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魔法少女♪奈里佳 第
3話
少年少女文庫版おまけSS
おまけSS 猫だってご飯は食べるにゃ♪
by ジャージレッド
教室の中で猫が鳴いている。
猫達の春の季節でもないのに、まるで今がその時のようだ。『にゃあにゃあ、にゃあにゃあ』とうるさい教室の中、克哉はぼんやりとそんなことを考えてい
た。
ぼんやりしていても時間だけは過ぎて行く。午前中の授業も終わり、昼食の時間。母親に手伝ってもらいながらも、何故か自分で作ることになった弁当を前に
して、克哉は、軽いため息をつく。
うるさい猫の鳴き声にちょっといらつかなくもないが、文句を言えた義理ではない。そういったどこかやり場のない気持ちがため息をつかせたのであろう。何
はともあれ、教室の中で猫達(?)が鳴き続ける原因を作ったのは自分自身であると言っても間違いではないからだ。
「どうしたんだにゃ? もしかして食欲がにゃいのかにゃ?」
机の上に置いた弁当を食べるでもなく、ただ見つめていた克哉に話しかけてきたのは、克哉の親友である佐藤雄高であった。見事なほど語尾に、『にゃ』をつ
けてしゃべっているのは、別に趣味だからとか、あぶない人だからというのではない。教室内の大半の生徒と同じで、今はそういったしゃべり方しか出来ないの
だ。
先日、おにゃんこナースによって猫耳ナースッ娘に変身させられた人達は、例によってかなりの割合で変身現象の後遺症が残ってしまったのだ。
しかも今回は、前回のように部分的な女性化というだけではない。プラスして猫耳ナースッ娘化という症状も加わっている為に、その後遺症は男子生徒、女子
生徒を問わずあらわれていたのだった。
というわけで、克哉が見ている教室内の生徒たちは、猫耳が生えている者。手が猫の手になっている者、猫尻尾が生えている者。とにかく女性化と猫耳ナー
スッ娘化が複合して、とある高尚な趣味の持ち主にとっては、まるでパラダイスかとみまごうばかリの、とんでもない状況になっていたのだった。
ああ、そうそう。もちろん猫背や猫舌になっている者だっている。ちなみに熱いのが苦手な猫舌になってしまったという、そんな彼、もしくは彼女相手に、熱
いディープキスをしてはいけないのは言うまでもない。ザラザラしているし……。
まあ、そんなこんなで猫耳ナースッ娘に変身していた後遺症が様々な形であらわれているというわけなのだが、女性化の後遺症が残っているだけの者はともか
く、猫耳ナースッ娘化の後遺症が残っている者の大半が、語尾に、『にゃ』をつけたしゃべり方しか出来なくなってしまっていたのだった。
「食欲はあるよ。ちょっと考え込んでただけ」
本当は単にボーッとしていただけで、何かを真剣に考え込んでいただなんてことはまったくない。矢島克哉とは、そんな少年、いや正確に言うと、とりあえず
一応仮にも外見は少年なのだが、アソコだけが女の子になっているという、ちょっと特殊だが、今の中津木中学校ではごく当たり前の少年(少女)なのだった。
「じゃ、一緒に食べるにゃ♪」
そう言うが早いか、雄高はすぐ側にあった自分の机と椅子を運んでくると、それを克哉が座っている机に、向きあうようにくっつけた。
「ところでお願いがあるんにゃけど、いいかにゃ〜?」
どこか甘えるような声を雄高は出した。普段はしないような上目使いが、妙と言えば妙だ。
「お願いって?」
何も考えていないのか、克哉はオウムのように聞き返す。
「たいしたことじゃにゃいにゃ。ただ、お弁当を食べさせて欲しいだけにゃ」
そう言うと雄高は自分の弁当を机の上に乗せるのだった。どこにでもあるような、ごく普通のプラスチック製の弁当箱である。しかしその弁当箱を持っている
雄高の手は普通ではなかった。両手とも猫の手になっていたのである。
(なるほど。雄高君は、手が猫の手になったままという後遺症が出ちゃったのね)
それまで黙っていた奈里佳2号がコメントをする。
(……本当に後遺症なの? 奈里佳2号が面白がって変身させているんじゃないだろうね?)
ふわふわとした白い毛が生えて、指とは言えない短い指をした猫の手。もちろんぷにっとした肉球もついている雄高の手を見て状況を把握すると、すかさず無
言のまま奈里佳を問い詰める克哉。
それにしても雄高のこととなると、やや本気モードになってしまう自分に気がついているのだろうか。
(想像にお任せするわ♪)
肯定も否定もしない奈里佳2号。しかしそのことが、これは奈里佳2号の仕業ではないかという克哉の疑念を、更に大きくさせるのだった。
「雄高、その手じゃ大変だね」
まるで彼氏を心配する彼女のような雰囲気を、無意識のうちに出している克哉。
「そうにゃ。大変にゃのにゃ。この手じゃ、箸どころかスプーンやフォークも持ちにくくてしょうがにゃいにゃ」
おどけるようにそう言ってはいるものの、その不自由さは想像に難くない。何でもないように言う雄高を見ていると、克哉はきゅんと胸が小さく音を立てるの
を止めることが出来なかった。
「わかった。じゃあ、僕がお弁当を食べさせてあげるよ」
邪気の無い明るい笑顔を浮かべながら、雄高の顔を見る克哉。それぞれが男子用の学生服を着ているのに、何故か見つめ合う2人のバックには花が飛んでい
た。う〜ん、いいのかなあ、これで?
「はい、あ〜んして♪」
箸先を雄高の口元へと運ぶ克哉。ご飯がこぼれるといけないと、左手を受け皿にしている。
普通、ちょっと考えると、こういった行為を人前でやるのはけっこう恥ずかしかったりする。しかし、やはり猫の手になった生徒相手に、教室の中では似たよ
うな光景があちこちで展開されているので、やってみると意外と恥ずかしくない。
もっとも、仲良しの友達をいうレベルをなんだか越えちゃってる雰囲気を出しているのは自分達だけだという自覚は、克哉には無い。
「あ〜んにゃ♪」
嬉しそうに口を開けるj雄高。いかに今の克哉のアソコが女の子になっているとは言っても、元々の元はれっきとした男の子である。そんな相手から、『あ〜
ん』と食べさせてもらって嬉しいのか、雄高? まあ、……嬉しいんだろうな。
「でも、大変だね。手が猫の手のままだと」
なんだかほのぼのらぶらぶ〜といった空気の中で克哉は雄高に質問した。
「まったくにゃ。猫耳とかだけだったにゃら、そんにゃには苦労しにゃかったかもしれにゃいけど、手が猫の手のままだと、服を着るのもトイレに行くのも、つ
いでに鉛筆を持つのも、ひと苦労にゃ。まあ、尻尾が生えていないだけ、まだマシにゃんだけど」
そう言う雄高の猫耳がピクピクと小さく動く。確かに気をつけて教室中をよく見てみると、猫の尻尾を生やしている生徒も何人かいる。
「そうか……。尻尾が生えてると、下着や服に穴を空けないといけないものね」
尻尾が生えていても、女子生徒ならばショーツに穴を空けるとかすれば、あとはスカートの中に尻尾をたらしておけば特に問題はなさそうだ。しかし男子生徒
の場合、ズボンの中に尻尾をいれたままだとさぞくすぐったいだろう。
「にゃかにはズボンを前後にはいて、チャックのところから尻尾を出しているやつもいるにゃ。それにしても克哉には、今回も、またアソコが女の子になってい
るっていう後遺症だけにゃのかにゃ? 見たところどこも猫化はしてにゃいようにゃけど?」
雄高は、ご飯を食べさせてもらいながら、目の前の克哉を観察していたらしい。
「うん、それだけだよ。そういえば雄高のほうはどうなの。やっぱり女の子になってるの?」
既にアソコが女の子になっていることを隠す必要などまったくないので、克哉の返答は素直なものだ。
「うにゃ、今回は猫化だけみたいだにゃあ。にゃんだかちょっと残念にゃ」
すでに集団変身現象そのものは3回。後遺症のほうも2回経験済みということでもあるので、雄高も含めてみんなのんびりしたものである。時間が経てば元に
戻るということもあるが、自分だけじゃないというのが安心感を与えているらしい。
「女の子化したかったの?」
本当の後遺症ではなく、奈里佳2号に無理矢理アソコだけ女の子にされてしまった克哉としては、それをうらやましがる雄高の気持ちにはあまり共感出来ない
のだった。
「そういうわけでもにゃいけど、猫耳ときたらおんにゃの子だと思うにゃ。猫耳の男っていうのは邪道にゃッ!」
こぶしを作ることができない猫の手を精一杯握りしめて、雄高は力説をする。まあ、その気持ちは分からなくもないが、邪道と言い切るのはどうかと思う。そ
んなことを思いながら、『雄高って馬鹿だなあ。でも可愛い♪』などと、親友相手にときめいてしまってる克哉だった。自分ではそのことに気がついていないけ
ど、すでに心の女性化も進行中かもしれない。
「ふふふ。どっちだっていいんじゃないかな? そんなこと……」
というわけで、克哉は妙ににこやかな笑みを浮かべつつ、箸を雄高の口元に運ぶのだった。それはもう幸せそうに。
「……気にくわないわね」
克哉と雄高が一緒になって仲良く(?)食事をしているのを見ながら、夏美は誰にも聞こえないような声でぼそりとつぶやいた。2人を見つめる視線は、限り
なく冷たい。克哉と雄高のみならず、夏美のまわりでは、多くの同じようなカップル(?)が仲良さそうな雰囲気をかもし出しているのだ。これでイライラしな
い独り者はいない。
(ふむ。他人が仲良くしているのを見て勝手に怒っていても、しょうがないだろうに)
夏美に対して声のない声で話しかけてきたのは、夏美の脳神経系に融合しているナノマシンの集合体であるユニ君である。
(にゃあにゃあみゃあみゃあと、うるさいのよ。あの声を聞いてると、神経にさわるのよ。ほっといてちょうだい)
不機嫌な様子を隠そうともしない夏美。もっともユニ君相手に夏美が隠しごとなど出来ようはずもないのだから、当然といえば、当然な態度である。
(本当に気にくわないのは、あの2人よりも、堀田修司のことではないのか?)
夏美の視界に点滅する矢印があらわれると、夏美があえて見ないでおこうとしていた人物を指し示す。あくまでもそれを無視しようとしていた夏美だったが、
チカチカと点滅する矢印の無言の圧力に負けて、ついついそれを凝視することになってしまった。猫耳少女な堀田修司を……。
(まったくあのバカ、いつまで猫耳少女なままなのよ)
既に猫耳ナースッ娘に変身していた者の半数が元の姿に戻っている。また残りの半数の変身現象の後遺症が出ている者にしても、身体の一部だけが猫化してい
るだけだというのに、何故か堀田修司に限っては、昨日変身していた猫耳少女の姿そのままだったりするのだ。
(やはり、変身したときの事情が事情だからということではないのかな?)
そのままユニ君は、その事情、つまり堀田修司が猫耳ナースッ娘の注射器ミサイルを奪い取り、自分の腕に注射器を突き立てて変身していく様子を記録した映
像を、夏美の視界の片隅に映し出した。
(……ホント、バカなんだから。まったくもうッ!)
口調は厳しいものの、なにかその他の感情も込めた夏美の言葉を聞いて、ユニ君は存在しない肩をすくめるのだった。
(意地を張らずに、昼ご飯ぐらい一緒に食べたらどうなんだね? 奈里佳に変身させられたとは言っても、彼には何の罪もないんだから、気にすることは無いと
思うんだが、どうだろう。ほら、彼もこっちを見ているぞ)
ユニ君が言うように、猫耳少女な堀田修司は、うるうると泣きそうな目で何かを訴えるように夏美を見ている。考えるまでもなく夏美に弁当を食べさせて欲し
いのだろう。それにしても着ている服は学生服でもセーラー服でもなく、なぜか私服のワンピースである。いったいどこから調達してきたのだろうか。謎であ
る。
(ほっときゃいいのよ。一食や二食ぐらい抜いても死にはしないわ)
本気なのか強がりなのか、夏美は修司から目をそらすと、明後日の方向を向く。
(ま、無理にとは言わないがね。どうやら夏美が行かなくても良くなってきたようだし)
機械のくせになぜか、含み笑いをしているかのようなユニ君の口調と、その発言の内容に、夏美は逸らした視線をまた修司のほうへと向けた。するとそこに
は、誰が見ても可愛い猫耳少女な修司に話しかけている女の子がいたのだった。それまで夏美に遠慮して、話しかけるのを控えていたのだが、修司を拒否する夏
美の態度を確認すると、我慢できなくなったようだ。もしかしなくても猫耳マニアなのだろうか?
「!?」
声無く叫ぶと、夏美は机を鳴らして立ち上がると、注目するクラスメートの視線を気にすることなく修司の元へと歩き出した。その気迫に押されて、修司に話
しかけていた女の子が逃げるようにその場を離れていく。ついでに修司もおびえたようにおろおろとしているが、動けずにいるようだ。
「え〜と、にゃ、にゃつみ?」
何が言いたいのかよくわからない。
「修ちゃん、ちょっとこっちに来なさい」
修司の目の前に立つと、むっとした声でそう言う夏美。ちょっと怒っているのが分かるのか、修司はビクッとけいれんしたような反応を示す。
「にゃ、にゃにをする気かにゃ?」
なぜかおびえる修司には何も答えず、夏美は、猫の手になっている修司の手をギュッと掴むと、有無を言わせずに引っ張って行った。
「い、痛いにゃ、は、離して欲しいにゃ」
抵抗する修司を連れて教室を出て、更にずんずんと歩いて行き、校舎の裏に着くと、ようやく夏美はその歩みを止め、修司の手を離すのだった。
「昼ご飯……。食べるんでしょ?」
ムスッとした言い方だが、聞きようによってはどこか可愛いかもしれない。そんな夏美の左手には、可愛い柄の布製の袋に入ったお弁当が握られている。
「にゃ?」
いったいなにを言われたのか分からない修司。てっきり怒られるものと思っていたようだ。
「食べるんでしょッ!!」
大声で脅す夏美。その迫力に負けて、修司はこくこくとうなずく。その後、夏美はいちいち文句を言いつつも、嬉しそうに怒りながら、修司にご飯を食べさせ
るのだった。まったく素直でない性格だ。
……猫耳少女への集団変身現象が確認された日の、翌日の出来事であった。
おわり
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