いやあ、面白かった! 前作同様、間違いなく今年の日本映画のベスト1作品。もっとも、前作と合わせて1本と見るか、各々で2作品として勘定するかは難しい所ですが。いずれにせよ、面白かった事には間違いないですな。
どちらが善でどちらが悪か判らない微妙な立場の両者の対決がスリリングに描かれて、まるで『ジャッカルの日』や『サブウェイ・パニック』のような頭脳戦というか、緻密な戦いぶりが見事で、クライム・サスペンス映画として最高級の仕上がり。原作とはラストが若干違うようですが、複雑なプロットを上手くまとめた金子監督の手腕も大したもの。ホント「全てが丸く収まるようにまとめちゃったなぁ〜」って感じのエンディングで凄くスッキリしましたね。
なので、文句の付け所は無い訳ですが、それでも観終わった後暫く経つと、あれやこれやと、色々疑問が湧いてくるのはしょうがないですな。で、傑作なのは認めるとして、ちょっと気になった事をいくつか。
(なので、以下はネタバレになります)
最後のLの一世一代のトリックは見事でしたが、あの“有効期限”をどうして知り得たのか、それが疑問でした。期限を越え過ぎるとトリックが効かない訳だし、あれはどうやって算出したんでしょうか…? もう一度観れば判るんですかねぇ…。見逃したのかなぁ…。
あと、キラは慌て過ぎ。いくら痛い所を突かれたからって、期限にウソがあった事がバレるまで、実質13日間はある訳だから、その間にジックリ計画を立て直しすればよかったのに。それまで、相手の出方を予測して、常に先の先を見据える計画を実行していただけに、窮地に慌ててしまったのが致命的でしたね。まぁ、これはストーリー上そうなっているんだから、ワタシが文句つけてもしょうがないんですが…。
それと、これはワタシの希望というか予想でしたが、ラストの決着は、父親につけて欲しかったような気がします。なんせ、父親まで殺そうと企んでいた訳だし、それに引導を渡すのは父親自身であった方が切実で良かった(悲し過ぎますが…)ように思いました。実は前日に父親が、戸籍をいじって名前を変更したので、ノートに名前を書かれても効かなかった…ナンていうオチかなぁ〜と考えたりしていたんですが…(笑)。そんなベタなシナリオは書きませんな、プロは。
そうそう、それでもう一つ疑問。これは、原作の根幹に関わる事なので、“何を今更”って感じでバカと思われそうですが、敢えて訊きたいんですが、どうして“本名”でなければならないのかという事。人の名前なんて、所詮それぞれの背番号みたいなもんだから、本名であろうが偽名であろうが、あまり重要性は無いと思うんですね。例えば、ペンネームとか芸名、或いは夫婦別姓なんかで生活している人もいる訳で、そういう人たちにとっては、本名も芸名も同じようなもんだと思うんですね。じゃあ、本名って一体何なのか。戸籍謄本に書かれてある氏名が本名って事になるのだとしたら、上記に述べたように、事前に戸籍をいじって名前を変えれば、デスノートの効き目は無いって事なんですかね。単なる名前に、それ程意味や重要性があるとは思えないんですが…。本人である事の存在証明としての“名前=本名”であるとしたなら、顔が一致している以外にも、住所(本籍地も)や電話番号や生年月日なんかも必要になってくるんじゃないかと思ったりする訳でして、観終わった後ふと、名前に拘る理由について考えてみたりしてしまいました。
でもまぁ、映画自体は傑作には違いなく、これはエンターテインメント作品としては、ハリウッド・レベルに近づいたなぁと思える大傑作でありました。リメイクに明け暮れているアメリカ映画(まぁ日本映画も、ですが…)を超えるには、この手の映画を連発していれば、十分チャンスがあるという事を認識させられる、世界に羽ばたく日本映画として、誇りが持てる作品でありましたね。 (★★★★★)
カラー/1.85/ドルビー/136'38"
●梅田ピカデリー1/タダ券/ほぼ満席(7:00からの最終回)

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