『シックス・センス』で話題を放って以降、公開される度にブーイングの割合が多くなってきたM・ナイト・シャマランの映画ですが、ダメだと思いつつもずっと付き合って観続けているのは、やはり、何かを期待してしまっているからなんでしょうね。前作の『レディ・イン・ザ・ウォーター』で、「もうこれで観るか」と見切りをつけた筈なのに、新作が出来ると、こうして前夜祭から駆け付けてしまっている次第とは、ナンとも情けないですな。
今回もダメだろう…と思いながら観ていたら、これがナンともなかなかイケました。今回は純粋にホラーとして撮っており、誤魔化しやトリックも一切無しの直球勝負。あまりに直球過ぎて、オチを期待した観客にもソッポを向いて置き去りにする辺りのストレートぶりも大いに気に入りました。
今回は、最近トレンドになっている“得体の知れないモノ”に対する恐怖を描いている訳ですが、これは最近ではスピルバーグの『宇宙戦争』辺りが発端でしょうかね。今年になっても『クローバーフィールド』『ミスト』と、同系統の映画が公開されましたが、どれも水準以上の出来栄えになっているのが共通項で、今回のシャマラン作品も、同じく面白く仕上がってますな。アメリカ映画って、こういうタイプの映画は上手いですな。ヘンに結論付けるより、こうしてボカした方が恐怖感が増すからなんでしょうか。
しかし、他の“得体の知れないモノ”に対する恐怖を描いた作品が、最終的には、宇宙人であるとか、怪物であるとかの、物理的な要因を結論に持ってきていたのに対して、この映画は、物理的な要因や物体に対する恐怖ではなく、何が原因なのかハッキリ分からないように描いているのが恐い(この辺りは『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』や『ゾンビ』のロメロ作品のテイストが感じられますな)のと、あと、人間が何かに殺されるのではなく、自ら命を落としてしまうという辺りが、ゾッとさせる要因にもなっていて、恐さから言えば最高のものを感じさせますな。これはアイデアの勝利というか、面白いアイデアだと思い感心してしましました。特に高い木の枝で、何人もの人が首を吊って死んでいるショットには、思わず「ギャッ!」と叫んでしまいました。これぞリアル・ホラーの醍醐味ですな。
オチが無いと言われておりますが、だからこそ恐いのであって、未来に向けての恐怖がちゃんと描けてあるのは大したもの。最近のホラー映画で、これを描けているのが極端に少なくなっているだけに、ストレートな恐怖に徹したこの映画は、傑作ホラーの仲間入りを果たしたと思われますな。 (★★★★)
The Happening
テクニカラー/デラックス・プリント/1.85=パナヴィション(カメラ&レンズ)/ドルビー・デジタル/DTS/SDDS/91'10"
●なんばパークスシネマ・シアター8/ネット先売り券(¥1200)/約4分の1(20:55からのレイトショー)

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