あのイカつい顔のダニー・トレホが主演というのが凄いですな。元・犯罪者という経歴からか、今まで、どちらかというと、反社会的な役柄(刑務所収監者や囚人や犯罪者等の悪役)専門だった彼が、まさか正義のヒーロー役で、しかもビリング1位の主演作が作られるとは、それだけで衝撃が伝わる映画ではありますな。
ロバート・ロドリゲスの前作『プラネット・テラー』に付けられたフェイク予告編が元ネタとはいえ、そっくりそのまま実現された事も凄いですな。しかも、内容もほぼ予告編通りというのも可笑しく、それでも観に行かせるぐらい魅力に満ちた一編ではありました。
そもそもこの手の映画って、昔(特に70年代)にはいっぱいありましたからね。それこそ、ロジャー・コーマンやサミュエル・Z・アーコフ等が作っていたAIP系映画に、こういったジャンルの映画が沢山ありましたね。なので、当時は沢山あり過ぎて、いちいち「面白い!」と思う事もなかったですが、こういった映画が作られなくなってしまった現在、改めてジックリ観ると、思わず「面白い!」と膝を叩いて喜んでしまうのは、単なるノスタルジックな懐かしさだけではなくて、心底この手の映画に飢えていたという表れでもありますな。
そういう意味からも、この映画、ベスト1級の面白さであり、こんな映画は年に1本ぐらいあってもイイですな。勧善懲悪のヒーローもの映画としては、思いっきりルーティーンに則った映画で、まるで絵を描いたような展開になっている訳ですが、このオーソドックスさが却って面白さを増していて、それを最新のSFXで持って描かれるものだから、その徹底した映像化ぶりも見事でしたな。
そういえばロドリゲス監督って、例えば前作の『プラネット・テラー』もそうでしたが、盟友のタランティーノに比べると、“グラインドハウス世代”とは違っているにも関わらず、作る映画は思いっきり“グラインドハウス”的で、しかも出来上がりもよりエンターテインメント性豊かになっている分、拘り派のタランティーノよりも面白い映画が作れて、ロドリゲスの方がずっとグラインドハウス監督としての腕は上手いのではないかと思え、それがこの映画にもピッタリ当てはまりますな。
豪華な出演陣(スティーヴン・セガールは『エクスペンダブルズ』をヤメて正解だったような…)も含め、随所に見せ場がある展開ぶりも、B級エンターテインメント映画の真髄を垣間見た映画ではありました。マジで面白かったです。(★★★★1/2)
Machete
カラー/1.85/ドルビー・デジタル/DTS/104'42"
●梅田ブルク7・シアター1/当日券(¥1200)/たった16人(21:15からのレイトショー)

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