当初の予報では土曜日の朝からずっと雨。
最悪の場合を考えると、2日間、ずっと雨の中釣りをすることになる。
実は前日に天気を見たとき、やめようかとも思った。
しかし今を、このタイミンングを逃したら次はいつ行けるかわからない。
多くの魚の場合、気圧の変化は何かしらの影響を与える。
アカメも例外ではないはず。
良い方向に傾くことを願って。
しかし、予報は大きく外れ、瀬戸大橋を渡る頃には青空が広がっていた。
高知までは全区間高速道路で行くことができる。
出発前日に釣りをしない友人に明日から高知に釣りをしに行くというと目が点になっていた。
確かに普通の人からみれば土日の休みのみで四国に、しかも魚釣りのためだけに行くというのだから異常だろう。
しかし、これまで高知で出会った遠征者は全都道府県にわたっている。
「アカメ」という魚はそれほどまでに魅力がある。
自分はまだ「近いほう」なのだ。
「たった3時間半やで!」冗談半分でそう返したが、これまであじわってきたボウズでの帰り道の長かったこと長かったこと。
今度は、今度こそは心地よい疲れに包まれて帰路につきたい。
ボウズでの帰宅はもう十分だ。
見慣れた、だが懐かしい景色。
330キロの道のりはあっという間だった。
日が昇り、8時を少し回ったころ、高知のインターを降りた。
無事に到着したことを友人に告げ、釣り場へとハンドルを切った。
〜アカメという魚〜
この3年間、自分にアカメが釣れなかった理由が今ではよくわかっている。
それはアカメの生態を知らなかったからだ。
アカメは決して数が少ないから釣れないというわけではない。
もちろんどこにでもいる魚ではないので大切にするべき存在だが、なにも知らず安易に「幻」と決めつけていた自分が恥ずかしい。
まぁ、あまりにも強い憧れがあったのだから仕方がないか。
そこに居るけど口を使わせるのが難しい、そうとでも言えばいいだろうか。
見えている魚・スレた魚を釣るのが苦手な自分にはハードルが高い。
もちろんいわゆる「タダ巻き」でも釣れることはある。しかし、何かもうひと工夫、喰わせのアクションを入れたほうが良い。
これは自分の経験から得たことだ。
自分ではあまり多くの釣り方でアタリをとったことはないので偉そうには言えないが、ジャーク・フォール・ストップ・デッドスローリトリーブ・・・・
さらに聞いた話によると、底に置いておいたルアーに喰った、ロッドからぶら下がっていたルアーにヒットした、ルアーが着底し倒れ込んだ瞬間に喰った・・・など聞いた時は疑うようなことも多かった。
しかし、後から考えると水族館でガラス越しに指を動かしたときの反応を思い出せば、どれも十分にあり得ることである。
(アカメのDVDでも同じことしてましたね)
〜実釣開始〜
釣り場について車を止める。
大きく息を吸い込み背伸び。
ここは故郷でもなんでもないが、何だかとても落ち着く。
釣りの前日に寝れないのは今に始まったことではないが、運転の疲れは全くと言って良いほど感じられず、清々しい気分だ。
ここですぐにロッドを振る自分がいるかと思いきや、この時は何故かとても心に余裕があった。
水辺を見渡せる高い場所に登り、水面を観察する。
ちょうど満潮からの下げ潮が効き始め、魚の気配が濃厚だ。
大きなボラの群れが横切り、その後ろには鱸だろうか。
その隣に鯉がいるのもなんとも不思議な光景だ。
岸辺には無数のハゼ類とカニ。
この豊かな環境がたくさんのアカメを育てているのだろう。
しだいに潮の速度が速くなる。
一度目のチャンスは今だ。
タックルをセットし、釣り場に降りた。
〜嬉しい外道〜
いつものように、そしていつも以上に入念にノットをチェックする。
道具の不備で魚を逃がすようなことは自分の中ではあってはならない。
流れの速さ、ストラクチャーの位置、ルアーの沈下速度・・・
全てを考慮し、ここぞと思われるピンポイントを撃っていく。
ひときわ大きく張り出したテトラの脇で着底後のジャーク一発。
その瞬間、硬質なアタリが手元に伝わる。
キュンキュンと良く引くが水面に浮いてきた姿はアカメとは少し違った。
なんや、キビレか・・・。
しかも50越えてるし〜
いや、嬉しい、嬉しいんだが今は違う。
オオナマズ釣りの最中に60弱のバスが釣れるときも同じ気分やな〜(贅沢?!)
するとどこから見ていたのか、ビニール袋を持ったおばちゃんが近づいてくる。
「にいちゃん、それもらうわ!!」
どうやら今夜の夕食になるようだ。
「どうぞ、どうぞ」
考え方はいろいろあると思うが、ルアー釣りだからといって何でもかんでもリリースする必要はなし。
きちんと食べていただけるならそれもおおいにあり。
急いで袋に入れようとするおばちゃん。
しかし、そんなに焦らんでも・・・
まだルアーはずしてないし〜 笑
到着早々の釣果に満足し、さらに集中力が高まる。
水中でのルアーの動きが手にとるように伝わる。
さあ、ここからだ。

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