“三丁目の夕日症候群”とも呼べる映画ですな。昭和の懐かしい町並みの風景をバックに繰り広げられる愛の復権を描いたドラマ。まぁ原作自体は、もっと前に発表されているので、別に風潮に乗っかった訳ではないんでしょうけど、製作されたタイミングがバッチリというか、完全に『三丁目の夕日』のヒットを見て「よ〜し、これだ!」とばかりに作られたような、そんな気がしますな。主演の堤真一もダブってるし(笑)。
主人公が地下鉄に乗る度に、いや、乗らなくても(寝てるだけの時もあるし)、時空を超えて、自分の父親の若き日の色んな時代にタイムスリップし、自分が生まれる前の父親がどんな人間だったかを知るという物語。現代では、父の横暴ぶりに見かねて、母と一緒に家を飛び出して、半ば他人のように暮らしている訳で、そんな主人公が、真の父親像に迫り、もう一度見つめ直すというのがテーマなんですな。ええ話や。
ハッキリ言ってこの手の話には弱いです。早くに父を亡くしている者からしたら、とても他人事とは思えないぐらいで、『フィールド・オブ・ドリームズ』なんかもそうですが、グっと来ちゃいますな。この映画でも、何度か泣かされてしまいました。
▲▼▲ 以下、ちょっぴりネタばれがあります ▼▲▼
で、これと似たような話の映画で思い出したのが、『異人たちとの夏』。アレも、今回と丁度よく似た話で、アレにも泣かされましたが、この映画、最後まで観ていると、ナンと『異人たちとの夏』と同じオチに繋がるんですな。勿論、アチラは怪談仕立てで、コッチはファンタジックでノスタルジックな雰囲気なんですが、実は、あの人はアレだったという…。ナンでストーリーに、あの人が絡んでいるのか、最初はとてもウザく感じていたんですが、そうですか。それがやりたかったんですな。ウザいまでの伏線の張り方に参りましたです。
有り得ない話なんですが、それがすんなりと受け入れられてしまうのは、やはり演出が上手いからでしょうか。後で知った事ですが、監督は、巷ではほとんど話題にされなかったけど、ワタシの大好きな映画『天国の本屋/恋火』を撮った篠原哲雄監督なんですな(知らないで観てた…)。なるほど、通りで面白い訳ですな。納得しましたデス。そういえば、『天国の本屋』も、“死後の世界”を描いているという点で、この作品と似通っている部分があるような…。この手の話が好きなんですかねぇ。
因みに、主人公の父親役の大沢たかおは、色んな年代での姿を演じているんですが、ちょっと無理があったような気が…(笑)。このキャストだけ、他の人のような良かったような気がしました。ま、ともあれ、拾い物的佳作ですな。 (★★★1/2)
カラー/2.35/ドルビー/118'20"
●梅田ピカデリー1/タダ券/約5分の1(6:45からの最終回)

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