少女は嗤う。
少女は、嗤う事ができた。
朝は普通だった。
いつも通りの時間に起きて、いつも通り朝食を作り食べる。
うん、今日の味噌汁は中々美味しい。
髪をセットし、身支度を終え、学校に向かう準備は出来た。
ふと、行く前に風呂場を覗く。
そこには、昨日の姿のままの父親が倒れていた。
なんだか朝見るのと夜見るのでは、印象が違う。
怖いって言うか怖くないって言うか、気持ち悪いって言うか気分が悪いって言うか。
なんだか複雑だった。
まるで生ゴミを出し忘れた感じだ。
ん?なんか違う?
いつまでも見ているわけにはいかないので、私はさっさと家を出る。
家の鍵を閉めて、歩き出す。
私は学校に徒歩で通っている。
そんなに遠くないというか、健康にいいから歩こうと思っている。
勿論バスも出ててそっちの方が早いけど、遅刻しそうなとき以外は歩いて通う。
まあ学校まで歩いて20分弱。
そんなにかかるわけでもないしね。
朝の涼しい空気を吸いながら、私が学校へ向かっていると、後ろから私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「おーいニーニー!」
私は、確認するまでもなく誰だか解る。
なんだか朝登校するさい、私はこの男とよく出会う。
同じクラスの男子生徒、釘咲深夜。
ちなみにニーニーは私のあだ名です。
由来は解らない。
あだ名なんてそんなもんでしょ。
「おはよう釘咲君」
「ああ、おはようニーニー」
「また今日も、貴方と会えて悲しいわ」
「うん俺も…って悲しいのか!?」
「ええとても。例えるなら朝やってる血液占いで最下位を取った気分になるのよ」
「星座じゃなくて!?それって微妙に悲しみが解らないんですけど!」
「この悲しみが伝わらないだなんて、釘咲君に血液型はないのね」
「いやあるよ!血液型くらいはありますよ!」
「そう、ところで釘咲君。ここらへんで鋸を売ってるお店知らないかしら?」
「鋸?何に使うんだよそんなもん」
「私は釘咲君みたいに鋸で自転車のサドルの位置を調節するわけではないのだけれど…」
「しないしない!俺もしないから!何その俺がしてるみたいな言い方!?」
「とりあえず知らない?ギザギザハートを売ってる店」
「何だかカッコイイ!?そして俺の目の前にいる!そのハートを持った人物は!」
本当に釘咲君は面白い反応をしてくれる。
まあ本人には言えないけど、釘咲君は突っ込み以外に取り得はないしね。
「まあ本人には言えないけど、釘咲君は突っ込み以外に取り得はないしね」
「俺の存在意義は突っ込みだけ!?」
「はっ!釘咲君!私の心を読んだのね!?」
「お前が口にしたんだ!」
「そうやって釘咲君は幾多の女の子をものにしてきたってわけね…次の標的は私かしら?」
「なんだその女の敵みたいな奴は…」
「ごめんなさい。話しかけないでもらえますか?」
「そこで拒絶するの!?安心してくれ!俺は女の子の味方だ!」
「いや、それはそれで…ちょっと…」
「引かれちゃった!?」
そうこうしているうちに、学校が見えてきた。
「あ、それじゃ私二組だから、またね」
「いやいや同じクラスですよ!釘咲君はニーニーとクラスメイトですよ!」
「ちょっと、私と貴方が同じクラスだなんて思われたらどうするの?」
「だからクラスメイトじゃん!?」
「で?鋸は?」
「そこで鋸の話!?どれだけ鋸が欲しいんだよ!まあ駅の近くに新しく出来たホームセンターで売ってるんじゃないのか?ところで何に使うんだ?」
だって鋸がないとバラバラに出来ないじゃない。
勿論釘咲君には言わないけれど。
「鋸の使い道といったら一つじゃない。ぶんぶん横に振って音を楽しむのよ」
「どんな使い方!?確かに一度はやるかもしれないけれど!」
「何?釘咲君は鋸で何かを切るっていうの?危険な香りね」
「本来の鋸の使い方はそうです!てか香り!?匂いなのか!?」
私は教室のドアを開ける。
隣ではまだ釘咲君が騒いでいるが、無視してドアを開けた。
やはりそこは、昨日と変わらぬ光景がある。
変わったのは、私だけなんだろうか…
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