釣りの楽しみ方は人それぞれ。
その中のひとつに「釣った魚をおいしくいただく」ということがある。
釣ったばかりの魚は当然新鮮であり、また自分で釣ったということからより一層おいしく感じる。
中にはおいしい魚が食べたいから釣りに行くという人もいると思う。
もちろんそれはすばらしい釣りの楽しみ方である。
実際にまわりの釣友にも魚を捌き、料理するのが上手な者が多い。
そのおかげでいつもおいしい魚をたくさんいただいている。
しかし、自分の場合は「魚釣り」は「魚釣り」であり、それ以上でも以下でもない。
「釣りたい」から釣りに出かけるのであって、それ以上の理由はない。
狙い通り魚を手にした時点でほぼ100%満足している。
ただ、釣れた魚がおいしくいただけるものだった場合は食べられる分だけ持って帰ることもある。
そう、食べられる分だけ・・・
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今回、釣ったバラムツははじめから一匹だけキープすることにしていた。
バラムツの脂が人間の体で分解できないものだということはよく知られている事実で、3切れ以上食ったらアウト、いや、5切れまではいけるなどとちょっと調べただけでこの手の話はたくさん出てくる。
中には20切れ以上食っても平気な人がいるだとか、あまりの旨さに油が出てしまうことを覚悟してオムツをはいて食うなどの非常に興味深い話?も多い。
こうなれば自分で試すしかない。
※「油が出てしまう」とは意識するしないに関係なく食後にお尻から分解できなかった油が流出してしまうことである。
どんな人でも我慢したり、意識的に止めたりするのは不可能。
駿河湾のサットウ(アブラソコムツ)釣りをすることで有名なwhiplashのあのお方の言葉を借りて言うならば「失格」である。
今回は汚い話もありますが、みなさんの一番興味のある部分だと思いますゆえお許しを。
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持ち帰り〜解体
1mの大型クーラーになんとか押し込み港を後に。
代々丸さんはいつ来ても持ち帰る魚を丁寧に処理してくださる。
丈夫な袋に一匹ずつ分けていただき氷もたっぷりいただく。
フローリングで解体。
奥に見えるはクロシビカマス。こちらはいくら食べても大丈夫。非常に美味とのことで5匹キープ。
美しく輝く目。
口まわり。意外ともろく、クーラーから出した際にちぎれてしまった。
バラした理由も納得。
腹を開く。
釣った際に船上でコウイカを1匹吐いたのみ。胃内容はなし。
深海魚と聞いてヌルヌルの粘液まみれかと思いきや以外。
体表にヌメリはなく、触り心地は魚というよりはトカゲ。
バラムツという名前だけあって鱗は鋭い。
鱗は先端が2又に分かれている。
船長によると鱗には弱い毒があり鱗で怪我をするとなかなか治らないとか。
触る際はゴム軍手で。
匂いも想像とは異なりまったくの無臭。
一般的な魚臭さもない。不思議である。
頭をおとす。
普通、このサイズの魚になれば中骨はとても硬く、包丁ではおとせないがバラムツは片手の力で簡単におとせてしまう。
見た目のイメージとは異なり骨はかなりもろい。
船上で尻尾を持ち写真撮影した際に大暴れし、そのときに中骨の砕ける音がしたのでアレ?!と思ったがやはり。
三枚に。
カッコイイ!
大きな目。カメラのフラッシュでオレンジ色に輝く。
こうして意外とすんなり解体が終了。
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料理
そしてまずは刺身にしてみる。
バラムツの刺身となめろう。
身の色はとても美しい。左端に映るカンパチの身と比較すると色の違いがよくわかる。
バラムツのベイト、クロシビカマスも刺身に。
脂がのっている。
クロシビカマスは和歌山県の南部ではスーパーでも売られており、非常に美味。
煮付けは「美味しんぼ」にも登場する。
クロシビカマスとカンパチの煮付け。
骨がかなり鋭く、入り方が他の魚と少し違い複雑なので食べる際に注意。
ここまでは普通の部位。
そして今回、捌いている最中にもう一か所、食べられそうなところを発見。
「バラムツの肝」である。
写真を撮り忘れたのだが、見た目はアン肝にそっくり。
大きさも十分ありおいしそう。
ネットで色々調べ、とりあえず毒はなさそうなので食べてみることに 笑
つくったのはこちらの料理
バラムツ丼
熱々のごはんの上に刺身、湯通しした身、中央が肝。
わさびはいくらつけても脂で全くきかないため七味トウガラシを少々。
ネギをのせ、ポン酢でいただくことに。
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実食
料理はすべて出来上がった。
あとはどれくらいの量食べるかである。
みなで食べる量を変えて実験。
食べた量が多い順に・・・
・友人T・・・30切れ近く
・釣友S・・・18切れ
・自分・・・18切れ
この2人は解体中に我慢できず既に3切れほど食っています。
・釣友T・・・15切れ
・釣友H・・・8切れ
・釣友K・・・3切れ
刺身はさきほどの写真の大きさを1切れとカウント。
湯通しはかなり脂が抜けたがそれでも食べると脂がのっているので0.5切れにカウント。
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味
とにかくめちゃくちゃに旨い!!の一言。
自分は好き嫌いがなく、あまり他人が好まない食べ物でもおいしいと感じることがあるのだが、今回は全員が旨い!とのこと。
・刺身
マグロの大トロにさらに脂がのった感じ。
食べる前は気持ちの悪い食感をイメージしていたが、身はそれなりに歯ごたえがあり言われなければバラムツとはわからない。
脂が口の中でべたつくのかと思いきや後味もさっぱり。
正直、いくらでもいける。
オムツをしてまで食べる理由も納得。
完全にはまってしまった・・・。
ただ、5切れを超えたあたりから胃の内側に膜が張ったような満腹感?に。
やはり相当脂がきついのであろう。
・湯通し
熱湯に通すことで良い具合に脂が抜け、より一層おいしくなる。
完全に芯まで火を通してもなお、食べると脂がのっている。
ネギとポン酢で食べると最高!
・焼き物系
火にあぶると焦げ目は全くつかず、溶けてなくなってしまうため無理。
・肝
どこにも記載がないのでかなり心配だったがこれがかなり美味。
アン肝よりもあっさりしていてまろやか。
一匹からかなりの量とれる。
誰も死んでいないので毒はないと思われる 爆
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食後
お楽しみはここから。
当初、一番多い人で10切れ程度にしようと考えていた。
しかし、あまりの旨さに箸がすすみ、ほぼ全員が一般的に限界と言われている5切れを軽くオーバー。
食後、しだいにみな不安になってくる 笑
その夜は全員がおしりの下にバスタオルをひいて寝たのは言うまでもない。
しかし、その日のうちに失格になったものが約1名。
30切れ近く食った(食わされた)友人T。
彼はもとから腹が弱いとのこと。ダメじゃん・・・笑
それはもう水鉄砲のように勢いよく出たとか。
翌日も彼は5回以上失格。
かなり精神的にやられた様子 笑
そして残りの5人はなんと一度も失格になることなく無事。
こんなことならもっと食えばよかった・・・
あえて言うならば、翌日トイレに行った際に便器にオレンジ色の油が浮いた程度。
しかしこの油、匂いがきつく、それはまるで機械油のような強烈な匂い。
食べ物から出た油とは思えない。
こりゃ人間は分解できんわな・・・。
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今回の件から5切れ程度ではほとんどの人が大丈夫だと思われる。
ただ、体質によっては2切れ程度でダメな人もいると思うので流通禁止になっているのはもっともである。
そしていつものことながら自分の体の異常な丈夫さに感謝。
そういえば小さい頃からほとんど腹を壊したことがないなぁ。
こうして約1名を除き、無事に試食会は終了。
あまりの旨さに何人かは身を持ち帰り、自分もその後数日バラムツを食い続けてしまった。
おいしく食べられる分だけ・・・
捨てることなく完食です。
しかし、これだけでは終わらなかった。
もう一人、身をおすそ分けした釣友が見事失格に。
刺身を10切れ、湯通しを6切れ食べたそうな。
本人の名誉のため名前は伏せておくが、何事にも注意が必要だ!ということなのであろう。

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