ロドリゲス監督の新作。2本立ての『グラインドハウス』としては、1本目に上映される作品だとか。そうですか。ロドリゲスは以前にも『フロム・ダスク・ティル・ドーン』でゾンビ映画(+アクション映画)を撮っているので、この手の映画はお手の物ですな。正確には、この映画に登場するのは、“生ける屍”ではないんですが、設定といいストーリー展開といい、完全なるゾンビ映画のノリとテイストが満載なので、これもゾンビ映画の1本に数えてもイイような感じですね。
正直、80年代のゾンビ映画を見まくった世代からすると、凄くフィットするように出来ていて、最近のゾンビ映画の中でも出色の出来栄えですな。「あ〜、こういう感じ」「そうそう、こういう展開だよね」とか、観ていて思わず頷いてしまうシーンが続出して、懐かしく思える映画でもありました。
例えば片足マシンガンとか、武器の使い手とか、トンでもな登場人物も色々出てきて、オモシロ・オカシクやろうとさせるテイストも面白い部分ではあるんですが、でも、そういうのが無くても、普通のゾンビ風映画として、結構まともに作ってあるのが好感が持て、むしろ、もっとストレートに楽しませてくれても良かったのに…と思ったりもしましたね。
それと、これは最近のゾンビ映画全般に云える事だけど、最近のは全体的に特殊メイクの出来も素晴らしく、CGを駆使してよりリアルなメイクになっているんですが、もう少しジックリ見せて欲しいんですよね。『新ドーン〜』を始めとする動きの早いゾンビ映画は、タダでさえ動きが早くて、潰れたり破壊されたり血が出たりというシーンも、一瞬で画面が切り替わってしまうのが残念で、他の作品も、どれもみな似たような感じのパターンが多いんですな。それに比べて80年代の、例えばルチオ・フルチの映画なんて、画面にどアップでゾンビの気色悪い顔が大きく映されたり、血のりが弾けるシーンも、ジックリちゃんと見せたりしてくれて、それがこの手の映画を観る楽しみのひとつでもあったのに、最近のはこの映画も含めて、どうも誤魔化されているように思うんですな。この映画の元ネタになっている『ナイトメア・シティ』(別名:吸血魔の街)なんて、人間に殴られる度にゾンビがカメラ側に醜い顔を見せるというシーンの連続で、とにかくサービス満点だった事を思うと、最近はそういうサービスが無くなってしまったようで、寂しいですなぁ。
これ、別にグラインドハウスものの2本立ての添え物として作らなくても、1本のゾンビ映画としてちゃんと作った方がもっと良かったんではないですかねぇ。ロドリゲスはタランティーノ程、グラインドハウスに愛着があるように見えないし、そういう制約が無い方がもっとハジケた映画になったように思うのですが…。
という訳で、くだらないグラインドハウス映画としては、タランティーノ版に軍配が上がりますが、普通の映画として見た場合、こっちのロドリゲス版の方が遥かに面白いですな。つまりは、ネジレ国会ならぬ、ネジレ映画って事になりますな。 (BOMB!)
Planet Terror
カラー/1.85/ドルビー/DTS/104'33"
●ナビオTOHOプレックス・シアター6/先売券(¥1200)/約半分(20:50からのレイトショー1回目)

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