2013/11/3

アカンタ盤のフルトヴェングラー  指揮者


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ACANTA 40.23 520 5LP 1983


これは独.アカンタで1983年に発売されたレコードで5枚組の物だが、当時はR・ワーグナーの没後100年の歳に辺り、レコード業界も大いに盛り上がったものだ。このレコードもその企画物だが、ジャケットに在るようにフルトヴェングラーの歴史的録音集である。既にマニアにも知れた演奏ばかりだが、「こんな時じゃないと購入出来ないな?」と思ったので買った記憶が在る。動機とはそう言うものだ。実はこのレコードは、このブログで「ワルキューレ第3幕」のみを紹介しているのだが補足として取り上げるの演奏も在るので「敢えてまた」と言う事である。だが後から公認盤が出ており、別件でと考えているものについては「そのうち」である。巨匠がバイロイト音楽祭に始めて登場したのは1931年だが、「トリスタンとイゾルデ」第1幕の前奏曲が幸い残されている。それがこのレコードにも収録されているが、真偽はともかく聴いてみるとしよう。これは3ステージ在ったうちの最終日の録音のようである。実はこの演奏は1930年の独.DGGか1938年にHMVによって収録されたものではないかと言われているものである。しかし同じ曲でも毎回違う印象を与え、聴衆を「振ると面食らう」とした程の巨匠である。だから他の曲の再録音や実況録音でも数々の同曲異演盤の全部が全く違う表情を持っている事位は、ある程度巨匠のレコードに接した人には御馴染みだろう。その比較こそが巨匠のレコードを聴く醍醐味でもある。じっくりと聴いていると会場のざわめきらしいものも微かに聞こえる。しかしながら古い録音だけに音だけで判断するのも限界が在る。だけど憶測が多くて宛になるものも意外と無いのも巨匠の録音である。此処は耳を澄まして純粋に演奏を聴くとしよう。さて演奏だが、そんな感じなので先入観念は野暮である。当時の巨匠は45歳だった。流石に若さが溢れている演奏だと思う。所謂戦前の商用録音と聴き比べてもより表情的だと言える。それと巨匠の特色である鈍重なリズム感もあまり感じず意外とサラリとしている。だがクライマックスに向けての曲に対する感情移入もストレートなのは、やはり若さだと思う。演奏から感じるスケール感はHMVのベルリンフィルのものよりはずっと小さい。このアルバムにはベルリン・シュターツカペレでのものではないかと言われている「タンホイザー」と「パルジファル」の序曲がある。収録年は共に1940年である。音質は程々だが「タンホイザー」序曲には微妙なフラッターが在り、聴く人によっては気になるだろう。さて演奏だが、楽団の音色は確かにベルリンフィルとは少々異質のものに聞こえる。実はこの演奏も疑問形で、もしやこれも「戦後のHMV録音か?」と言われたものでもある。だがその録音はウィーンフィルである。もちろんピッチも違うのでそんな事も在り得ない。だから耳を澄まして聴いてみる必要がある。始まりが素朴なのは変わりない。音色も押さえ気味で渋いが、それこそドイツの楽団なのだろう。トロンボーンも然程力んでいないのも良い。アレグロ部分も快調だが、この録音も弱音部分では会場のざわめきが聞こえる。例のヴェーヌスベルク賛歌の主題が始まった途端のアクセントでは巨匠の足音も聞こえるが、全体に熱っぽい演奏と言えるだろう。聴いているとDGGでレコード化された演奏とも違う印象を受ける。さて次も疑問形の「パルジファル」第1幕前奏曲である。音質は此方の方が幾らか聴きやすい。これは流麗で夢のような神秘性を秘めた演奏だ。哀愁と言うよりペシズムに溢れた表情は悲しいが、金管で演奏される信仰の動機は輝かしい。聴いていると確かにHMVのものとは同傾向も演奏だ。名演だが正直謎の演奏である。

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