待望のシリーズ第5作、なんだけど、これはかなり問題有り。っていうか、あまりに酷い。大体これを作ってる人たち(監督を始めとするスタッフ&キャスト一同)っていうのは、本当にこの映画が面白いと思って作っているのだろうか。そもそもこんないい加減な脚本で製作がGOとなった事自体に疑問を感じる。「こんなの“ダイ・ハード”じゃない!」とは誰もが思うけど、普通のアクション映画という視点からしても、かなり酷い仕上がりですな。
普通、この手の映画って、最初は主人公が訳が分からないままに事件に巻き込まれ、ストーリーが進むに連れて、登場人物の設定であるとか、敵の正体であるとか、敵の目的であるとかが徐々に解明されていくのが常套手段である訳ですが、この映画に関してはそれが全くない。主人公の息子の目的も、一応途中で、何となく説明されたりはしますが、その度に敵の襲撃を受けたりして、そういった説明が中途半端なままにストーリーが進むものだから、観ていてずっと「???」の連続。徐々に解明されてこそ、アクションもサスペンスも盛り上がるのに、それが無いものだから、いくら派手なアクションが展開されても全然盛り上がらない事夥しい。
それに何と言っても、いつもの“ダイ・ハードさ”が欠けているのも大きなマイナス・ポイントですな。敵が周到に準備した計画や罠を、主人公の機転や超人的な体力で悉く粉砕し、さらにそれをわざわざ知らせる事で敵を怒らせる、といういつものパターンが今回は全くの皆無なのに加え、前半に張り巡らされた伏線が、後半になって活きてくる、或いは主人公の逆転のきっかけになるという事も、今回は全くナシ。あの、どちらかというと評判が悪かった3作目や4作目でさえ、これらの項目はクリアされていたというのに、今回の5作目のこの体たらくぶりには唖然としますな。
これまでとの違いという点で言えば、画面サイズがシネスコからビスタになっている、ランタイムが2時間超えから98分になっている、等の事柄を鑑みるに、スケール感の縮小ぶりも合わせて、これは下手すればTVムービーに近い感じでもありますな。TVシリーズから映画版にスピンオフされるのはよくあっても、映画のシリーズからTVムービーにスピンオフされるというのは聞いた事はないですな(まぁ、映画版からTVシリーズ化されたものは過去にありましたが…)。そもそも、これ程スケールが小さくなると、これが本当にシリーズの1作であるのかという事事自体に疑問を感じますからな。「エ…? これで終わり?」という感じのクライマックスも物足りず、本来なら、あの後にもう一悶着あってしかるべきなのに、「ハイ、おしまい!」と途中で切り上げられてしまったかのようなあの呆気ないエンディングにも呆然としましたな。
大体、こういったシリーズもので、主人公の息子が登場して、主人公と一緒に行動を共にするという映画にロクなものがないですな。『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』しかり、『ハムナプトラ/呪われた皇帝の秘宝』しかりと、息子が出てくるシリーズ作品は失敗の連続ばかりですからな。何故なら我々は、主人公の活躍が見たいのであって、息子なんかどうでもイイんですな。インディ・ジョーンズが見たいし、ジョン・マックレーンが見たいんですよ。息子なんか登場させるというようなヘンな小細工はヤメて貰いたいものですな。息子の代わりに、最初の企画通りに「24」のジャック・バウアーを出してくれていたら、もっと違ったんじゃないかと思うんですけどねぇ。いくら息子の名前がジャックでも、ダメなものはダメですな。(★)
A Good Day To Die Hard
FOX配給/デラックス・プリント/1.85/ドルビー・デジタル/SDDS/97'33"
●TOHOシネマズ梅田・シアター1/ネット予約券(¥1200)/約1/4(21:45からのレイトショー)

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