工藤純子・作 酒井 以・画 くもん出版
本の「案内」に「今だから考えたい 平和のこと」とあった。
思えばJアラート騒ぎで、多くの人々が、国の武力化を肯定する考えを持ち始めた。それは総理の改憲の思惑に沿ったものになっていく。しかし、70年以上、戦死者を出さない国を支えたのは軍備を持たないとする「憲法9条」があったからという考えは、今も平和を願う人々の信念となっている。
ある夜、町工場「佐々川精密工業」の中二の娘琴葉は火球を見て、ミサイル騒ぎに惑わされた恐怖を思い出して目を覚まされてしまう。家族は誰も知らなかったが、短い「火球」のニュースは流れた。
そのころの佐々川精密工業は危機にさらされていた。社長である父親と母親の諍いもあった。問題は、受注すべき仕事を断ったことにある。長年工場を支えてきた社員が、会社のために工場を去った。
いろいろ理解できないことが続く中、社員で居候の天馬の秘密も明かされていく。中国人だった母親は祖母からひどい仕打ちを受けて、国に帰っていること。その根源に「戦争」があったことまでを、琴葉は知っていく。そんな中、美術部で描きだしたのは天馬の絵だった。天馬への思いは、嫌いだった工場や機械、機械油への気持ちまで変わった。
そして、圧巻だったのは美術部で行った無言館での衝撃とノートの言葉だった。町の行事で、天馬と美術部との交流ができ、天馬も一緒だった。
天馬の父親が話に来たけれど、その場に出ていかない天馬だったが、「世界から憎しみを消したい、オレ自身からも」という決意で、父親の元に帰り、嫌っていた祖母に会い、中国の母親にも会いに行く。
いろんなことが気になって、最後まで一気に読まされた。戦時中、佐々川精密工業は日用品を作っていた。その技術を武器製造に向けさせられた。だから、父親はミサイルの部品を作ることを断ったのだ。社運をかけての決断だった。「ロケットは作るけどミサイルは作らない」。そこから平和への道筋が見えてくるのではと思った。
無言館は永六輔さんに教わって、そこがコースに入っていたツアーに参加した。確かに、入館者が無言になってしまう無言館だった。館の外の喫茶店で飲んだコーヒーの味が忘れられない。同じように、この本も忘れないだろう。
木枯しモンジャロウさま
トンネルばかりではありませんよ。私たちは命のがけっぷちにいるのかもしれませんからねえ。今月は記録ができました。ボツ、4作。首の皮一枚でつながっているのが1作。ハハハ、笑うしかありません。
創作日誌
部屋が片付いていないと、余計な仕事までしなければならなくなる。昨日の同人誌評の2冊みたいに。で、録画したテレビ番組が減らないのだ。今日もそうだ。選考のために読まなければならない原稿がレターパックの限度ギリギリの厚さで来ていた。大変だから、全部掲載する手はないのかなあ。落とされた人の気持ちばかり分かる今日この頃だ。
読み物が多いから、今日は眼科に行く。眼科の美しいお姉さん方、ああ、マスクでわからないのだ。

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