C.S.ルイス「ライオンと魔女」訳:瀬田貞二
さし絵:ポーリン・ベインズ
出版:岩波書店、1966年
原題:C.S.Lewis : The Lion, the Witch and the Wardrobe, 1950
衣裳だんすの向こうには・・・。
ファンタジー児童文学といえば必ず一番に名前のあがる、ナルニア国ものがたりの一巻目です。
ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィの四人きょうだいが、不思議な生き物たちの住む世界、ナルニアで大冒険をくりひろげます。
素直で心正しい末っ子のルーシィと、誘惑に負けてしまうエドマンド。エドマンドと魔女が出会うくだりは、「雪の女王」を思わせます。
エドマンドが誘惑された「ターキシュ・ディライト」(文中ではプリンとなっていましたが)ってどんな美味しいお菓子なんでしょう?
わくわくして調べてみたら。
ゼラチン、砂糖、柑橘系の果汁が主原料のべったべたに甘いゼリー菓子のようです。
・・・子供の頃、飴玉サイズのゼリーの駄菓子を食べたことがあります。グミみたいで、表面にグラニュー糖がまぶしてあって、オブラートに包まれていて、赤とか緑とかの毒々しい色をしたやつ。今もあるんでしょうか。はっきり不味かったです。
なんか、それを思い出しました。
さて、幻想を打ち砕かれたところで。
子供たちの冒険とはいえ、甘っちょろいものではなく、かなりシビアです。
フォーンとお茶を楽しみ、サンタクロースからプレゼントを貰い、言葉を喋るビーバーとお食事会、ライオンの背に乗って駆け回る、・・・その一方で、フォーンは魔女に石にされ、プレゼントは来る戦いのためのもので、お食事会は魔女から逃げる最中のささやかな楽しみ、ライオンはむごたらしく殺され・・・。リアリティがある、と言ってしまっていいんでしょうか?
また、海外の出来のいいファンタジーはたいていそうなのですが、衣裳や風景の描写がとにかく丁寧です。登場人物が見たままの光景がそのまま読者にも伝わり、音や香りまで感じるように思います。それがまた臨場感を上乗せしています。
リーリスって、日本ではあまり馴染のない名前ですが、アダムの前妻です。ユダヤ教には登場しますがキリスト教では削除されているみたい。アダムとともに土から作られたとされています。アダムとの間に悪魔を生んだそうで。アダムって再婚だったんですね。
その他、キリスト教的な思想が物語中にちりばめられています。アスランはその象徴といえます。
人間の国ではないのに王は人間と定められているのが不思議ですが、最後、四人がナルニアに永住しそうな様子には驚きました。あの四人が突然消えてしまったら、そのあとナルニアではさぞ混乱したろうと思うのですが・・・。
訳者は、指輪物語でおなじみの瀬田貞二。巻末の訳者あとがきには、田中明子の名前も出ています。
児童文学は挿絵が多いのがいいところです。表紙にはアスランに乗るスーザンとルーシィ、裏表紙にエドマンド、口絵にはタムナス氏とルーシィ、本文中にもたくさんイラストがちりばめられています。

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