最近、70年代や80年代のホラー映画のリメイクが流行っていますが、これもその1本ですな。前作というか、元ネタである『夕暮れにベルが鳴る』を最初に知ったのは、LDで観た『ザッツ・ショック』というホラー映画のアンソロジーもの。『サイコ』や『ジョーズ』『ハロウィン』といった、60年代〜80年代初頭の古今のホラー映画の名場面ばかりを集めたホラー版“ザッツ・エンターテインメント”といった趣の作品で、その中に、『夕暮れにベルが鳴る』のハイライト・シーンがほとんど全編収録されていて、思わず見入ったものでした。「ヘぇ〜、こんな映画があったんだ」とその時初めて知ったもので、そのアイディアと展開に感心したものでしたっけ。
それから数年後、それがビデオでリリースされた際、早速レンタルして観たんですが、期待したよりつまらなくてガッカリした覚えがありますね。というのも、面白いのは前半の20分ぐらいだけで、つまり、『ザッツ・ショック』に収録されていたシーンだけが面白いシーンで、それ以後のシーンは、大して面白くなかったんですな。いわゆる都市伝説と云われている“電話に怯えるベビーシッター、その電話の主は…”という映画のキモは、前半だけで終了してしまってて、その後に展開される数年後のストーリーは、普通の殺人鬼ホラー映画になってしまっていて、全然面白くないという顛末で、前半のテンションがあまりに高かっただけに、後半の失速具合は目も当てられない状況なのでありました。
さてさて、あれから20年以上経ち、遂にそのリメイク版がやって来たんですな。どうしようか迷いましたが、やっぱり観ましたよ。気になって仕方がないから。で、結論から言いますと、オリジナル版より遥かに面白く仕上がっていました。勿論、アイディアの斬新さが皆無なのはしょうがないですな。なにせ前作がオリジナルなんだから。でも、今回は今回で、設定に色々上手く工夫されていたのには感心致しました。
携帯電話が普及してからこっち、電話を使ったサスペンスものが難しくなったと聞きますが、確かにそうですな。登場人物一人一人が電話を持った状態では、電話を使ってサスペンスを作り上げるのは難しいですが、それをこの映画は、どう回避しているのかというと、これが上手いんですな。主人公の女の子は、彼氏への電話の掛け過ぎで、父親から携帯の使用を禁止されているという設定なんですな。それを律儀に守っている辺りの主人公の健気さもさる事ながら、この話を携帯でどういう風に展開するのかというコチラの疑問を一気に解消した脚本には恐れ入りましたデス。なので、この映画のポスターやパンフに携帯電話がコラージュされているのは、実はフェイクなので、お間違えの無いように。
そんな訳で、携帯が一切使えなくなった主人公に、前作同様、魔の手が忍び寄る訳ですが、もう一つ気に入った点は、前作の前半部分、即ち、例の都市伝説部分だけで全編押し切った所。これにも好感が持てました。前作のつまらない後半部分をブッた切って、面白い部分だけに終始させたのは良いアイディアで、その潔さにも感心しましたね。
という事で、ハラハラドキドキの90分、貴方の目は貴方の身体を離れて、最後どうなるか分かっていても、それでも手に汗握ってしまうこの映画を楽しむ為に、不思議な時間の世界へ入って行く事でしょう。 (★★★1/2)
When A Stranger Calls
デラックス・カラー/2.35(パナヴィジョン=カメラ&レンズ)/ドルビー/dts/SDDS/86'33"
●ユウラク座/金券屋券(¥600)/約20人(11:00からの1回目)

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