おひさしぶりっこです。
レンタル屋でふと目にとまった『女王の教室』DVDを借りてみた。「悪魔のような鬼教師に戦いを挑んだ6年生の1年間の記録」という副題が素晴らしいじゃないか。
どうもダラダラとしていてテンポが悪いし、きっと3割ぐらい削ったらもっと面白くなるだろうなと思って見ていたのだが、それを差し引いても、1話の終わり近くの未解決感は素晴らしかった。先生と生徒、という対立があるのだが、先生、つまり阿久津真矢は一歩も引かないのである。優等生である進藤ひかるが、神田和美をかばった時に、何かしらの表情を見せるかと思われたが、それを一蹴してみせるこの気概。すごいじゃないか。これがこのドラマの一筋縄ではいかないところで、例えば『ブラックジャック』のようにヒールを装いながらも人情深い、というキャラクターを一切出してこない。追い詰めまくる阿久津先生の悪役っぷりは、不快感を感じるほど。が、ドラマとして実に面白くなっていく。BOXを購入し、3日間で一気に全話見てしまった。
神田和美を主人公にどんどん事態は悪いほうに進み、イジメとか裏切りとか、かなり陰惨な展開に。そんな風に6話ぐらいまで進んで、こりゃえらいドラマだな、と。つまり、「白」の象徴たる神田和美と、「黒」の象徴である阿久津先生、という大きなフィクションの対立が続くのである。
神田和美は、どう考えてもこんな子はいないだろうと思える白の存在。どんなことがあってもめげないし、友達を信じ続ける。神田和美が言うことはすごく正しい。が、その一方で正反対の存在である阿久津先生の言うこともいちいちすごく真っ当なのだ。この2人の正論同士のぶつかり合いが面白い。で、阿久津先生はどれだけ神田和美の理想論が現実に近づいても一歩も彼女に擦り寄らないのである。徹底的である。
で、6年3組の面々の愚民っぷりが素晴らしい。保身のためなら平気で友達を裏切るし、イジメもするし、阿久津先生に媚を売る奴から密告者になる奴まで様々。全体主義的国家か、このクラスは。で、この愚民どもとも戦う和美。健気である。しかしね、財布泥棒を和美になすり付けた恵里花はちゃんと罰が下ってその後イジメにあったりするんだが、傍観者で同調者だったクラスメイトは、結構何ごともなく生き延びているから(しかも最終回でおいおい泣いてるから)、その辺は構成上の問題であるにせよこのドラマのイデオロギー的にはおかしな点ではある。
その中で、ただ一人超越的な視点を持つのが神田和美の姉、優。優は物語には一切絡まないで、和美の聞き役に回るのである。一度だけ動物園で阿久津先生と遭遇するが、すぐに対決を避ける。こういったある種メタ的な視点がドラマに冷静さを与えている。何でもドラマの放映中には内容に相当なクレームがついたとのことだが、まあ、優の存在があるからねえ。そんな過敏にならんでも、と思う。
話が一気に崩れるのはラスト2話。阿久津先生がなんだかいい人のような感じに見えてきて、和美たち6年3組全員が阿久津先生に引っ張られていくのである。つまり「あえて鬼教師を演じて子供たちを成長させようとしている」という、そんなの見てる方は分かっているけれどやっぱりそれを言っちゃいけないよな、ということを、ついにドラマがその部分を見せてしまうのである。で、子供たちが阿久津先生の真意を理解して、彼女のことを「恩師」と慕うのである。やれやれ、やっちゃった、という感じだ。
メタ的視点を持っていた姉は、実は登校拒否をしていて、ラストで学校に通いだすというエピソードが加えられている。役割を終えて普通の女の子に戻ったということだ。姉・優と対の存在だった進藤ひかるが超越者から普通の子へと変化したように。
ずいぶんと甘い話になってしまったのう。
明らかにフィクションながら、イデオロギー的にハードなドラマを作ろうというのなら、阿久津先生の真意に気付くのは(いや、気付いたような気がしたようなしないような、ちょっと分かりかけるのは)和美と由介、ひかる、馬場ちゃん、恵里花ぐらいでいいのではないか。愚民のままで終わった人たちにはまだ試練は訪れていないのだから。だからみんなで号泣しながら阿久津先生を送る場面などいらずに、阿久津先生からの開放感で喜び合う生徒たちを描くほうが自然なのだ。で、みんなが悪口を言っている中で、主人公たちだけは違和感を感じていて、その上でラストの川沿いでの再会の場面があれば。「アロハ」も活きる。つまり、「どれだけ嫌われても生徒のためだ」という徹底した態度を取り続けていた阿久津先生が、最後に生徒に好かれてしまうというのはおかしい。何年後かに、初めて感謝の気持ちを抱くものではなかろうかと。
しかし、ここでひとつ言っておきたいのは、そういう風にみんな普通の子だし、阿久津先生と和美たちが理解しあうというのを我々はずっと見たかったんだということ。この10話、時に不愉快な気持ちになりながら見ていた間。そんな、いかにもな最終話だけど、妙に感動してしまうのはそういうわけなのだろうな。教育者魂が炸裂する阿久津先生の最後の演説シーンは、なんだか嬉しかったから。
いやしかしこのドラマ、子役が素晴らしいですな。和美を演じた主演の志田未来は、これはとんでもない。DVD-BOXには特典でリハーサルの様子なんかが映っているが、泣くシーンの演技なんて、こりゃプロだと感心した。現代的なローティーンの美少女というわけではなかろうが、こういう魅力を持った子役はなかなか見ない。由介もひかるも良かったし、恵里花なんてほんと見ていて腹立つし、よくぞ6年3組これだけの芸達者を集めたものだ。
とても38歳には見えない天海祐希が何にせよ一番の魅力ではあるのだが。アンドレ時代も素晴らしかったが、ますます磨きがかかってますな。
2つのスペシャル版についてはまた。