今日8月21日は、私の人生において、最も意義が深い日なんです。
その意義も踏まえ、どうしたら強くなれるのか、そして強さとは何なのかを、いつも考えて生活しています。
それは格闘技だけにとらわれるだけではなく、全ての人生においてです。
ここ最近も二日に一度しか睡眠をとることできないほど、激務なんですけどね。
ですが自分だけしんどい訳ではありませんから頑張れます。
そして、今の職場の環境には物凄く感謝をしています。
昔は良く自分の環境と他の選手の環境や境遇等の違いに、正直戸惑ったり、羨ましく思って卑屈になっている自分がいました!
会社では利害があるので、自身に色々な葛藤や悩みが存在するのは当たり前だと思いますが、十年前の当時、環境に負けている自分がいました。
ですがそんな当時の私に親身になって、いつも応援してくれた同僚の先輩が一人いました!
今日は少し長くなりますが、その先輩について書きます。
当時、普段から私の愚痴や悩みを聞いてくれたり公私共に仲良くさせて頂いて実の兄貴以上の存在でした。
その先輩の応援や支えで仕事も柔道も頑張れる事ができていました。
そして、九年前の8月の後半に全日本実業団の個人戦の試合が、兵庫の尼崎で控えていたんですが、その前に二人で気晴らしに海水浴でも行こうか!と、どちらが誘うのでもなく、二人で意気投合して 日にち等を決めて行く事になりました。
そして8月21日。
前々日の台風とはうって変わって、雲一つない晴天。
待ち合わせ場所へ先輩を迎えにいき、車の中で海水浴後の食事や最近の状況等を楽しく話しあっていました。
海に到着して、お互い冷やかし笑いながら楽しく着替え海に入りました。
そして少し風があり、海水も濁っていたので、早めに切り上げて上がりましょうね!と話し合っていました。
どん位だろう…。
私が先に海に入り、岸から大体20メートル位泳いだあたりで視界が悪かったので、陸にあがろうと後ろを振り返ると誰もいません…
あれ?入らなかったんかなぁ…先に上がったのかな?……
と思い、私も陸に上がりました。
そしてどこで待っているんだろうかと、陸や砂浜や駐車場など色々探してみたりしましたが、何分たっても何時間たっても先輩を見つける事はできませんでした……
段々と不安と焦りが募り、ライフセーバーと警察に報告。
直ぐさま警察と海上保安庁で空と船からの捜索が開始されました。
ですが、調度その時期に、丹沢の川の中洲に取り残され、濁流に流されてしまった人達の捜索と重なり、日本中のダイバーが丹沢に召集されて現場にはダイバーが一人もいない。
結局その日は海中での捜索をする事ができず、先輩は行方不明になってしまいました…………
そして行方不明から三日後の満潮。
……
先輩は遺体となって発見されてしまいました…
現実をどう受け止めて良いかもわからず、ただただ収容先の警察署の霊安室に足を運び、遺体の身元の確認を致しました。
…そこには変わり果てた姿の先輩が寝ていました…。
訳が解らなくなり、気が狂ってしまった私は、警察官の制止も振り切って 先輩の上に乗っかり、心臓マッサージを行っていました……。
何名かの警察官に取り抑えられて、そのまま私は床に泣き崩れてしまいました
数日後、先輩のお葬式も終わり、廃人同然の私のもとに、先輩のお父さんから電話があり、
『息子の事故当日の遺品の中から、『激励』と直筆で書かれた封筒の中に、手紙と現金が出てきました。
千葉君の結婚のお祝いと、オリンピックの選考の試合にたいするものだと思います。
千葉君の試合の事を息子は我が事のように喜んでいて、いつも楽しそうに話していました。
内気で目立つ事のない性格の息子は、あなたと出会ってから、人生観がかわり、毎日が活き活きとして、私達、親から見ていてもとても楽しく、我が家は明るくなりました。
本当にあなたには感謝している!
ありがとう!
しかし息子はもういない!
今は千葉君が心配だ。
息子の想いを抱いて試合に出場して欲しい!
そしてこの先、息子の分まで幸せに生きて欲しい』と。
…数日考えましたが、先輩が亡くなってから初七日の日。
私は震える思いで尼崎へ向かい試合に出場しました。
結果は準々決勝で敗退してしまいましたが、精一杯戦い切る事ができました!
それから今日まで九年の月日が経ちました。
その九年間の中で、様々な困難に遭遇致しました。
私がどんなに辛い時でも笑顔を絶やす事なく、歯を食いしばって守ってくれた妻。
そして応援して頂いた全ての方の支えで、その困難に負けずに何とかここまでくる事ができました!
先輩っ!!
今の自分の姿を見ていてくれていますか?
私達家族は、どんなに辛い事があっても負けないで乗り越えてきましたよ!
そして今では職場の皆全員が私の事を応援してくれてます!
先輩言ってくれてましたよね。
『いつか必ず、お前が日本一になる試合の応援に行きたい!』って!……
試合を見ていただくその夢は実現できなかったけど、あの時あなたと約束した、日本一になる事ができましたよッ!
だけど…だから…
ただ…ただ、もう一度だけあなたに会いたくて仕方ありません!
『ありがとうございました!』
と直接伝えたいです!……。
あの時あなたから頂いた、たくさんの笑顔や優しさや言葉を胸に抱き、これからの人生も大切に強く生きて行きます。
そして九年前のあの時の試合で戦った想いと同じ以上に、11月に行われる世界選手権に出場いたします!
今度は、私が世界一になる姿を天国で応援していて下さい!
今、私にはあなたの笑顔がはっきりと見えます!
私はあなたに出会えて本当に幸せです!
本当にありがとうございました!!
平成20年8月21日
先輩に感謝を込めて
千葉記位

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