「『ZG2恋人たち』はキスの記憶、その3、フォウについて」
ガンダム

『機動戦士ZガンダムII 恋人たち』
劇中のフォウについて。
チェーミンとハサウェイが落とした飛行機をフォウが拾うところ。素晴らしいです。
絵も綺麗だし、こういう風にカミーユの前に現れて欲しかった!
説明的セリフは確かにちょっと多くて親切なんだけどうるさいなと思いつつも、「ベン・ウッダーに言われた通り、敵には会えたが…」という辺り、フォウがスパイなんだとちゃんと明確にしてくれてるから分かりやすい。エゥーゴを探る為に、というかアムロに近づく為にまずはカミーユに話しかけるわけだし。
最初、カミーユが丁寧語で話すんだ、これが。
そういう細かい部分も含めて、流れがすごく自然。フォウ登場の辺りは手放しで劇場版を褒めたい。で、カミーユと別れた後、夜にこっそりまた会いに行くのは修学旅行的。頭痛を鎮めるために会いに行くみたいなことを言う。その後のビルの屋上シーンは旧画のままだが、やっぱりここが一番だ。絵がそのままだからなおさら。
2人の気持ちは、恋愛感情までは進んでいない、というのが劇場版の描き方だろう。まさに思春期。これが富野氏の言う「青春映画」な部分だと思うが、2人の恋愛は絶対的なものではない。だから宇宙に上がってからのファが生きてくるわけで。「恋人たち」になりたい2人。アムロとベルトーチカを「傷を舐め合ってる」と批判しながらも、恋愛関係に憧れている。で、修学旅行的な特殊な状況が、2人を急速に接近させる。で、フォウが「キスして」なんて言ったりする。こういう風に自分の気持ちも整理できないまま、まるで不可抗力のように惹かれる感覚こそガンダム史上最も恥ずかしいタイトルをつけたこの映画の「恋」なのである。で、その恋を経験したカミーユは、ファとの距離感を改めて考えることになるのだ。
アムロやシャアにとっての運命の女ララァとは決定的に違う存在だ。だからこそアムロの説教がカットされたのかもしれない。
サイコとマーク2の戦いは、例の「ヒルダが小鳥」の新BGM。
コクピットでの会話はTV版とは結構違う。両親の話が中心ではある。フランクリンの愛人が発覚したのは、シャツについた香水の匂いにファが気付いたからという新事実も。ただ、やっぱりファの話題が出てくる。しかも、TV版では「幼馴染の子」だったのに劇場版はちゃんと「ファ」と言っている。しかも「爪噛む癖やめなさい」の他に「パンツ換えたの」まで加わってる。すごいな、ファ。
で、カミーユがひとしきり混乱した言葉を羅列した後に例の会話。
フォウ「今でもカミーユって名前嫌い?」
カミーユ「とっくに好きさ、自分の名前になっているもの」
フォウ「そう、あたしも好き」
ってとこ、CMと違う。もっとセリフに間合いがあるし「あたしも好き」ってところでカミーユを抱きしめる。だから、フォウがカミーユの名前を好きなのか、それともカミーユのことを好きなのか、はっきりとしない。いや、カミーユのことを好きになりつつある気持ちを、名前が好きだという言葉にごまかしている。これが、修学旅行的ってことだ。
で、TV版だと結構唐突に銃を構えるんだが、これも自然に処理されている。「これで忘れないですむというもの」というセリフは変わらないが、フォウがブースターの準備をしている時に言うセリフがとても切ない。
フォウ「カミーユはあたしを宇宙に連れて行ってくれる」
この言葉の意味は、何だろう。フォウは死を覚悟していたに違いないし、カミーユとの別れを決意したからこそ銃を向けたはずだ。つまり、フォウが宇宙に行くというのは、カミーユの心の中に行くということだ。「忘れないですむ」という言葉も重要になってくる。お互いが忘れなければ、すなわちカミーユが自分のことを忘れない限り、その心の中で一緒に宇宙に行けるということだ。ララァの「いつでも遊べる」とか「いつでも会いに行ける」という表現に共通する富野的オカルト。
もちろん、カミーユ自身はフォウを宇宙に連れて行こうとして必死で抵抗するが、フォウは間に合わない。ベン・ウッダーに撃たれる。TV版では肩を撃たれるだけでカミーユを見送るのに、劇場版では「強化人間はこうしても生きていられるのか?」みたいなことを言われて頭を撃たれる。多分、頭だと思う。実際に撃ち抜かれるシーンはないので分からないのだが、ベン・ウッダーはフォウの頭に銃を突き付ける。で、フォウの体が海に落ちていく。死体かもしれない。『哀戦士』でガンペリーから落ちるミハルにちょっと似ているが、もっとあっさりしている。でもこの落ち方がまたいいんだ。死体がぽろっと落っこちた、ってだけ。これが富野的な演出だ。わざとらしい感傷を誘う演出なんてしない。カミーユはフォウが死んだ(らしい)ことには気付かない。
ここまで、前半の山場。上映時間の半分までは行ってなかったと思うので、前半と言うよりもう少し短いだろうが。
ここまででその他2、3気になることを。
まず、一際印象的なのがベン・ウッダー。TV版でも男気を発揮する好漢ではあったが、ミライの人質作戦がカットされたのと、サイコガンダム操縦の言い訳(サイコの試運転をしようとしたら勝手に動き出して街を破壊したらしい。「約束も守れない男にされてしまった」と悔いている)が追加されて余計にいい男になった。特攻をかける辺りね。連邦にもいいのいるじゃない。新画ばかりだったし。ちょっと太ってたけど。
それから、声優交代について。フォウ役が島津からゆかなに代わったことについて署名運動まで起こって大騒ぎしているが、まあ音響との関係とか色々あったにせよ富野監督がこれでいいとしているなら、我々は何も言えまいよ。別に悪くなかったし。演技もとてもいいし。好みを言えば、島津のちょっと細い神経質な声の方が好きだけど。
というわけで、長くなってきたので、宇宙に上がってからの話はまた後ほど。

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