イーストウッドの最新作。そしてまたしても傑作。本当にイーストウッドは、何本傑作を撮ったら気が済むのでしょうか。これほど傑作を連発している監督は、世界広しといえども、今はなかなか居ないのではないでしょうかねぇ。それだけ、現在の他の監督たちのレベルが落ちているとも考えられる訳だけど、それにしてもこの傑作率の高さは尋常ではないですな。普通、何本かに1本は、失敗作や駄作があっても不思議ではないのだが、ここまで水準の高い映画ばかり連発されてしまうと、却ってドキドキしてしまいますな。
イーストウッドといえば“早撮り”で有名ですが、映画の中身も一切の無駄が無く撮られているのも凄いですな。今回も、2時間13分の長尺が3分半ぐらいに感じられて、アッという間に終わってしまった感じで、この無駄の無さも特筆に価しますな。
そもそもイーストウッド映画って、実際に撮影する時にも、何度もテイクを重ねたりしないんでしょうね。それと、何かあった時の為に補償で撮っておく、所謂リカバリーショットなるものもわざわざ撮ったりもしないんだと思われますな。つまり、それだけ自分が撮ったものに自信があるというのか、「最初に撮ったもの=劇場で観客に観て貰うもの」という自負と責任が感じられますな。
だからという訳ではないですが、イーストウッド映画のDVD等のソフトに“NGシーン”や“削除シーン”、さらには“未公開シーン”なるものは全く収録されておりませんですな。それはつまり、最初からそういったものは一切存在しないからであって、それだけコンパクトに、無駄なく撮影されているって事になるんでしょうな。なので、イーストウッド映画に限って、“ディレクターズ・カット”やら“完全版”やら“特別編”やら“ファイナル・カット”やらの別バージョンは全く持って存在し得ないんですな。そう、イーストウッド映画は、劇場公開版こそがディレクターズ・カットであり、完全版であり、ファイナル・カット版である訳なんですな。
この事を、他の監督さんたちに聞かせてあげたいものですな。DVDが出る度に、やれ“ディレクターズ・カット”や、やれ“完全版”や、やれ“ファイナル・カット版”等を当たり前のようにリリースする腑抜けた監督たちに! 「劇場公開版では時間の都合で収録出来なかったシーンを入れました!」なんて、したり顔で言ってるフザけた監督たちに! それって、「劇場公開版で完全に仕上げられないワタシは、監督としては最低です」と自ら宣言しているようなもので、監督としての資質が問われる重要事項だと思われますな。なので、そういった監督たちには、イーストウッドの爪の垢を煎じて飲ませてやって、今一度「映画監督とは?」という事を問いただし、考え直して貰いたいものですな。
という事で、今回も傑作を放ったイーストウッドに乾杯! 全てが完璧なので、どこがどうのこうのという気すら起きませんですな。今思ったんですが、この文章は、イーストウッドのどの映画にも引用出来ますな。今回も勿論、昨年の『グラン・トリノ』にも『チェンジリング』にもそのまま引用出来ますな。これは便利なので、今後公開される全てのイーストウッド映画にも引用しようと思いますな。それだけ今後も傑作を撮り続けてくれるであろう事に期待を寄せて。(★★★★★)
Invictus
テクニカラー・プリント/パナヴィション(カメラ&レンズ)=2.35/ドルビー・デジタル/DTS/SDDS/132'13"
●TOHOシネマズ梅田・シアター4/ネット先売券(¥1200)/約1/2(20:30からのレイトショー)

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