Once Upon a Time... in Hollywood
タランティーノの新作ですな。昔々ハリウッドで…。因みに、昔々映画館で…、という訳で、少し古い話をさせて頂くと、今回この映画を観た劇場ってのが、今はTOHOシネマズ梅田のシアター9(しかも別館)という所なんですが、ここはその昔、ニューOS劇場という映画館だったとこですな。正確には現在は多少改装されて1階部分のみですが。ここの映画館は、70年代前半頃、ディズニー映画をよく上映していた映画館ですな。というのもその昔、我々が通っていた小学校では、よく春休みやら夏休み前になると、ディズニー映画の割引券を配っていて(懐かしい!)、その時によく“ニューOS劇場”というのを目にしたものでしたな(なんばは南街シネマでしたな)。
因みに、梅田でディズニー映画というと、もっと昔に梅田シネマというところが梅田新道にあったんですが、そこが閉館した為に(現在はホテル阪神)、このニューOS劇場がディズニーをよく上映する映画館に変わったのでしたな。まぁ今もそうですが、ワタシは前々からディズニー映画やアニメには全然興味が無かったので(誰がガキの映画なんて観るもんか、と、粋がっていたからですな)、なのでこの劇場に行くことなんかサラサラ無かったのでしたが、そんな中満を持してワタシが初めてここで観た映画というのは、アレは忘れもしないブルース・リーの日本公開第2弾の『ドラゴン危機一発』でしたな(これはガキの映画ではなくて、“男“の映画だとワタシは勝手にホザイてましたな)。場内がギッシリ超満員だった事が思い出されますが、“ニュー”と付いてる割には、本家のシネラマOS劇場よりも狭いし(キャパは半分ぐらいか?)、スクリーンも小さいし、ワタシの中では「どこがニューやねん」と思っていた訳ですが、まぁ出来たのはOS劇場より後だったので、そういう意味では確かに“ニュー”という意味合いでしたな。ただ、ここでは同じOS系という事もあり、OSで上映される映画の予告編なんかも観れたので(それがシネラマを意識した大作ばかり)、それが当時は珍しかったし、嬉しかったですな。その後、メル・ブルックスの『サイレントムービー』を1日4回も観たのもここでしたな。それから同じくブルース・リーの『死亡遊戯』もここで観ましたな。あの時は開場前に客が劇場を何周にも取り巻くぐらい沢山行列を作り始め、整理しきれなくなった映画館側が、いきなりマイクで「上映はOS劇場の方でも致します。そちらの方では先着○名様にポスターを差し上げます。だからそちらでもどうぞ」とかナンとか言って、ポスターで客を釣ろうというのがミエミエでしたな。一瞬、そちらの方へ行きかけたけれども、グッと我慢して行くのを思い留まりましたな。ポスターは別にどうでも良かったんですが、OSのシネラマ用のスクリーンで観るブルース・リーにはちょっと興味があったのは事実でしたが…。尤もその前に、『ドラゴン怒りの鉄拳』をD-150の大画面の阪急プラザで観ていたので、スクリーンの大きさ自体は然程変わらなかったかと思いますが…。
その後1991年2月のOS劇場閉館に伴い、この劇場がOS劇場と名前が変わり(違和感しかありませんでしたが)、97年4月には2階部分が切り離されて1階だけになり、その2階部分は改築されて、新たにOS劇場C.A.P.という映画館が出来ましたな。後にC.A.P.の方は名前をOS名画座に変更になったりしましたが、2007年10月、近くの梅田東宝会館がTOHOシネマズ梅田に名称変更したのと同時に、TOHOシネマズ梅田の別館(シアター9と10)として、TOHO系のシネコンに組み込まれてしまい、味もクソも無い平凡な名前に変わってしまって、寂しい事この上ないですな(経営権をOSが東宝に売った?)。しかしまぁ場内は多少改装されたとはいえ、微かにニューOS劇場時代の面影は少し残っているので、もしかすると、現在、大阪に残っている、唯一の昔の香りがするロードショー館という事ではないでしょうかねぇ。
という訳で、タランティーノの新作ですが、ハッキリ言ってこんなつまらない映画はないですな。そもそもストーリーがない! 雑誌等の媒体で主演二人の事ばかり云って、細かなストーリー紹介が無いのはそのせいですな。これだと確かにそうせざるを得ませんよね。しかもストーリー自体が無いのにも関わらず、ランタイムは160分もあるという、いわば無謀な映画ですな。何の面白味のない話がダラダラと延々と続くという地獄のような長時間に、ずっと我慢しなければならないという苦痛以外の何物でもない映画ですな。もう、いい加減にしろと言いたいですな、ホンマに。
と、若い観客や何も知らない人たちはそう思っても仕方ありませんな。多分、大方の感想は上記のようなものではないですかね。そう、その通りです。その通りなんですが、ワタシのような60年代や70年代を経験している者からしたら、例えストーリーが無くてつまらないクソ面白くない映画であっても、この映画には誰にも言われぬ魅力を感じてしまうものなんですよね。故に、この映画を観ている間中、つまらないと分かっていても、何故かスクリーンから一瞬たりとも目をそむける事無くいわば凝視して160分を乗り気ったんですな。つまらないけど面白かったというのか、最後は至福の気分で映画館を去ったのでした。どこがそんなによかったんだと聞かれても、言うに言われぬこの気持ち。人前では「全然面白くないね」と言いながら、心の中では「でも、よかったんだけど…ワタシだけ…!?」と思わせる、ニクい映画なんでしょうね。何のコッチャ。
個人的には、あのジェイ・セブリングとブルース・リーの関係をもっと突っ込んでくれれば良かった(マニアなら常識?)んですが、でもジェイ・セブリングを出してくれただけでも嬉しいですな。彼がいたからこそ、シャロン・テートが『サイレンサー/破壊部隊』に出た事の意味がありますからな。因みに、ブルース・リーがアクション指導をしたその映画にはチャック・ノリスもチョイ役で出ていますな。彼がどこに出ているか、ビデオで探すのに苦労するぐらい、ほんのチョイ役(端役)でしたな…。そんな事を思い起こすぐらい、昔々ハリウッドでの出来事でしたな。(BOMB!)
★ソニー配給/カラー/2.35/ドルビー・アトモス/161分
●TOHOシネマズ梅田・シアター9/ネット先売券(¥1300)/9:00からのレイトショー(約2分の1)

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