2012/1/14

ニルソンのイゾルデ  歌劇・楽劇


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DECCA jubilee JB 58 LP 1979


ビルギット・ニルソンのイゾルデと言うと即座にバイロイト音楽祭でのカール・ベームとのDGG盤が浮かぶが、ハイライト盤としては、このハンス・クナッパーツブッシュとの共演盤が、やはり現在に在っても最強だと思われる。当時のクナッパーブッシュは、英国DECCAのプロデューサーであるジョン・カルショウから既に冷遇されていたが、そんな状況に在っても演奏自体は、とても個性的で、所謂十八番物のワーグナーは、やはり素晴らしかった。是は、クナッパーブッシュが最後にDECCAに残したワーグナーの録音だった。しかも主役は、ビルギット・ニルソンである。そう言いながらも、クナッパーツブッシュの個性満開で、細部に渡り指揮者の目が光っているレコードである。しかしながら録音バランスは、ステレオ初期の慣例で、ティンパニーが遠く、弦主体の上品なものである。其れによって指揮者の個性が薄くなっているのは、残念だが仕方在るまい!そんなものだから私自身もこのレコードに関しては、少々物足りなさが在り、不満も在ったが、現在では、少しづつであるが見直している。曲は、「前奏曲と愛の死」と「イゾルデの物語と呪い」である。収録は、1959年9月22〜25日にされているが、正直、初めて聴いた時は、流石にウィーンフィルの音色は美しく、其の美音が、耳に付くものの何か物足りなかった。其れは、余りにも演奏が、理性的に過ぎて実在感に乏しく感じられたからなのだが、何度も聴くうちに演奏の内面性が、ようやく理解出来る様に成った。この手の演奏は、聴く者の年輪にも関係する様だ!其れだけ音楽は、内面的に深いと言う事だが、実際、購入時に敬遠していたレコードも後から理解出来た経験は、音楽を聴く事を趣味としている人には、誰にでも在ると思う!是もそんなレコードだ!序曲は、囁く様に始まるが、陰影を感じさせる音色は深く、録音バランスの不備を感じながらも魅了されるものがある。そして表現もとても緻密である。息の長いワーグナー特有のクレッシェンドも素晴らしいが、演奏自体の呼吸も深いので、じっくりと聴き込める。そして展開部でさえ儚く美しい情念が音化されており、圧巻である。「愛の死」も囁く様に始まるが、ニルソンのビロードの様に引き締まった声は、前世代のワーグナー・ソプラノとは、また違う味わいが在る。声のコントロールも万全の時期で頂点に達しても余裕の在る声量豊かな美しい声は、本当に素晴らしい!それは「イゾルデの物語と呪い」も同様だが、此処では、クナッパーブッシュの伴奏が、常にものを言うので聴き応えがある。湧き上がる様に始まる冒頭から全てを揺るがす壮大な表現は、実在感も在り、豊満だが透明感の在る孤高な演奏は、正に巨匠ならではと言える。聴いていると舞台が浮かぶ様だが、オケの音色は、此方の方が立体的に捉えられており、何の不満も無く聴けるのが良い!此処では、ニルソンのイゾルデが全盛時にどれ程素晴らしかったかが垣間見れる程、表現が多彩で劇的でも在る。このコンビでの全曲盤が、もしもDECCAで可能で在ったら人類の宝と言って良い程のものに成っただろうと惜しまれる。カルショウの心変わりが与えた文化的損失は大きい!残念なのは、やはり録音の彫が浅い事である。もっと良いプレスで聴いてみたいものである。

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