少女は変わらない。
何を見ても、
何を知っても。
少女は変わらず、
嗤うだけ…
学校の帰り道、私は駅の近くに出来たというホームセンターに向かう。
朝、釘咲君の他に何人かに聞いたのだが、やはりそこ以外の店を聞く事はなかった。
あまり名が知れてる店だと、万が一のとき足がつく可能性があるから嫌だったが、しょうがない。
ホームセンターはすぐに見つかった。
「…で、かい」
私の想像をはるかに超えていた。
四階建てで、その四階全部がそうらしい。
こんなに凄いのが出来てたなんて、知らなかった。
入り口から入ると、さらに驚くべき事が待ち受けていた。
「ん、遅かったですね」
「え…なんで燈莉が…って釘咲君もいるんだ」
そこには、クラスメイトの釘咲君と同じくクラスメイトの灯夜逆 燈莉(ひよさか ともり)がいた。
この二人が一緒にいる事に、疑問はない。
何故なら二人は付き合っているからだ。
学校が終って放課後のデートというのは理解できるが、ホームセンタでデートというのはどうだろう?
「なんでこんなとこでデートしてるの?」
「してねぇよ!」
「新鮮さを求めて」
「何を求めるんだよ!」
私と燈莉が揃った時、釘咲君の突っ込みは二倍になる。
忙しく大変そう。
まあやめないけど。
「私達はニーニーの買い物に付き合うためにここにいるのです」
「そうそう、なんか色んな奴に鋸(のこぎり)何処で売ってるか聞いてただろ?だから気になって」
「深夜は好奇心ですが私は心配心で…」
「おい待て、それでは俺がなんか嫌な奴みたいだ。それに心配心ってなんだよ」
「深夜は、「好」きで「奇」妙に「心」が揺らぐですが、私は「心」を「心」に「配」るのです」
「意味は解らないけどカッコイイ!?」
二人とも、私の行動に、心配できたみたいだ。
まあ、二人とは長い付き合いだから、しょうがない。
しがらみというのは、長ければ長いほど、絡みつくのだから。
「そう、でも私はただ鋸を買いに来ただけよ?心配するほどの事じゃないわ」
「まあそうなのですが、ただの暇潰しと思って下さって結構です」
「さっきは心配心って言ってただろうが…本音はそっちか」
私達三人は、二階ある鋸売り場に向かう。
鋸売り場ってなんだって思ったけど、なるほど、納得した。
そこにはおよそ数十、数百の鋸が売られていたのだ。
「すげえ…鋸って、こんなに種類があったんだ…」
釘咲君が感嘆の面持ちで呟く。
確かに、それは凄い眺めだった。
色々な形の鋸が、綺麗に並んでる。
でも、私はただよく切れる鋸が欲しいわけだ。
「人を簡単に切れる鋸って、どれかしら?解る?釘咲君」
「解るわけねぇだろ!てか恐ろしい事言うなよ!」
とりあえず、値段も安価で使い安そうな鋸を買う。
2000円。
この値段が、鋸の価格で安いのかどうかは知らないけど…
これを買ったら、もうここには用はない。
「それじゃあ私、もう帰るね」
「ん?もう帰るのか?」
「二人の工具デートを邪魔できないよ」
「どんなデート!?」
「ニーニー」
燈莉が、一歩私の前に出てきた。
「これから、何をするんですか?」
「…家に帰るだけだよ」
「鋸を持って?」
「…鋸を持って」
燈莉は、そうですか、と言って黙ってしまった。
「つーか鋸なんて何に使…っておい!何処いくんだよ!」
「帰るの。それじゃあね」
私は、私を見る四つの目から逃れるように、足早に去っていく。
ああ…燈莉は本当に、怖い。
ばれちゃったかも。
まあそんな事を気にせずに、さっさと家に帰ろう。
家では、父親が待っている。
バラバラに、なるのを待ちながら…
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