普段から率先して日本映画を観ない方ですが、それでもこれだけは興味があって初日から駆けつけた次第。話題作なので、もっと賑わっているかと思いましたが、初日の最終回でほぼ半分の入り。まぁ上映館も多いようだし、こんな程度なんでしょうか。それとも、休憩付きで3時間20分という長さが敬遠されたのでしょうか。
山崎豊子の原作は読んでいたので、それが興味の対象でもあった訳ですが、あの長い原作をどう料理しているかというのも、気になっておりました。結論から云うと、やはり1本にまとめたのは失敗だったかな、と。後から知った事ですが、元々は前後編に分けて作られる予定だったとか。それが原作者のたっての希望で1本になった訳ですが、例え3時間を越えても、やはり無理があったなというのが正直な感想ですね。
原作ものの映画化に対して、「あの場面が無い」「あのエピソードが抜けている」…云々というのはヤボな話で、原作で描かれた事を全部映像化すれば、それこそ3時間どころでは終わらない訳で、それは全ての原作もの映画に言えますな。余程の短編小説で無い限り無理なのは承知ですが、それでも、この映画の仕上がり具合には、納得が出来ない部分が多々ありますな。
まず気になったのはフラッシュバック構成。主人公の現在と過去が交錯する描かれ方で、まぁよくあるパターンでもある訳ですが、この作品の場合、様々な登場人物が入り乱れる話なので、原作で言うところの3巻目からいきなり話が始まる構成には戸惑ってしまいました。あれじゃあ、誰がどういう役なのか、全然把握出来ず、原作を読んでいる人には分かりますが、そうでない人には理解に苦しむ構成ですな。それともこの映画、原作を読んでいる事が前提として観なければならないのでしょうか。
まぁ、この小説で一番インパクトのある話から入った方が、観ている人を飽きさせなくてイイという考えでもあるんでしょうけど(実際、映画版は御巣鷹山編がメインになってますからな)、本来もっと衝撃的になる筈の、国民航空の創立記念パーティの時に事故が知らされるという一番キモになる皮肉なシーンが、ないがしろにされてしまっていたのはどうかと思います。
あと、数え上げたらキリがないんですが、やはり「あの話がない」「あのエピソードが抜けている」という不満は、どうしても避けられませんな。主人公にとって人生観が変わったケニアでのエピソードが、狩りのシーンを除いて全面的にオミットされていたのも「あれ…?」という感じだし、小説では後半の重要な話である八木(香川照之)のエピソードも、映画ではあまりに唐突に描かれていて、原作を読んでない人には疑問が残るだろうし、それに付随して、原作では憎々しく描写されていた八馬と行天に関しても、映画版ではあまり強調して描かれていなかったのもいまいちインパクトに欠けてましたな。特に行天役の三浦友和が好演していただけに、もっと深く抉って描いて欲しかったと思います。
と、いうような事からして、やはり3時間20分の1本の作品としてまとめた弊害というのが色々な面で出ているように思いますな。だからといって、前後編(全部で5時間ぐらいでしょうか?)に分けたとしても、どれだけ描写されていたかは分かりませんが、少なくとも、今回の完成版よりは、もっとジックリと映像化出来たのではないかと思われますな。観終わった感じ、テレビ・シリーズ10話の総集編スペシャル放映版という印象が強く、完全なダイジェスト版になってしまっていたのがとても残念でありました。(★★★)
カラー/パナヴィジョン(レンズ&カメラ)=1.85/ドルビー・デジタル/191'48"(インターミッション除く)
●TOHOシネマズ梅田・シアター2/無料(ポイント鑑賞)/約1/2(19:00からの最終回)

0