2009/11/14

外伝4『過去に起こした罪』  外伝
「羅印さん、お疲れさまです」

「・・・ああ、九十九か。お疲れ」

とある町の民宿で、2人は先ほどまでの戦いを労っていた。

異星人とサイボーグの襲撃が始まって以来、『エンドレスバトラー』達は世界各地を飛び回り、戦いを繰り広げていた。

そんな中羅印と九十九、そして今は報告のため外に出ている蛇行の3人は久々に日本に戻ってきていた。

静かな町ではあるが、戦闘が頻繁に起こる場所からそう遠くない場所にあるため、九十九と蛇行はよく利用していた。

この2人だけではなく、他の戦友もここの常連であった。

そんな危険と隣り合わせの人間にも関わらず、宿の主人は快く彼らを迎え入れていた。

その厚意に、常連達はとにかく感謝していた。

「・・・どうしたんですか?疲れているようですけど」

「い、いや、大したことは無い」

「・・・もしかして、例の症状が?」

「・・・あぁ、そうかもな」

何度も同じ死線を潜り抜けてきただけあり、羅印が『E計画』の被験者であることは自然と知られていた。

そして、ここに来て羅印にその影響が徐々に出始めていた。

「とりあえず、水持ってきますから、そこで横になっていてください」

「あ、あぁ。すまない」

そう言って羅印はその場で横になった。

九十九も部屋を出て、1階の食堂まで足を運んだ。

そこに常備してあるコップの1つを手に取り、蛇口から水を汲んでいると

「よ、九十九のあんちゃん」

背後から突然声が聞こえた。

蛇口を締めながら後ろを振り返ると、まだ小学生ぐらいの少年がいた。

宿の主人の1人息子であった。

九十九は常連ということもあり、既にこの少年と面識はあった。

「どうも、どうしたんだい?」

こんな子供にも、九十九は丁寧に対応した。

「もう戦闘終わったんだろ?だったら遊ぼうぜ」

「すまないが、まだやることが残っていてね。その後でいいかい?」

「しょうがねえなぁ、じゃあ待っていてあげるよ」

つまんない、と言いたげな表情を浮かべながら少年は対応した。

「すまないね。それじゃあまた」

九十九は水を入れたコップを片手にその場を後にした。



「羅印さん、水持ってきましたよ」

横になってる羅印の横にそっとコップが置かれた。

「あ、あぁ・・・すまない」

起き上がった羅印はコップを手に取り、一気にその中の水を飲み干した。

それでも、疲れの色が取れることはなかった。

「もう少し寝ていてください。何かあったら起こしますから」

「あ、あぁ。すまない・・・」

羅印はそれだけ言って、すぐさま眠りに落ちた。

それを見届けた九十九は、そっと部屋を出ようとした。

その時だった。

ピーーーーー ピーーーーー

九十九の認証リストのアラームが鳴り始めた。

それに気付き、すぐさまケイタイを取り出し、周りの状況を確認した。

液晶画面からは、2つのログイン反応が少し離れた場所で発見された。

それはすなわち、近くで誰かが戦っていることを意味していた。

それに2人ということは今外に出ている蛇行でもない。

それを知って、九十九は黙っていることは出来なかった。

(早く行かないと・・・!)

今は眠っている羅印を心配しながらも、九十九は外に飛び出た。

「九十九!」

その声が誰なのか、九十九はすぐ理解できた。

先ほどまで外にいた蛇行であった。

「目的は同じですね」

「だな!行くぞ!」

「はい!EB・・・」

「「ログイン!!」」

2人は揃って認証リストに『EB−ID』を挿入し、ログインした。

そして強靭になったその体で一気に目的地へと駆け抜けた。



2人が目的地へたどり着いたとき、異星人もサイボーグも姿は無かった。

いたのは、人が2りだけであった。

「フフフ、久しぶりね」

「お前ら・・・鶯谷に恵比寿!」

それは同じ戦友である鶯谷と恵比寿の姿であった。

「どうしたんですか?ログイン反応なんか出して」

九十九はそれに対して冷静に問いただした。

「ボク達はただの囮なんだなぁ」

「囮?どういうことだ?」

「こういうことよ」

すると鶯谷と恵比寿は認証リストを2人に見せた。

そこには、強化を示す赤い液晶画面が見えていた。

「お前ら・・・何をしてるのか分かってんのか!?」

蛇行が声を荒げて聞いた。

「分かってるわよ。こうやって、効率よく力を手に入れているの」

「これが上手くいけば、異星人もサイボーグも簡単に殲滅出来るんだなぁ」

全く悪びれた様子も見せず、2人はそう答えた。

「それよりも、ここに来ていいの?」

「何?」

鶯谷の言葉に、九十九が反応した。

「言ったでしょ?私達は囮だって。あの宿に、かつての裏切り者がいるものね・・・」

「!?」

すぐに裏切り者とは誰を指しているのか九十九と蛇行は理解した。

今は宿で寝ている、かつて『E計画』の被験者であり、脱走者である羅印ということを・・・。

「も、戻りましょう!」

「あぁ!!」

すぐさま2人はその場を離れ、宿の方へと駆け出した。

「行かせないわよ」

そんな2人の目の前に、『Bit・ラズヴェート』が立ちふさがった。

「どいて下さい!!」

すぐさま九十九が『ダブル・ドラゴン・ファング』を伸ばし、なぎ払った。

破壊こそ出来なかったが、道は出来た。

迷わずその道を行き、一気に追ってこれないほどの距離を稼いだ。

「狙い撃ちなんだなぁ」

そのあまりに狙いやすい的を見た恵比寿が、呟きながら『トリプル・メガ・ソニック砲』を構えた。

そして何の邪魔も入らずにチャージは完了し、そのまま発射した。

「くらうかよ!!」

その凄まじい光線を、蛇行はすぐさま振り返り打ち返した。

いくらかの抵抗はあったものの、光線はそのまま真っ直ぐ恵比寿へと返っていった。

「危ないんだなぁ」

それを間一髪のところで避けながら恵比寿は呟いた。

「でも・・・作戦は成功ね」



2人がたどり着いた頃には、宿は燃え上がっていた。

「く、間に合わなかったか!?」

そう悔しさをにじませていると、突然宿の窓から何かが飛び出して来た。

2人の目の前に着地した後、それが羅印であることを確認出来た。

「羅印さん!大丈夫ですか!?」

「あぁ・・・間一髪だった」

所々衣服を燃やしながらも、羅印は自身の無事を伝えた。

「そうですか・・・良かった」

「だが、中の主人や子供が・・・」

「え!?」

そう言った次の瞬間だった。

宿の屋根から何かが飛び出してきた。

それは小型の戦闘機のようなものであり、その上にはあの少年を抱えた男が乗っていた。

「ま、待て!!」

蛇行がそう叫ぶも、もはや声はおろか追いかけても間に合わない距離にいた。

「まさか・・・最初からあの少年が目的で?」

「・・・かもな。あの子には確かに素質はあった」

何かを思い起こすかのように、言葉を交わした。

「羅印さん、本部への報告をお願いします」

「分かった・・・お前達は?」

「私達は・・・彼らを追います。あの子が罪を犯してしまう前に」

そう言って2人はそのまま駆け出した。



その後、少年は罪を犯してしまったものの、2人の手により無事更生されたと報告されている。
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