村上しいこ 小学館
私のために書いてくれた本かと思うほどだった。で、帯を読んだら「あなたの背中を――」と書いてあった。「あなた」が私で、本の中ではパパだ。納得することが多くて、反省しきりだった。うれしくもあり、うれしくもありという本だ。
作品は社会問題を丁寧に具体的に扱ってくれているので、重いといえば重い。そして、身近な世界として書いてくれているから、辛すぎたり、悲しすぎたりする。でも、重い話を最後まで読ませる「力」になったのは、大好きなサスペンス仕立て効果もあるのではないだろうか。いきなりの第1章「空き巣泥棒の背中」、最後まで読まないと犯人にたどり着かない。
離婚家庭なんて、もう書かれすぎと思うなかれ、中一の美桜里はママと「DVでおいだされちゃった」パパの子なのだ。パパとは契約を守れば会えるし、プレゼントももらうこともできる。そのパパの家庭内での事件が、ほとんど他人事とは思えないことなのだ。それはママにもあることで、美桜里が自覚することで、読者も納得させてもらった。
古いタイプに目新しさを注入したようなおばあちゃんも出てくる。おばあちゃんによって、キッチンカーの「夢に登る」書いて登夢、トムや57歳のおじさんの貴夫ちゃんと出会う。その日、焼肉屋さんで美桜里の不登校に関係している風花とも会ってしまった。ケンカになりそうなところをさりげなくトムに止められた。
スクールカウンセラーのママの生き方も随所に出てくる。女性を差別から守ろうという運動がライフワークだ。その生き方は美桜里やパパとの問題に関わってくる。ラストのほうで、わだかまりが解けそうになって、話せるようになったときに問い詰める。ママも分かっていたのだ。そこで、関係性の話になっていく。関係性はより広い人との問題でもあるのだ。すべての物事をからめとった物語はまだまだ終わらない。
ママたちの集会で、パパが発言し、親子三人でしか分からないことで回答するママはうれしかった。あ、そうそう、最高に泣けたのは「世界一かわいい人」の章の、そのセリフを美桜里が聞く瞬間だ。真剣でもない。恋愛感情など関係のないその場の雰囲気の中での言葉が、その場のみんなの心にどれほど残ったかがうれしかったのだ。帯の「あなたの背中をちょっとだけおしてくれる物語」の一端をになっているように思えた。
「イーブン」こそが深い言葉だった。私たち読者はそれを考え続けなければいけないのだと考えた。
しいこさま
公共施設の慎重さがすごいです。150人くらい、いやもっと入れるところで20人ていってきました。我が会には悪者が何人かいます。でも、開催できれば「よし」ということですね。
うるうるさま
現在の計算だと「2メートル以上」ですね。作新は大丈夫だと思いますよ。もう1か月くらい感染者のいない栃木県、鎖国状態の宇都宮にウイルスは来ないでしょう。いろいろ考えれば大丈夫だとおもいます。
創作日誌
昨日は釣りに行きたかったが雨模様。散歩だけ行って、朴の木の葉を食べつくしたイモムシの写真を撮ってきた。太い木が1本、多分枯れてしまうだろう。すごい食欲だ。
今日は久しぶりの読み語り。2階だから楽勝というか、動いていないと痛みが出る。イヤな関節痛。
昨日、打ち込みを終えた原稿を打ち出す。そして、削除優先の読み直し。7月1日締め切りの合評会。
ブログ用の本はあと4冊ある。読書こそ、書き手の勉強でしょう。

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