今回はちょっと表題について面白い話題を一つ。
Banach-Tarskiの背理というのは、いろいろな言い方がありますが、「豆粒大の球を
有限個の部分に分割して組み合わせなおすと、あーら不思議!太陽の大きさの球ができる」という定理なのですが、一見、体積を考えるとそんなことはあり得ないように見えることからパラドクス(背理)と呼ばれています。
しかしもちろん、これはパラドクスでも何でもなく、れっきとした定理で、有限個に分割された各パーツはそもそも「体積が定義できない」ので、パラドクスではないのです。
ただし、このBansch-Tarskiの
定理の証明には選択公理が用いられており(証明はたとえば
こちらや
こちらを参照のこと)、しかも非可算無限個の対象に対する選択公理を用いていることから、「選択公理を用いると不自然な定理が証明される」という代表例によく引っ張り出されます。
ところが、最近、Banach-Tarskiにある意味大変“近い”結果が、
選択公理なしに証明できたというのです!
その情報源は
ここです。
それによると、豆粒大の球から有限個の互いに交わらない
開集合 O
1 ,…, O
n で、それらの合併の閉包がもとの球と一致するようなものを取り出して、それを組み替えると、その閉包が太陽と同じ大きさの球になる、という定理が証明されたというのです!
この定理がすごいのは、各パーツは有界な開集合ですから、もちろんルベーグ可測で、体積を持つ、という点です。
そして更にすごいのは、この定理の証明には
選択公理が用いられていない、というのですから2度ビックリです。
この定理の証明は私もフォローしていませんが、この定理がBanach-Tarskiの定理と違うのは、開集合の境界部分だけ球と違いがあることですが(よく「コップにプラスチックでできた梅干をはめ込むパズル」とか売ってますが、それを思い浮かべてしまいました。)、開集合の境界というのは内点を持たず、「ほとんど無視できる集合」として有名で、Baireの「痩せた集合」の一つです。
この「ほとんど無視できる集合」には、痩せた集合のほかに、測度ゼロの集合が有名ですが、いずれも「無視できる集合の可算個の合併は無視できる集合である」という性質を持ちますが、上記の定理は「痩せた集合」という概念が、あまり「無視できる」とは言い難い集合であるということを意味しているのではないか、という評価が書かれています。
まあ、そうは言っても驚くべき結論であることに変わりはなく、いったいどうやってこんな定理を、しかも選択公理無しに証明したのだろう、というのは大いに関心があるところです。どなたか証明の概要を解説してくれる人を歓迎します(←他力本願)。