『偽善エコロジー』(武田邦彦著、幻冬舎新書)
結論について、特に大きく異なることはないし、最後のほうのパトス系の文章も好感が持てる。ただ、こっちも、化学産業のエンジニアだから、論理については「うーん、違うんじゃないの?」というところが何箇所かあった。
まずは、レジ袋。確かに、レジ袋削減運動は、余り意味がないと小生も思う。レジ袋は、大抵色々なところで再利用してから捨てられていると思うからだ。だが、著者の論理はどうも、ねぇ。
著者はp18で
まず単純にレジ袋をやめれば、これまでレジ袋用に作られていた原料がいらなくなるので、それをまた煙突で燃やさなくてはなりません。と言う。これは石油化学産業にいると、誰でもおかしい理屈だと気づくだろう。
レジ袋はポリエチレンで作られている。ポリエチレンはエチレンを多数連結させて作る。エチレンは、日本では、ナフサに水蒸気をブッ込み、500℃以上に昇温して作る。これをクラッキングという。
で、もし、レジ袋が1回こっきりの使用で使い捨てだとすれば、その分のナフサを使う必要がないので、レジ袋削減は環境に優しい行為となる。BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)からエコ袋を作って使うほうが、はるかに良いのだ。
次に、生ゴミ。堆肥の中の不純物・有害物質を問題にされている。しかし、土中の拡散を計算し、データ化するのが筋だろう。そんなに、簡単に蓄積するとも思えない。(岡山大学にこの辺の専門化が知人(ブヨさん)にいるので、聞いてみようかな。)問題は、化学肥料と同様の分析などが義務化されていないことではないかと思う。
海面上昇の話も、かなり疑問。単純に考えて、15℃付近で水温が1℃あがると、体積膨張により60cmくらい上昇する。(全海水は1.4×10^18m3、海の全面積は3.6×10^14m2、15→16℃の体積膨張率は1.56×10^-4。これから単純計算すると。但し、表面だけが暖まり、大循環が2000年だし、水温がそんな簡単に上昇するのか、という問題もあるし、この計算自体実は怪しい仮定の上だが。先生には「温暖化で10センチ上昇」(p78)の根拠を明示して欲しい。)
逆に、全くのその通りだな、と思ったのは、バイオエタノールがただのエゴという説明、ゴミの分別の意味のなさ(大阪市なんて本質的にしていない)、大事に使うほうが大いにエコ、という点。また、エコ利権の話。これは科学じゃなく、政治だけど。
先生にもう少し、人脈があれば、もっといい本が書けると思った。