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妖精的日常生活
番外編 その4 仮題
作:ジャージレッド


「た、ただいまー……。ああ疲れた」
 ワタシがいつものように同級生の福井繭子ちゃんの両親が経営している喫茶店、瀬里佳から帰ってきたのは、もう既に夜の8時半をまわっていた。毎週水曜日 休みで、平日は夕方の4時から夜の8じまで。土日は朝の10時から1時間の休憩をはさんで夜の8時まで。
 ふうう……、一口にバイトって言うけど、結構忙しいんだよね。だって看板妖精娘はワタシ1人っきりだから、よほどのことがない限り、気楽にバイトを休む わけにはいかないってわけ。まあ最近の瀬里佳は、【妖精さんのいるお店】ってことで売り出しているから、しょうがないと言えばしょうがないかな。
「美姫姉ちゃん、おかえりなさいっ! 待ってたんだよ。ちょっと、早くこっちにきてよっ! 早くっ!」
 疲れたワタシを出迎えてくれたのは、なんだかとても焦っている幸也だった。いったいどうしたんだろう? いつもはこんな感じじゃないのに。変な幸也だな あ。
「早くって、言ってもバイトが終わって疲れているんだから、もうちょっと後にしてよ。せめて着替えるまでまって手くれても良いんじゃないの? 一応、この 服って仕事着なんだからね」
 そういいつつ、メイド服のスカートの裾をちょっと持ち上げるワタシ。最近はスカートにも慣れてきて、スカートを着ていてもそのこと自体では、特に羞恥心 を感じることは無い。……だって似合っているんだからしょうがないでしょ。今となっては男の子の服を着たほうが、完全に男装という感じで恥ずかしくなるか も知れない。
「ごめん、でも時間が無いんだよ。とにかくこっちに来て。美姫姉ちゃん」
 幸也は、そう言うが早いか、飛んでいるワタシの胴体をむんずと掴むと、自分の部屋、つまりはワタシが人間の男の子で幹也と名乗っていたときに、幸也と共 有していた部屋に、連れていかれたのだった。
「こら、いきなり何するんだよ。それよりもちゃんとパソコンの電源はきってあるんだろうな?」
 拉致られることも問題だが、幸也の部屋には、ワタシが人間だった頃に使っていたパソコンが置いてある。妖精はパソコンや携帯電話などのネット機器に悪影 響をうけて気絶したりするので、自動的にそのパソコンは幸也のものになったのだ。ちなみに、兄や姉の持ち物が弟や妹にお下がりするのは、世の中の常識とは いえ、今回のパソコンの件は、結構悔しい。だって買ってからまだ1年もしていなかったんだよ。
「パソコンの電源は切ってあるから安心してよ。というか、今、パソコンの電源を入れられないんだ……」
 なぜか言葉を濁す幸也。
「まあいいや、とにかく用事があるなら、さっさと済ませちゃおう。で、どんな用事なんだ?」
 抵抗しようにも、身体を掴まれているから逃げることも出来ないワタシは、そう言うしかなかった。まあどうせ幸也の用事なんて、すぐに終わるに決まってい るしね。もしかしてテストの点でも悪かったのかな?
「……説明するより、直接見てもらったほうが早いと思うんだけど……」
 幸也は、ワタシを机の上にそっと置くと、その横に置いてあった縦横それぞれ10cmもないような小さな紙製の箱を指差した。
「なになに……、『ひろってください』って書いてあるな。あっ! もしかしてまた何か拾ってきたのか!?」
 妖精マニアで有名(?)な幸也だが、それ以外にも小さくて可愛いものなら何でも好きという趣味があるので、道端に犬や猫が捨ててあると、すぐに拾ってき てしまうのだ。もちろん拾ってきた犬や猫を全部飼うことは出来ないので、たいていの場合は、もらい手を見つけて引き取ってもらうことになるのだが、きっと 今回もそれだろう。
 ちなみに現在のうちには犬も猫もいない。前までは雌の老犬が一匹いたのだが、3ヶ月前に老衰で亡くなったのだ。
「普通の動物じゃないんだ……」
 何を拾ってきたのかを言おうとはしない幸也。どうにも歯切れが悪い。いったい何を拾ってきたんだろう? この箱の大きさならハムスターかな。でも普通の 動物じゃないって言うし、もしかしてトカゲかカメ? それともヘビだったりして……。
「まあいい、見れば分かるんだな?」
 待ってても、幸也は、何を拾ってきたのかを具体的に言おうとしないので、しょうがなくワタシは、その箱のふたに手をかけ、それを開けたのだった。そして その箱の中に居たのは……。
「なっ、なんだっ!? これって、妖精の子供じゃないかっ!?」
 箱の中には、妖精の子供。それも外見からすればまだ2才から3才にしか見えない妖精の男の子と女の子が、すやすやと眠っていたのだった。おいおい、こ れってもしかしなくても捨て子?


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「で、詳しい話を聞かせてもらおうか?」
 ワタシは、幸也に向き直ると、厳しい顔で詰問した。別に幸也に対して怒っているわけではなく、この子達を捨てた親に対して怒っているのだが、自然と怒り が表情に出てしまうのだった。
「詳しい話っていっても、僕が小学校から帰ってきたら、家の玄関の前にこの箱が置いてあっただけで……」
 どうにも要領を得ない幸也。まったくもうっ! 今の状況が分かっているのかな?
「幸也、犬や猫を拾ってきたのと訳が違うってことを、ちゃんと理解しているの。これって捨て子なんだよ。大変なことなんだよ」
 お父さんやお母さんにも相談せず、真っ先にワタシに相談したということは、幸也の奴ってばこの妖精の子供達をこっそりと【飼おう】としていたのだろう か? 妖精のことを良く知っている幸也ですら、妖精に対する認識が犬猫に対するものと同じかと思うと、悲しさを通り越して、呆れ果ててしまうワタシだっ た。
「でも、この子達可愛いし……。警察なんかに届けたら、施設に入れられちゃうんだよ。知ってる? 美姫姉ちゃん……。妖精の子供達が入れられる施設って、 圧倒的に数が足りないから、人間の子供達が入れられる施設に比べると、ものすごく環境が悪いんだよ」
 なんだか、うるうると涙ぐみ、訴える幸也。どうやら幸也は、妖精に対してきちんとした認識を持っているがゆえに、今回の行動に出たらしい。もう、悪かっ たよ。怒ってごめん。
「環境が悪いって、どれぐらい?」
 妖精のことに関しては、文字通り他人ごとではないから、今の状況はひとまずおいといて、ワタシは幸也に質問した。
「ほら、妖精の子供ってこれぐらいの大きさにまで育つと、自分の羽で飛べちゃうでしょ。だから庭であそばせたりとか出来ないし、身体も小さいからどこかに 迷いこんだら探すのも大変でしょ。だから……」
 そこまで言うと、本格的に涙を流しだした幸也。うーん、泣くなよ。男の子だろ。
「だから?」
 とりあえずそう言うしかないワタシは、幸也に言葉を続けるように促した。まずはちゃんと聞かなくちゃ。
「だからね、こういうふうに捨てられたり、親を亡くした妖精の子供が入れられる施設では、妖精の子供達は【鳥かご】のような檻(おり)の中に入れられちゃ うんだよ。たしかにそうしないと、ふらふらと外に飛んでいっちゃて、カラスに食べられたり、迷子になったまま餓死したりする危険性が高いってのは分かるん だよ。でも、それってかわいそう過ぎるよ。1日中、ずっと檻の中なんだよっ!!」
 感情を爆発させたのか、涙がとどめもなく出て

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