病院の帰りに、喫茶店にて『宇宙は何でできているか』を読書。
お堅い内容ではあるが、喩えが分かりやすく、サクサク読める。
ちょっと肩がこってきたので、しおりがわりにシュガースティックを挟んで珈琲を啜りながら、斜め向かいのご婦人二人の賢しい話に聞き耳を立てる。
改まって聞き直すまでもなく、かしましい声は、読書中にも関わらず耳に潜り込んで来ていたので、大体は聞いていた。
最初はご多分に洩れず韓流スターとイケメンの下世話に始まり、海老蔵批判、政治家批判、娘がゴスロリで困るなど、とりとめなかった。
いま改めて聞き耳を立てると、固い漬物は漬かりが悪いと、とうとうと語って、放んなく引き笑いしておられる。
そうなのだ、彼女らにしてみれば、政治も国際情勢も、はては我が娘の躾においても、塩漬けの、黄色い食紅で色付けされた、どの形も同じで、同じ味付けの、ある意味無味無臭な、大量生産された沢庵漬と同じ世界なのだ。
店内はFMラジヲが流れ、ようこそ日本へと、なぜか招かれた大和撫子を讃える唄が流れている。
日本へようこそ、日本の美しい女性よ、と。矛盾だらけだ。
この感情の混乱は、感覚の錯覚は、己が病か元凶かと、鉛のように鈍くなった肩甲骨を寄せながら、落胆に読書中の文庫の背表紙に目を落とすと、『本書の印税はIPMUに寄付され、活動資金にあてられます』との文言が写った。
ああ、この虚しくも落胆した読書の時間も、遠からず宇宙の謎、生命の神秘、はては時空も越えるニュートリノの研究に幾ばくかの足しにはなったのかと、自分への慰めの着地を、無理矢理に胴体着陸させた。
時計に気をやると、入店から三時間もたっていた。
回りくどい文章は書いてて楽しいなぁ。

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