2009/6/29

第111話『受け継がれる瞬間』  序章
2月28日。

「なんとか終わったな」

「うん」

俺と目黒は校舎内の廊下を歩いていた。

これから定例会議を行うために生徒会室に向かっているのだが、こういう日に限って・・・

「実技の進級試験て、毎回あんなにしんどいのか?」

「去年は音無先生だけだったから、まだマシだったわよ。でも卒業試験は先生全員だって」

聞いた瞬間、背筋がゾッとした。

ちなみに、今回の試験は『10分間攻撃を耐え抜いて、且つ全員に一撃でも攻撃を与えること』だった。

その相手は音無先生に照先生に縫先生。

更には途中蝶子先生が乱入してくるオマケ付き。

・・・俺、よくアレに合格出来たな。

何はともあれ、俺も目黒も進級には問題は無さそうだ。

あとは・・・

「先輩達は大丈夫か?」

いつも定期試験の度に苦しんでいる先輩達はどうなのか非常に不安だ。

「大丈夫よ、だって卒業試験は実技だけだっていうし」

それを聞いて安心した。

実力は明らかに折り紙付きの先輩達だ、そこで仕損じることはまずないだろう。

・・・それにしても、目黒もここまで立ち直ってくれて良かった。

普通だったら、2ヶ月前に起きたあの事件から立ち直れなくなっていてもおかしくない。

やっぱり、目黒はそんな弱い子じゃない。

そう俺に感じさせた。

「・・・?どうしたの?」

「いや、何でもない・・・と、着いたな」

気がつくともう生徒会室の前に来ていた。

「お疲れ様でーす」

「お疲れ様です」

それぞれ挨拶しながら入ると、既に面子は揃っていた。

でも、相変わらず会長はいない。

「お、来たな。とりあえず席に座ってくれ」

「あ、はい」

そう言われたので俺達は空いている席を見つけ座った。

「じゃあ始めていくか、今日はな・・・来年度の役職の引継ぎを行う」

役職の引継ぎ?

あ、そうか、もうそんな時期になっていたんだよな・・・。

あと1ヶ月もしたら、3年生たちはいない。

それを考え、少し寂しい気持ちを感じた。

「まずは会長だが、これは池袋から誰に引き継がせるか既に聞いているから、それを発表する」

来年度の会長、か。

これは経験とか考えると、目黒が妥当だろうな。

芯も強いし、判断も的確だから問題ないはずだ。

「来年度の会長は・・・上野、お前に任せるだってさ」

「・・・・・」

俺の名前が神田さんの口から発せられた瞬間、状況を判断出来なかった。

「・・・え?」

ようやく発せたのは、この一言だけだった。

「お前になら安心して任せられる、ていうアイツからのご指名だ。頑張れよ」

「え、いや、・・・え?」

神田さんからの一言を聞くも、まだ状況が把握しきれない。

そんな俺に

「大丈夫、上野君なら私も安心して任せられるから」

隣にいた目黒からもそんな言葉をかけられた。

正直、その目黒の方が適任な気もする。

・・・だけど、そう言われたらそれに応えるしかないよな。

「わかりました、出来る限りやらせてもらいます」

「あぁ、そうしてくれ。じゃあ続いて副会長だが・・・」



その後、役職の指名と引継ぎに1時間近くかかった。

結局、副会長には目黒、これは確かに妥当なところだ。

続いて会計が五反田、書記に代々木、そして執行役員筆頭に渋谷が就いた。

どれも適職だなと俺は思う。

俺は・・・それをまとめなきゃいけないんだよな。

来年は今年以上に頑張らないとな。

「さて、じゃあ終わったところで打ち上げを始めるか」

打ち上げ?

何のことかと思っているうちに、戸棚からお菓子の類が、更に冷蔵庫からジュースの類が次々と出された。

「え、えぇと・・・これは?」

何のことか分からないでいると、

「引継ぎの後は、こうやって打ち上げを行うことになっているの」

と、目黒からフォローが入った。

「そういうこと。で、これが生徒会最後の仕事になるわけだ」

・・・そうか、だからこうやって打ち上げを行うのか。

「上野、コップを回してくれ」

「あ、はい」

言われるがまま、俺もそれを手伝うことにした。
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2009/6/23

第110話『全てを受け入れるからこそ』  1月編
「・・・俺が知っているのはこれぐらいです」

会長と神田さんが先生達に報告をしている間に、俺は生徒会室で知っていることを全て打ち明けた。

例の組織やそいつらが行っていること。

それに新橋が関係していること。

会長がそれに対抗する組織に所属していること。

俺の『覚醒』や目黒の『天使』のこと。

そして・・・さっき現れた目黒のクローンについても。

「・・・・・」

その目黒、1年生3人も既に目を覚まし、俺の話をただ聞いていた。

そして、それをただ受け止めていた。

「だが、そんな昔からそれを実現できるだけの技術はあったのか?」

品川さんがそう指摘した。

そう、俺が知っていることだけではいくつか疑問に残ることがある。

その1つが10年以上も前に目黒をクローンとして生み出すことは可能だったのか。

あともう1つが・・・

「それに・・・その『天使』の素質、どうやって見抜いたの?当時はまだエンドレスバトラーの技術は無かったはずよ」

大塚さんの言うとおりだ。

エンドレスバトラー用の武器はもちろん、ログインのシステムもここ数年で確立したものだ。

目黒がまだ幼かった時に、ログイン後に影響のある『天使』の能力を見抜けるとは思えない。

そして、俺が引っかかっている点もある。

「・・・『天使』の能力は最近確認されたばかりだと聞いています。なのに昔からそれを確認できたのは・・・どうしてでしょう」

そう、全ては目黒の過去に謎が集約されている。

だから、目黒の回答が唯一の手がかりなのだが・・・

「・・・私にも分からないんです」

これが目黒の回答だった。

「どういうことだ?」

「物心がついたときには今の孤児院にいて、後から目白さんに虐待を受けていたから私と一緒に逃げ出した、としか聞いてないんです」

そう、全てを知っている目白さんはもう・・・いない。

後は・・・会長から知っていることを聞くしかない。

「お待たせ」

ちょうどいいタイミングで会長と神田さんが生徒会室に入ってきた。

「俺から知っていることは皆に話しました。とりあえず今のことを神田さんにも・・・」

「いや、俺はさっき池袋から全てを聞いた。後は・・・こいつに全てを話してもらう」

そう言ってから2人は席についた。

・・・思えば、生徒会が全員集まるのはこれが初めてかもしれない。

「さて、では俺が知っていることを話させてもらおうか。まず、単刀直入に言う。目黒自身は目白さんのクローンじゃない」

俺や目黒はもちろん、全員が驚きの表情を見せた。

「ほ、本当ですか!?」

「あぁ・・・あの時、最後に目白さんに確認した。目黒はクローンでも何でもない、間違いなくオリジナルだ」

あの時・・・廃工場での出来事のことか。

だけど、そうなるとあの新橋の発言が気になるところだ。

「じゃあ・・・あの時新橋が言っていたことは?あれは嘘だとでも?」

「・・・順を追って話そう。10年以上前、政府の裏組織は既に異星人やサイボーグの兆候に気付いていた」

「え!?」

そんな昔には既に気付いていたというのか?

「そして、その時にはログインの基礎的なシステムは完成したが・・・問題があった」

「問題?」

「・・・武器がなかったんだ」

「あ・・・」

そうか、武器に関しては異星人やサイボーグから鹵獲した兵器を解析して作ったものだ。

その当時にログインだけ出来ても・・・戦う術はまだなかったのか。

「そのため研究者達は、ログインシステムの発展のため、更なる実験を行おうとした」

「・・・『E計画』ですか」

「ああ。軍を追われた後も、秘密裏にそれは行われた。だが・・・途中、被験者が4名脱走した」

「脱走?」

「そのうち2人は・・・目黒と目白さんだ」

「!?」

ここにいる全員が表情を強張らせた。

だけど、裏を返せば・・・

「もしかして、目黒が昔いた孤児院ていうのは・・・」

「あぁ、その実験施設だ。目白さんは既に解明されていた『覚醒』の適合者として実験台にされ、

目黒はそれとはまだ違う能力・・・『天使』の適合を見出され、そこに入れられていた。

当時まだ物心がついていなかった目黒には何もされなかったらしいが、目白さんはもう・・・」

会長はその後に言葉は続けなかったが、大体は察しがついた。

薬物投与に遺伝子操作・・・下手したらそんな幼い時に肉体改造をされている可能性も・・・。

「・・・残る2人は?」

「あぁ。1人は・・・犬彦先生だ」

「!?」

再び全員表情を固めた。

確かにあの時、犬彦先生は『E計画』の被験者だと言っていた。

それ自体は納得が出来る。

そうなると

「最後の1人は・・・?」

「最後は・・・あなたですよね、羅印さん?」

急に会長が入り口の方を向いて言った。

するとその羅印さんが入り口から姿を現した。

「フ・・・バレてたか」

「・・・目白さんも、犬彦先生もいなくなった今、全てを知っているのはあなたしかいません。どういうことか分かりますか?」

「あぁ、言われなくてもそうさせてもらうさ」

羅印さんはそう言うと空いていたイスに座り、話を始めた。

「確かにあの時、俺のような身寄りの無い者が集められ、非人道的な実験を繰り返された。

その中で俺と犬彦先生は意気投合したわけだが、その時知っちまったんだよ。

まだ片手で歳を数えられそうな女の子が2人もこの実験に関わってしまっているてことをよ。

しかも1人はまだ何も手を付けられていないていうじゃねえか。

俺達には、それを見過ごせるほど人としての心を無くしちゃいなかった。

ある夜、他の被験者と共謀して、俺達は脱走を図った。

まだ武器がないとはいえ、ログインすればそれなりの力をつけることが出来たから、どうにかはなった。

だが、研究者達にも用意があったのだろう、仲間達は次々と殺されていった。

結局、俺と犬彦先生、それに目白と目黒の4人だけが生き延びることが出来た。

施設も半壊したみたいだから、データとか色々なくなって大変だったみたいだけどな」

なるほど、だから目黒が目白さんのクローンだなんて偽情報が流れたのか・・・。

「まず、目白と目黒はそこから遠く離れた孤児院・・・つまりは今目黒がいる孤児院に預けた。

一応話をつけて、本当の戸籍と表向きに見せる偽の戸籍を渡したから、見つかることはないはずだった。

それから数年後、異星人やエイリアンの襲撃が激化し、ログインシステムが公になったことを受け、俺と犬彦先生は傭兵稼業を行うことにした。

世界中を回っていたら、『E計画』に関して何か分かる可能性があったからだ。

だが、犬彦先生に異変が起きた。

被験された影響で傭兵を行えるほどの体じゃなくなっていたんだ。

それと時を同じくして、あの孤児院の近くにこの『百花高校』を創立すると聞き、犬彦先生はそこで教鞭を振るうことにした。

その後も俺は戦い続けていたが、犬彦先生と同じように影響が出始め、用務員という形で迎え入れてくれることになった。

幸いなことに、俺と犬彦先生の事情を知っている元傭兵仲間が多数いたこともあったからな。

だけど、それを機に『E計画』関連の情報は入らなくなっちまった。

だから俺と犬彦先生は、ここに入学していると聞いたあの2人を護衛を兼ねて監視することにしたんだ。

すると、だ・・・」

「俺のいる組織と、新橋が入った組織に関することが耳に入った、そういったところですか」

「あぁ。目白と目黒が任務に行くと聞いたときにはなるべく犬彦先生は引率についていくようにしたが・・・」

そこで羅印さんは言葉を詰まらせた。

そう、犬彦先生だけでなく羅印さんも負い目に思っていたんだ。

目白さんを、あのような形で亡くしてしまったことを・・・。

「・・・俺から話せることはこれぐらいだ。何か質問はあるか?」

そう言われ、俺は気にかかっていたことを聞くことにした。

「文化祭で襲ってきた奴らと・・・あと、巣鴨と駒込という奴らにも会いました。そいつらについて何か知っていることは?」

「・・・文化祭で来た奴らに関しては他の先生達に聞いたほうがいいかもしれん。だが、後から『E計画』を受けたというのは

間違いないだろうな。巣鴨と駒込は・・・当時俺や犬彦先生を実験台にしていた研究者だ」

やっぱり・・・何となく予想したとおりだ。

俺はそれを聞き、

「わかりました、ありがとうございます」

ひとまずお礼を言った。

「・・・他にはないようだな、じゃあ俺は失礼する」

帽子を被り直し、羅印さんはその場を後にした。

その後しばらく、生徒会室に重苦しい空気が漂った。

「・・・上野、目黒を送っていってやれ」

それを打ち破ったのは、神田さんの一言だった。

「え?」

「これから、更に戦いが激化するはずだ。それに備えるためにも、まずは目黒を休ませてやるんだ」

確かにその通りだ。

ここまで来た以上、もう後戻りすることは出来ない。

それどころか、生徒会全体まで巻き込んでしまったんだ。

もう迷ってもいられない。

「分かりました。行こうか、目黒」

「う、うん」



「さ、着いたぞ」

「・・・・・」

結局、何を話せばいいか分からぬまま、孤児院の前に着いた。

・・・俺から何を言えばいいのか、正直分からなかった。

「じゃあ、ゆっくり休めよ」

だから、そのまま立ち去ろうとした。

スッ

背中から、急に温もりを感じた。

すぐに何かは分かった。

目黒が背中から抱きついたからだ。

「目黒・・・?」

「・・・さっきは・・・ありがとう」

さっき・・・あの戦闘のときのことか。

・・・正直、礼を言われるようなことをしたつもりはない。

だから、俺はすぐ言葉を返した。

「ここからが本番だぞ、頑張ろうぜ」

「うん・・・」

こんな一瞬の出来事なのに、何故かこの時は永遠のように感じた。



これから起こることが、俺達の一生を揺るがすものになるのだから・・・。
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2009/6/22

第109話『そこに阻むのなら』  1月編
俺の一声と同時に、手に纏っていた『両腕部Iフィールド発生器』は光となってそこから離れ、目の前でその形を変えた。

そこで俺が目にした形、それは・・・一振りの刀だった。

だけど、見た目上特筆すべき点はない。

普通に刀身があって、柄がある、ただの刀にしか見えない。

強いて言うなら、柄に彫られた紋が印象的に見える程度か・・・。

だけど、神田さんですら手に余ると言わしめた武器だ。

きっと見た目だけじゃないはずだ。

俺はその柄を掴み、構えようとした。

だが・・・

ズンッ

「な!?」

な、なんだ、この重さは!?

手に持っただけで痺れが来るような、そんな感覚が俺を襲った。

ただでさえさっき力を消費しすぎている俺には、これはかなりキツい・・・。

「どうした、かかってこないのか?」

そんな俺を見て新橋が挑発してきた。

すぐにでもそれに乗ってやりたいところだが、それどころじゃない。

「来ないなら・・・こっちから行かせてもらうぞ!!」

すると新橋は武器を一瞬であの『エクスカリバー』に変え、こちらに駆け出してきた。

(とにかく、構えないと・・・!)

俺はその一心で新橋の一撃に備えた。

刀が重くても、太刀筋を読むのに影響はない。

「終わりだ!!」

新橋からの渾身の一振り。

「ウォォォォォォ!!」

俺はそれに合わせる形で刀を思いっきり振り上げた。

その次の瞬間だった。

バァァァァァァァッン

俺の刀から今まで見たことの無いような凄まじい衝撃が放たれた。

その凄まじさは、新橋の『エクスカリバー』の片方の刀身を粉々に吹き飛ばすほどだった。

俺が今まで必殺技として使っていた『シャイニングフィンガー』と同等、いや、それ以上の威力があるのは間違いなかった。

「な!?」

これには流石の新橋も驚きを隠せず、一旦その場から後退する形で離れた。

・・・だけど、俺にも今放たれた衝撃が体中を走り、すぐに追撃は出来なかった。

これが・・・この刀の能力なのか?

「く、そんな隠し種を持っていたとはな・・・だが、今度こそ終わりだ!!」

新橋は再び俺に対して攻撃を仕掛けてきた。

だが・・・俺も負けていれない!

重さに堪えながらも刀を振り上げ、新橋の攻撃に合わせて振り下ろそうと構えた。

自然と、柄を握る手に力が入った。

「!?」

こちらに駆けてきている新橋の表情が一瞬変わったのが分かった。

俺もすぐその原因が分かった。

いつの間にか、構えていた俺の刀の刀身が巨大化していたのだ。

でも・・・それに伴って重くなった感じは全くしない。

それは、俺が今の今までそれを感じなかったことからも分かる。

むしろ、ただでさえ重い刀だから、見た目と重量がちょうどピッタリ合った。

だけど、この間合い、そしてこの刀身の大きさを考えれば・・・振り下ろせば届く!

「ウォォォォォ!!」

俺は思いっきりそれを振り下ろした。

この異様な大きさと急な俺の攻撃に戸惑ったのだろう、新橋は避けようとせず

「ク!?」

その場で『エクスカリバー』で防御しようとした。

だが、結果はさっきと同じ。

俺の刀は『エクスカリバー』を粉砕し、さらにそのまま新橋の肩から腰までに大きな太刀傷を入れた。

「ガハッ!?」

その威力に新橋はそのまま後ろに吹き飛ばされ、倒れこんだ。

だけど、俺ももう力が入らない。

それを感じ取ったのか、刀も元の大きさに戻り、『覚醒』も切れたようだ。

・・・ここになって、ようやくこの刀の名前が分かった。

EB用最終破壊刀『菊一文字』。

なるほど、確かに最終破壊というだけあって、その威力は並じゃない。

確かにこれは俺にはもちろん・・・神田さんにも手が余るわけだ。

「ク、クソォォ・・・」

さっき倒れたばかりの新橋が、再び起き上がってきた。

しかも、いつの間にか手にはあの銃を持っている。

「もう・・・やめろ、新橋。勝敗は決したはずだ」

新橋には致命的な一撃が入っているが、俺にはまだない。

やろうと思えば・・・もう一振りぐらいこの『菊一文字』を振れるはずだ。

「まだだ、俺の目的は・・・」

すると新橋は持っていた銃を・・・校舎に向けた。

「ここを破壊することだぁぁぁ!!!」

「クソ!!」

俺は今ある力を振り絞ってその場から駆け出した。

間に合え・・・!

「久々に会ったと思ったらそれかよ、新橋」

俺の耳にそんな声が聞こえると同時に、新橋に対して何かが落下してきた。

俺はそれが何なのか、すぐ理解出来た。

「神田さん!?」

神田さんが『蒼天の剣』で、新橋に対して斬りかかっていた。

新橋はそれを銃でどうにか防いでいた。

「・・・やっぱり、お前だったらそれを使えるはずだと思っていた」

俺が『菊一文字』を持っている姿を見て、そう言ってきてくれた。

「神田ぁ・・・!!」

行動を妨げられたからか、新橋は怒りを露にして神田を振り払った。

その直後。

「神田だけじゃないぞ」

新橋の後ろから巨大なミサイルが飛んできた。

あれは・・・『リフレイン』!?

その飛んできた方を見てみると、そこには・・・

「品川さん!?」

「私達も忘れないでよね」

今度は俺の背後から光線がいくつも飛んできた。

新橋はその猛攻を全て避けることが出来ず、動きを止めた。

それを見てから後ろを振り向くと、そこには・・・

「田町さん!?」

「私達で・・・」

「最後だ!」

俺が反応を示している間に、新橋へと駆けていく2つの影を見た。

もう、何なのか見なくてもすぐ察しがつく。

「大塚さん!大崎さん!」

この2人の攻撃はそれぞれ命中、新橋は今度こそ倒れた。

「・・・終わった・・・」

最後は先輩達の力を借りることになったが、これで新橋との戦いも終わるはずだ。

これで目黒も・・・傷つくことはない。

俺がそう安堵した直後だった。

「だらしないぜ、新橋のあんちゃん」

「全くなんだなぁ」

どこかで聞いたことのある声と同時に新橋の元に駆け寄る2人の人影を見た。

・・・それはすぐに誰か分かった。

「お前ら、あの時の・・・!」

あの文化祭で襲撃してきた、ガキとデブだ。

「悪いけど、あんちゃんにはここで死なれるのは困るんだ」

「そういうことなんだなぁ。だからここは逃げるんだなぁ」

そう言ってきた直後、3人はすぐに姿を消した。

「ま、待て!」

だが、俺の声を発したときには、既に逃げられた後だった。

「安心しろ、すぐにはまた襲ってこないさ。それよりも・・・」

神田さんが俺の肩をポンと叩いて言うと、そのまま会長の方を向いた。

「池袋、そろそろ全てを話してもらってもいいか?」

「・・・あぁ。どうやらそうしなきゃいけないみたいだな」
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2009/6/17

第108話『大事だと思えばこそ』  1月編
「『JSAモード』起動!フィールド展開!!」

一刻の猶予もなかった。

俺はすぐさまフィールドを全力で展開し、迫ってくる光線に備えた。

その目の前で、本来は新橋がそれに直撃するはずだった。

だが、ただでさえ隙が大きく直線的な砲撃の『ジャンクション』。

それを新橋が見切れないわけなかった。

すぐに跳躍してそれをかわされ、光線が真っ直ぐに俺へと突っ込んできていた。

だが、迷うことは無い。

俺がやるべきは2つ。

まずは・・・

「ウォォォォォォ!!!」

フィールドで光線を止めること!

フィールドと光線がぶつかりあった瞬間、光線は先端が分散され、そこで途切れた。

だけどそれと同時に俺にもかなりの衝撃が襲ってきた。

この衝撃は・・・半端じゃない。

でもこれで校舎を守るという目的は果たせそうだ。

それに、俺にはもう1つやらなければならないことがある。

それは・・・目黒を止めること。

これ以上目黒にこんな体の負担が大きいことをやらせるわけにはいかない。

俺は1歩ずつ前進した。

そうするごとに俺への衝撃が大きくなるが、目黒が負っている負担に比べれば軽いはずだ。

早く・・・それを止めないと・・・。

「やらせるかよ!!」

突然どこからか新橋の声が聞こえてきた。

ふと横を向くと、新橋が銃を俺に向けて構えている。

そこまでして・・・ここを破壊したいのか!?

今の俺に回避する術は無い。

引き金を引かれれば・・・終わっちまう。

「させないぞ」

今度は会長の声がすると共に、銃に『自由の代償』が当たり、銃口が全く別の方向を向いた。

「く、池袋!!」

「上野君、ここは任せてくれ。君は目黒を!」

会長からの言葉に、俺は返事をする余裕はなかった。

ただ頷き、再び前進を開始した。

だけど・・・そろそろ『両腕部Iフィールド発生器』の稼動限界を迎える。

それまでに目黒に近づかなければならないが、このペースだと・・・無理だ。

このまま・・・終わらせちまうのか!?

いや、そんなことはさせない。

させてたまるか!!

その時だった。

キィィィィィィィン

突如俺は『覚醒』した。

狙ったわけじゃないのに・・・ここで何故?

でも、そんなことを考えている暇は無い。

この『覚醒』で、光線をどのように突き進めばいいか感覚的に理解できた。

俺は・・・そのまま一気に直進した。

光線は見る見るうちに短くなっていき、目黒へと近づいていった。

(あと2秒!)

『両腕部Iフィールド発生器』の残り稼働時間を感じ取ると同時に、俺は『ジャンクション』の砲身を掴んだ。

そしてそのまま上空へと投げると同時に、稼動限界を迎えた。

すると目の前の目黒は、武器を変える構えを見せた。

まだ・・・戦おうとするのか!?

(これ以上の戦闘は・・・させるわけにはいかない!)

直感的にそう思った俺は、すぐさま目黒を抱きしめた。

「・・・ウ・・・エノ・・・クン?」

全身を硬直させた目黒がそう呟いた。

ここは、とにかく目黒を落ち着かせるんだ。

「目黒、あいつが言ったことなんて信じるな」

「でも・・・わたし・・・クローンなんだよ?偽者なんだよ?」

目黒の虚ろな瞳から、涙が流れ、俺の肩を濡らした。

余程、そのことがショックだったんだろう。

だけど、俺は・・・

「そんなこと構うものか!」

「え・・・?」

「俺にとってお前は・・・目黒は1人だけだ!」

もう、何の迷いもなかった。

俺はただ、本心を目黒に伝えた。

「本当に・・・いいの?」

「あぁ。今のお前じゃなきゃダメなんだ」

「・・・ありがとう」

その瞬間、目黒の背中から発生していた黒い翼が音も無く散った。

それと同時に、目黒もその場で膝から崩れた。

「目黒!?」

元々抱きしめていたため、転倒は免れた。

息は・・・している、ただ気を失っているだけだ。

俺はそっとその場で横にした。

「なんとか収まったみたいだな」

すぐそばに駆け寄った会長が声を掛けてくれた。

「えぇ・・・」

とりあえず、これで一安心だ

「チ、よくも止めてくれたな」

少し離れたところから、新橋がこっちを見ている。

・・・もう、ここで決着をつけよう。

そうしなきゃ、また目黒が傷つくことになるだけだ。

「会長、ここは俺にやらせてください」

「あぁ。最初からそのつもりだったさ」

「・・・ありがとうございます」

一言会長に礼を言ってから前に出た。

「ハ、お前1人でどうにかなるとでも思ってんのか?」

俺はその言葉を半分受け流しながら、ポケットに入れていたチップを取り出した。

すると、神田さんがあの時このチップを渡してくれたときのことを思い出した。

『お前だったら、それを使うときを自然と見つけられるはずだ』

・・・ずっと、考えていた。

今リストにセットしているこのチップを俺は使うときを見出せるのか、と。

・・・今なら迷わず言うことが出来る。

これを使うのは、今この瞬間だ!

「ウェポン・チェンジ!!」
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2009/6/13

第107話『堕ちた要因』  1月編
「破滅・・・?どういうことだ!!」

「俺が説明するまでもない、池袋にでも聞くんだな」

「何・・・!?」

俺と新橋がそうやり取りしていると、突然目黒の周りを包んでいた黒いエネルギーが晴れた。

そしてうずくまっていた目黒はゆっくり立ち上がったが・・・

「め・・・目黒?」

目を疑うような大きく変わった点が2つあった。

1つは、目黒の瞳が虚ろになっていること。

もう1つは・・・光り輝いていた目黒の翼が黒く変色してしまっていることだ。

「これは・・・どうにかしないとな」

そう言って会長は持っていた『自由の代償』を構えた。

「ど・・・どういうことですか!?」

とにかく、この状態が何なのか分からない俺には、1つでも情報が欲しかった。

今の目黒に・・・一体何が起こっているか知るためにも。

「あの『天使』には、体の負担が軽くなるというメリットがあるが、大きなデメリットも存在するんだ」

「デメリット?」

「もし・・・『天使』を発動させた状態で精神状態が不安定になった時、その効果が急激に変化する。

その状態のことを『堕天使』と呼ばれているんだがな・・・」

「『堕天使』・・・?」

「あぁ。この状態になった時、『天使』の時とは逆に体への負担が増加し、その分破壊力が増す」

「え!?」

俺はそれを聞いて目黒を確認した。

目黒は手に持っている『ピーコック・スマッシャー』を構え、今にも発射しようとしていた。

「!」

「避けるんだ!」

俺と会長が危険を察してその場から飛び離れた次の瞬間。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

『ピーコック・スマッシャー』から9本の光線が放たれた。

その1本1本の威力は、確かに普段とは違うと瞬時に理解することが出来た。

その光線は俺達の上を通り過ぎ、向かった先は・・・あのクローン達だった。

しかも、ホーミング能力も上がっているのかそれを避けきれた奴はいなく、すぐに跡形もなく蒸発してしまった。

だけど・・・これは意外だ。

目黒の状態は一見、強化された状態に似ている。

となると、理性を失って敵味方なく攻撃するものだと思っていた。

だけど、一番近くにいた俺達ではなく真っ先にクローン達に攻撃を仕掛けた。

これは・・・どういうことだ?

「会長、これは・・・」

「『堕天使』になると、まず最初にその状態にした対象を破壊しようという習性があるんだ」

「え!?」

目黒をあの状態にした要因、それはあのクローン達と・・・それを連れて来た新橋だ。

「あぁ、その通りさ!」

こっちの会話が聞こえたのだろう、新橋が声を掛けてきた。

「何のつもりだ!」

自分自身が狙われるのに、何でこうも平然としていられる?

「俺はな・・・こうしたかったんだよ!」

そう言うと、新橋は跳躍した。

そして着地した場所、その背中には・・・校舎が建っていた。

もしこの状態で目黒が砲撃したら、校舎は・・・中の生徒や先生達が!?

「な、何のつもりだ!」

「俺はな、前からここを破壊したかったんだよ」

「え?」

「ここさえ無くなれば、もう目白さんみたいな人が出ないだろ?だからな・・・」

「め・・・メジロさん・・・」

新橋の一言に反応したのか、目黒が呟くと同時に武器を『ジャンクション』に変化させた。

それと同時に、砲口にエネルギーが急速に集まりだした。

あれは・・・『ジェノサイドモード』!?

あんなのをあそこで放ったら、新橋はもちろん、校舎も破壊されちまう。

それどころか、あの状態でただでさえ負担の大きい『ジェノサイドモード』を放ったら、目黒自身も・・・。

「目黒、やめろ!!」

「さぁ、目黒、放ってみるがいい!!」

「アァァァァァァァァ!!!!!!」

ダメだ、発射を止めることは出来ない・・・。

そう直感した俺は、跳躍して校舎前に着地した。

新橋はいいが、校舎だけは守らなければ・・・。

そう決意したとき、『ジャンクション』から光線が放たれた。
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