切ない映画ですな。歳をとる度に段々と若くなっていくというのは、一見嬉しいように思えるんですが、よくよく考えてみると、予め死期が決まっているようで、やっぱり辛いですな。普通だと、歳をとって老人になっても、それから以後、どれだけ生きるかが、人によって違うし、そこがまた人生の面白いところではあると思うのですが、この映画の主人公のように、1年毎に確実に0歳に近づいていくという場合は、死ぬまでに逆算出来てしまうのがナンかイヤですな。ある年齢にまで達したら、永遠に歳をとらないというのとは、また違う訳ですからな。
これが『華麗なるギャツビー』の原作者の小説を元にしているのは、観終わったあと知りましたが、こんな興味深い小説があったなんて、初めて知りました。なのに、今まであまり話題にならなかったのは不思議ですな。映画化には格好の素材のように思いましたが、それでもなかなか映画化されなかったのは、やはり技術的に難しかったからでしょうかね。それが今、CGIの時代になって、やっと実現したという事でしょうか。
その甲斐あってか、ブラッド・ピットの変身ぶりが見事でしたな。老人の頃はともかく、段々と若くなってくる辺りは凄かったですな。実年齢からさらに若くなるところは、元々のブラピの美貌もあってか、まるでデビューした頃のように美しくて若々しかったのには驚きました。この効果は、ブラピだからこそ出た効果でもありますな。
ただ、一つ疑問が。最初、小さい身体で老人の姿で生まれたならば、最後は、大きな身体で赤ちゃんの姿で去っていかなきゃならないのに、そうにはならず、普通に小さな赤ちゃんとして去ってしまった事。どうも腑に落ちないんですな。そういうのが見たかったといか、そうなると凄いだろうなと興味津々で観てたんですが。やはり見栄えが良くないのと、あと、技術的にも難しかったからなんでしょうか。そこが少々残念に思いました。
でも、自分が一番愛した人の腕に抱かれながら永遠の眠りに就くのは、凄く厳粛で荘厳な感じがしましたね。赤ちゃんになって、本人は何も分からない状況ではあったと思いますが、看取った方は、彼の全てを知っているだけに、悲しくてしょうがないぐらい辛くて切なかったでしょうけど。最後、ふと見上げた赤ちゃんの目が、とても印象的でした。(★★★1/2)
The Curious Case of Benjamin Button
デラックス・カラー/2.35=S35/ドルビー・デジタル/DTS/SDDS/165'51"
●TOHOシネマズなんば・シアター2/ネット先売券(¥1000)/約3分の2(10:00からの1回目)

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