれば、彼女は、
自分を買春した男たちの中からユダヤ人を見つけ出しては、
ナチに密告して、命を永らえていたらしい。
これって、割礼の痕で、ユダヤ人を判別していたということだろうか???
腑に落ちないままなのもイヤなので、さっき原作を買ってきた。
結構長い小説だ。とりあえずは疑問の部分だけ拾って読もう。

ところで、ポツダム会議は1945年7月。
国際社会の注目は既に戦後処理に移っていたが、
極東では、日本がまだ降伏せずに戦っていた。
それから数週間のうちに、ヒロシマとナガサキがあったのだが、
日本の降伏はもう時間の問題だったのだから、
アメリカが勝つために原爆投下をする必要はなかったはず。
アメリカにとっては、消化試合のついでに日本人で核実験したくらいの
感覚だったのだろう。
ヒロシマとナガサキでは、ナチのホロコースト並みに、
非戦闘員である日本国民が大量殺戮されたが、アメリカにはお咎めナシ。
アメリカのエゴ指導者にも腹が立つが、
降伏を渋って敵国に原爆投下の口実を与えた日本のバカ指導者には
もっと腹が立つ。

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2008/12/2

「Dear フランキー」  NHK

いかにも、映画に相応しい感動ストーリーだ。
シングルマザーであるリジーは、耳の不自由な息子フランキーに、
航海中の父だと偽った手紙を書いて送っていた。
架空の父が乗っているという船の名はリジーの創作だったが、
偶然にも同じ名前の船が、フランキーの住む街に寄港するという。
リジーは、父との面会を心待ちにするフランキーのために、、
見知らぬ男に金を払って、一日だけ父を演じてもらうことにする。

舞台はイギリスの地方都市で、
父のフリをする男とリジーが美男美女であること以外、
その気候同様、ドンヨリと寂しげな映画であるが、
意外にも、暴走なしでハッピーエンド。
息子フランキーの高い精神年齢のおかげで、
リジーの偽装行為は軟着陸を果たす。
子供の鋭い観察眼を侮ってはならない。
生来、知能が高いだけでなく、
耳が不自由な分、他の感覚が研ぎ澄まされているフランキーは、
ニセモノの父だったと知りながら、彼女を傷つけまいとしていたのだ。
リジーが、自分が守り育ててきたはずの息子から逆に見守られていた、と
知ったシーンは特に感動的で、すっと胸に落ちてくる。

映画の視線はフランキーに注ぎながら、
実際に成長していくのは母親リジーの方。
DVをふるう前夫から逃げてきただけの彼女は、
死の床にある彼と対峙するまでに強くなっていく。
ストーリーを追うというより、静かに2人を見守っていたような映画だった。

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2008/11/28

「パンズ・ラビリンス」  WOWOW

ファンタジーは苦手なので後ろ向きな心地で観たのに、かなり気に入った。
「パンズ・ラビリンス」のファンタジーは、子供のカワイらしい夢想などではない。
主人公の現実だけを追うと救いようのないストーリーで、
戦闘や拷問のシーンはファンタジーどころか醜く惨たらしくリアル。
しかし、そこに織り込まれる空想のさじ加減が絶妙だ。
特殊な状況をいかようにも創ってみせようという、
映画ならではの利点をふんだんに効かせた作品だと思う。

作品は、1944年、内戦最中のスペインを舞台に、
哀れな少女と、彼女の見た幻想をからめた構成になっている。
幻想の世界で王女である彼女に与えられた様々な試練が、
現実世界の苦境に重ねられていくのだ。
父のみならず、母も失おうとする悲惨な状況で、小さな女の子が、
勇気を奮い、夢を抱けたのは、
自分がこの世に迷い込んだある王国の王女である、という自覚が
あったからだろう。
撃たれて自分も息絶えんとしたその時、彼女は、
父母の待つ王国に王女として帰ったような気持ちでいたはずだ。
そう思って人生を終えたと思えば少しは救われた気もするが、
残酷のただ中を生き抜くために、
そうやって精神のバランスをとっていたのかと思うと、
なんともやりきれない話である。
しかも、そんな子供だましの延長には、
「英雄になれるから」「天国に行けるから」
「残った家族の面倒はみるから」と言い含められて
自爆テロの手先にされる貧しいイスラム少年たちの姿も見えてくる。
ファンタジーも純粋な気持ちも結構だが、残酷で醜い所業ほど、
綺麗にラッピングされていることも忘れてはいけない。

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2008/11/26

ドラマW プリズナー  WOWOW

WOWOWが引っ張ってくる海外ドラマの質が落ちたと思ったら、
自作ドラマを相対的に良く見せるためだったか。
しかし、そんな小細工も効かないほどトホホな出来である。
あの「パンドラ」よりもヒドイ。

ちゃんと海外ロケもして制作費はかかっていそうだが、
なぜか、昼間のソープドラマのような安っぽさ。
それなりの俳優を配しながら、彼ら全員を大根に見せるほどセリフが陳腐だし、
早い展開は、ただただ粗雑な印象を与えている。
サスペンスの命である謎かけにも、興味をそそられないどころか、
そのワザとらしさに興ざめである。

ところで、劇中で主人公たちを厄介者のようにあしらう日本大使館は、
架空の国に存在しているらしいが、
何年も前にカンボジアだったか東南アジアの国でクーデターが起きた時、
助けを求めてきた日本人に対して、現地の日本大使館が門扉を閉ざした、
というニュースは現実だったと思う。
そういえば、このドラマのベースになっている小説は、
カンボジアで起きた実話である。
いいところナシのドラマだったが、
わが日本の大使館は、海外で困った日本人を助けないのだと、
とことん頭に叩き込んでくれたところは良かったかな。

自分たちでドラマを作るとテレビ局気分も味わえていろいろうまみもあるだろうが、
お高い視聴料は、こんなドラマのために払っているのではない。
WOWOWには、良い作品を紹介する仕事だけしていて欲しいのだ。



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2008/11/21

内部告発 #1「幻のテロリスト」  WOWOW

個人的な意見だが、イギリスのドラマは、
日本での放映が少ないだけに厳選されているのか、
あまりハズレがないように思う。
NHKBSが最近まで放映していた同国製作の「ステート・オブ・プレイ」も
素晴らしい出来だった。
それだけに、いつも以上に期待して見たのだが、
WOWOWの「内部告発」は、全くの肩透かしだった。
加えて、字幕もよくない。

「内部告発」は一話完結で、これが第一回目。
同棲中の弁護士カップルが、
テロ防止のため違法な監禁や拷問を行なっている公安警察の行き過ぎた捜査を暴き、
それを機に、内部告発者のための弁護士になる。
こうやって書いてみると、アンタッチャブルなテーマを扱った社会派サスペンスだが、
ストーリー展開はとても安易だ。
拷問ビデオを公表したとたんに、マスコミが態度を180度変え、
最後には内務大臣を辞任に追い込んでハッピーエンド、だなんて。
水戸黄門でもあるまいに。
ドラマに深みがないので、大げさに構えたテーマだけが空回り。
張子の虎度合いは、WOWOW製作の「パンドラ」といい勝負だ。

「内部告発」の敵役、公安警察はすることなすこと脇が甘い。
監禁するための隠れ家を住宅街の中に借りたり、
拘束した男性の移送を一般人に目撃されたり、
素人に発信器をしかけられたりして、
これでは、犯罪者の裏をかいてテロを阻止するなど絶対に不可能だろう。
こんなお粗末な相手だからか、主人公の弁護士たちは、
身の危険を顧みず現場に忍び込み、直接、公安警察と対峙する。
追求している面白さが、マンガ(マンガに失礼かもしれないが)レベルである。

「セックス・トラフィック」のように面白いドラマをイギリスから引っ張ってきた
WOWOWとは思えないテイタラク。
そんなこと嘆くよりも、「イギリスだって日本並みに酷いドラマも作るのだ」と
日本人の劣等感を拭ってホッとするべきだろうか。


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2008/11/18

「幸せのレシピ」  WOWOW

反発がいつしか恋心に、というハリウッドお決まりのラブストーリーである。
キャサリン・ゼダ・ジョーンズが演じる主人公ケイトは、
交通事故で亡くなった姉の娘を引き取ることになったシェフ。
相手役を演じるのはアーロン・エッカート。
ケイトになかなかなつこうとしない姪は、
「リトル・ミス・サンシャイン」でオスカーにノミネートされた子役が演じている。

ケイトは公私共に完ぺき主義を貫いてきた独身女性だが、
姪を引き取り、新たな部下を迎えたことで、生活のリズムが乱されてしまう。
当初は、思い通りにならない侵入者たちに、苛立ちとまどい抵抗を示すものの、
受け入れることもひとつの選択肢であることを徐々に学んでいく。
姪と家族になろうとする過程を丁寧に描いているのは、
メインのラブストーリーが安易に過ぎるからだろうか。

幸せという言葉がなくても、少しずつ柔らさを施されていく彼女の顔つきが、
人とぶつかって生きる面倒も素晴らしいのだろう、と思わせるが、
そう惑わされるのは、この映画に悪人が出てこないからだろう。
彼女がシェフを勤めるレストランに気ままな客がいるくらいで、
脇役達はみな、彼女の応援団だ。

浅い作品だが、暗いニュースが多いときにはこんな映画もいい。
嘘が、作り事が、ありがたいことだってあるのだ。
劇場公開が早々と打ち切られていたように思うが、まずまずの平均点では?
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2008/11/15

「僕のピアノコンチェルト」  WOWOW

スイスの映画を見たのは、おそらく初めてだろう。
始めと終わりを、シューマン(だと思う)のピアノ協奏曲で挟み込んだ構成が
とても印象的な作品だ。
特に、突飛なエピソードをうまく軟着陸させ、数年後のコンサートへと、
一曲を長々つなげて行ったラストは素晴らしい。
拍手がなり止まぬ興奮の会場に「Ende」の文字が大きく浮かび上がったとき、
自分も音楽を聴きながら観客席で空想に耽っていたような気がした。

天才少年ヴィトスは、教育熱心な両親の期待を素直に受け入れられず、
ある日、事故を偽装して能力を失ったフリをする。
普通の少年としての生活を得た彼は、
独りよがりな初恋や、インサイダーど真ん中の株取引、
父が勤める会社の買収など、大人の世界へと、
高い知能と子供のストレートさで踏み込んでいくのだが、
それが、「ナントカに刃物」のような悪乗りエピソードの連続。
ある意味楽しくもある子供の冒険ながら、どこまで極めるのか、
いつ破綻をきたすのか、と、こわごわワクワクさせられる。
さすがにヴィトスが飛行機の操縦桿を握った時には、
これで終わりかと思ったものだ。
しかし彼は、知能と机上の空論だけでさまざまな挑戦を乗りきって、
最後には自分の能力を受け入れ、自ら選んだ道を歩むことになる。

ところで、実年齢と精神年齢をはるかに越える高い知能を持て余していた少年が
周りを欺き凡人のフリをするに至ったのは、
大好きな祖父に「決心がつかないときは大事なものを手放してみろ」と
言われたからである。
その祖父も、まさかヴィトスがこんな賭けに出るとは思わなかっただろうが、
なんと的を射た忠告であったことか。
個人的にも納得。いつまでも心に残る言葉だった。

ヴィトスの人生、ホントはこれからの方がずっと長い。
彼の将来を思えば、一度は頭を打ったほうがよかったような気もするが、
コメディでもファンタジーでもご都合主義でもいいから
ハッピーエンドを心から喜べる作品だった。
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2008/11/11

「人のセックスを笑うな」  WOWOW

原作の方は読んでいない。
しかし、原作者の山崎ナオコーラが新聞で連載していたエッセイは
なかなか面白かったので、興味をそそられ、つい見てしまった。

観客としてのターゲットはアラサー、アラフォーの女性たちだろうか。
人妻の永作博美が松山ケンイチ演じる大学生を誘惑していく様子には、
お姉さま心をくすぐられるかもしれない。
しかし、永作博美の夫はとぼけて冴えない老年男。
あこがれの二重生活でには程遠い。
なにより、どこをどう振っても、面白さも楽しさも衝撃も出てこない。
これがいわゆる、等身大、自然体というものですかね。
視点が誰か1人に定められていれば、もう少しは入り込めたかもしれないが、
とにかく、奥歯に物の挟まった映画だった。

ああ何より、こんな映画に2時間を越えてつきあった自分を笑ってしまう。
早々になにか他の映画を見て、スッキリしておきたいものだ。
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