浅田次郎「見知らぬ妻へ」
装画:蓬田やすひろ 装幀:鈴木成一デザイン室
出版:光文社、1998年
踊子 「小説宝石」平成九年六月号
スターダスト・レヴュー 「小説宝石」平成七年十月号
かくれんぼ 「小説宝石」平成八年六月号
うたかた 「小説宝石」平成九年四月号
迷惑な死体 「小説宝石」平成九年四月号
金の鎖 「小説宝石」平成十年一月号
ファイナル・ラック 「小説non」平成八年五月号
見知らぬ妻へ 「小説宝石」平成七年二月号
過去から解き放たれ、未来へ歩き出す話です。
時代の切れ目、と言ってもいいかもしれない。
別に悪い過去ばかりではありません。いい思い出もある。どちらにせよ、ある程度の重みを持っていて、それがために前に進めない、進みたくないということはあります。
その荷物がふっと消えた時、軽くなった足の先には何が待っているのでしょうか。
古い時代の、どこか雑然とした、日本の原風景があります。わたし自身は知らないはずの時代、知らないはずの場所にほのかな郷愁を感じてしまうのは何故でしょう。
表題作の見知らぬ妻とは、不法就労をごまかすための、戸籍上だけの偽装結婚をした相手のことです。確か「鉄道員」の短編集に、同じようなテーマの話があったように思います。会ったことのない妻の死を警察から知らされ、自分にあてられた手紙を読むという。

0