今日も上映の20分程前に到着。でも、入場しようとしたら、美術館の人に「これから準備しますので表でお待ち下さい」と言われて外で待つ事に。昨日は確か、ワタシが入る前に、丁度監督一家が入口から入るのを目撃したんですが、今日はもしかして監督がまだ着いていないとか…??? よく分からないながらも、外で待っていたら(他にも何人か待っておられました)、ここの施設の実体が初めて分かりました。美術館となっているものの、ここって古本屋さんだったんですね。知らなかった…。昨日来た時は、映画を観たらさっさと帰ってしまったので(入口の横手で監督の奥さんがパンフやらDVDやらを売られていて、一応何冊かパンフだけを買いましたが)、この建物をジックリ見る事はしなかったんですが、そうでしたか古本屋さんでしたか。で、外に並べてある(古本祭りを開催されていた模様)本や、店の中の本を見ていたら、結構時間が潰せて、しかも興味ある本が多く、前から欲しかった本もあったので、帰りに買ったりもしました。
で、11時半上映開始の3分前に監督一家が到着。やっぱりまだ着いてなかったんかい! 今から準備したら上映開始は結構遅れるやろ! と思ったりしましたが、誰も文句言う人もおらず、奥さんが申し訳無さそうにいそいそと発券の準備をしているのを「急かして悪いなぁ」とこっちが恐縮しながら、何とか入場。昨日同様、上映開始前に監督自ら、上映作品に対してのちょっとした解説があり、それが終わっていざ上映開始。多分、15分〜20分ぐらい遅れての上映だったと思うけど、これだと次回上映に支障があるんじゃないかと心配したものの、ランタイムが1時間20分というのを聞いて納得。次回上映が14時なので、全然余裕なんですな。なるほど。もしかして、これを見越して遅れたって事なんでしょうかねぇ。ま、奥様の慌てぶりからして、わざと遅れた訳ではないと思われますが、こういうのは、今のシネコンなんかでは絶対に味わう事の出来ないハプニングではあり、こういうのも含めて渡辺文樹テイストだと思われますな。
で、映画ですが、これもいつもの渡辺文樹テイスト。単純に面白いか面白くないかで言うと、今回もクソ面白くない(クソつまらねぇヨ!)訳ですが、ま、監督の主張というか、言いたい事は十分理解出来ましたね。監督さんも上映前に仰ってました。「この映画を観て、ちょっとでも天皇制や皇室問題に関心を持って頂ければ」と。それを喚起する為のサブテキストとして、果たしてこの映画が相応しいのかどうかは分かりませんが、何かのきっかけにはなるんじゃないかと思われますな。
『御巣鷹山』ではクライマックスはチャンバラ・アクションでしたが、今回は妻殺しの容疑で逮捕された主人公(渡辺文樹)が、護送中に逃亡し、警察や謎の組織に追われながらも自ら事件の真相を解明しようとするヒッチコック風サスペンス・アクションというか、『逃亡者』そのまんまですな。『逃亡者』では片腕の男を追いましたが、ここでは片腕に火傷のある男ですからな。あと、ムードからいくと『君よ憤怒の河を渉れ』のような感じもありましたな。女性が逃亡を手助けしてくれたり、セスナで脱出したりのシーンもちゃんとあったし。
そしてクライマックスは、列車をジャックした真犯人を、道の途中で拝借した車(トラック)で追う主人公という、まるで『フレンチ・コネクション』を髣髴させるようなチェイス・アクション! チェイスの途中、道路を渡ろうとした女性のベビーカーに激突してしまうという、本家ソックリなシーンもあり、渡辺監督のポパイ刑事ぶりが素晴らしいですな。予算の事を考えると、絶対にスタントマンなんか使ってないと思われ(ま、スタントマンを使う程の危険なアクションは無いですが…)、いわば監督自身がスタントなしで敢行したカー・チェイスになっていて、他の大作映画でもなかなか撮れない日本の公道でのカー・チェイス(しかも追うのは2両編成の列車!)を、この映画で堂々とやってる辺りの渡辺監督の拘りようは凄いですな。映画の出来・不出来はともかく(これが一番問題だと言われればそれまでですが…)、この情熱には脱帽してしまいますな。
『フレンチ・コネクション』同様、列車が急ブレーキで止まった後、犯人と主人公が対峙するというシーンまでソックリに作られていたのには笑いましたが、その後の決着のつけ方といい、その後のエンディングといい、その頃になるともう、最初に掲げられた監督の主張(天皇についての云々)は、完全に忘れられた状態になっているのも凄いというか、これって監督が『フレンチ・コネクション』をやりたかっただけなんじゃないですかね。そういえば、その前に雪山でのロープウェイ上でのアクションもあり、これは『荒鷲の要塞』でのリチャード・バートン(見せ場もそのまんまだった!)ですな。そうでしたか。色々煽っているものの、監督がやりたかったのは活劇(アドベンチャー・アクション)映画だったんですな。娯楽映画にちょっとだけ政治や社会派的なテーマを盛り込む。これはピーター・ハイアムズ辺りが得意とするハリウッドの面白いエンターテインメント映画の手法=王道ですな。それに超低予算でありながらハリウッドに真っ向勝負した渡辺文樹監督のチャレンジ精神には、思わず胸が熱くなってしまいますな。(BOMB!)
カラー/1.33/80'34"
●油野美術館/当日券(¥1000)/8人(11:30からの1回目)

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