2011/2/21

ブラットナ―フォン  録音史


先にマグネトフォンについて触れているので、順序は逆に成るが、磁気録音方式の沿革に触れてみよう!磁性体を帯磁させることで音声信号を記録する磁気録音方式自体は、1888年に米国のオバリン・スミスが最初に着想しているのだが、システムとして実用化したのは、デンマークのヴォルデマール・ポールセン(1869年-1942年)と言う発明家が、1898年に完成させた鉄線を利用した磁気録音式ワイヤーレコーダー「テレグラフォン(Telegraphon)」が最初である。テレグラフォンは、後のワイヤーレコーダーの祖で在る。性能は当初、人間の声が、聴き取れる程度の実用水準であったが、1924年には、ドイツのクルトスティーレ博士(1873年〜1957年)によって多少の改善がされている。しかしながらオフィス用の口述録音機の粋は脱してはいなかった。しかし映画プロデューサーで在り、演出家でも在ったルイ・ブラットナー(1881年〜1935年)がドイツの開発者と共にワイヤーレコーダーの開発会社を設立しており、其等の装置は映画産業にも応用する事も想定していた。 最初の装置は、1930年9月に完成している。最初に関心を持ったのは、英国のBBC放送であった。そこでラジオ放送を目的に試験をした処、ようやく音楽再生にも可能性を見出したそうである。




そこで翌年1月には、製造元であるBlattnerphone社と5年間の賃貸契約の交渉を終えてラジオ・メディアで放送に使用された。尚、新開発の録音機は鋼線から6ミリ幅の鋼帯に改良されており、鋼帯速度は、5ft/secと言う早いものであった。鋼帯が巻かれているリールも巨大で直径1メートルは在ろうかと思われるものだが、収録時間は、20分であった。だが1932年9月には、鋼帯の幅が、3ミリに改善されており、収録時間も32分に延びている。それで肝心の特性だが、4Kz迄が限界だったが以来の物よりは遥かに技術上の見通しは明るかった。尚、鋼帯にした事で編集が可能に成った利点もある。接合方法は、調べてみたらハンダを使用したとの事である。




そして其の後も改良が進められて1934年には、其れなりの効果は得られた様だ!最初は走行系から手が付けられた。と言うのも以来のものは、扱いに対して余りにも危険と思われる要素も否定出来ないからである。其の結果、より走行が滑らかになり、駆動音も静かに成ったと言う事である。勿論、周波数特性も改善されて1935年には、6KHz、SN比も35dbと飛躍的な発展を遂げている。




このマルコニ―社が開発したブラットナ―フォンだが、ドイツの放送局でも使われた形跡が在る。それも1936年のバイロイト音楽祭の演目の収録に使用された様だ!此では、1936年のバイロイト音楽祭で上演された「ロ―エングリン」のレコードを紹介しよう!フルトヴェングラーが指揮した歴史的上演と言われているものである。 これもオリジナルの鋼帯の存在は不明である。このレコードのマスターは、鋼帯からディスクに転写されて保存されたものである。たぶんオリジナルの鋼帯は、戦災で消失しているか、米国か露西亜が研究用に持ち去った可能性も否定出来ないが、ドイツは、自国開発のマグネトフォンの性能が途中から飛躍的に改善されて以来の鋼帯録音機の必要性も無くなったので、残っている可能性も薄いと見た方が懸命かも知れない!

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The Wilhelm Furtwangler Society Japan LP 1985


さて演奏だが、最初にHMVが録音した第1幕前奏曲が収録されているが、その感想は、後から述べる事として第3幕の抜粋から聴いてみよう! 私は当初、伊.チェトラから発売されていた「ワーグナー・ドキュメント」なるレコードを聴いていたが、復刻の状態が万全では無いながらも感激してしまった事を思い出す。此処では、日本フルトヴェングラー協会のレコードを紹介するが、復刻は見事で申し分無い!第3幕の前奏曲が鳴り出した途端に演奏に引き込まれる程の素晴らしい緊張度だが、音色は明るく辺りを掃う様な神聖な威厳も感じる。巨匠の指揮振りも絶好調で物凄い推進力である。続く婚礼の合唱も暖かく雰囲気に呑まれてしまう!こんな古い録音からも弦楽器の繊細な音の絡みが聴かれる奇跡的な状態の良さに只々感心してしまった。勿論、不安定な処も無い訳では無いが、此処まで演奏が伝われば言う事も無い位である。フランツ・フェルカーのローエングリンの英雄的な高貴な声とエルザのマリア・ミュラーの心の篭った名唱に当時最高の名コンビを音で実感する喜びは、充分に文面で表現出来ない程に素晴らしい!合唱も見事でハイリッヒ王万歳!と歌う精神の高揚状態は、熱狂すらを超えて物凄い事に成っている。是は当時の祝祭的な雰囲気が其のまま反映されたかの様である。ハイリッヒ王は、ヨーゼフ・フォン・マノワルダだが、独特の威厳が在る。 見事と言えば、聖杯の歌を歌うフェルカーは、やっぱり見事だ!私は是からローエングリンを聴いたので、自身では王道と言ってしまっても良い位である。ローエングリンの告別も名唱だ!心の動きが聞き取れる程だ!ドラマティックな終幕の熱狂振りも凄まじく、聴き終った時には、他の物音も耳に入らない位の圧倒的な感動を覚える。

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収録は勿論、バイロイト祝祭歌劇場、1936年7月19日の実況録音である。同年は、ベルリン・オリンピックの年で、まるでオリンピックを包む様に音楽祭は開催された!改めてブラットナーフォンの性能を振り返ったが、それからの転写ではあるものの思った程聴き辛くは無く、充分実用に耐えていた事を知った!衰退の理由は、操作性の問題だった事が推察される。さて順序は逆に成ったが、第1幕の前奏曲である。是は1947年8月30日にルツェエルン音楽祭のオーケストラと使いレコード用の収録をした様だが、近年迄、発売された形跡か無いので、御蔵入りしていた音源の様に思われる。音質は、針音が在るものの音の粒立ちも良く、とても聴きやすい!SPレコードそのままの音質と言っても過言では無い!演奏も繊細の極意であり、神経が透けて見えるほどの美しい弦の音に魅了される。音色も神聖で素晴らしい!クライマックスも凄い迫力だが、最後迄、デリカシーの極意である。

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2011/2/16

マグネトフォン  録音史


ある管球アンプのマニアが、再生しずらいものについて、戦時中のマグネトフォンで録音したレコードの低音の再生を上げていたが、それは私も賛成だ!そのマグネトフォンと言えば、所謂、テ―プレコ―ダの原型だが、1928年には、その原型が出来ている。だが当初の性能は、あまり褒められたものではなかった。そこで、AEG社が、開発に踏み切った訳だが、1935年に成果となって現れる。それが市販化に及んだマグネトフォンだが、気に成る音質は、それ程でもなかったらしい!使用するテープも単に酸化鉄を紙テープに塗布したものから始まっているので無理もなかろう!その後、化学メーカーBASF社の協力によるテープ材質の改良(アセテート樹脂)と、1938年の永井健三、五十嵐悌二による交流バイアス方式の発明で、1939年〜1941年までに音質が飛躍的に改善され、実用に耐える長時間高音質録音が可能となった。やはり改善の鍵は、録音テープの磁性帯にあった。だが、その後も更に改善されているので、本当に完成と言えるのは、やはり戦後と言う事になるだろう!




さて音質が改善されたものの、どうも低音に関しては、自身が所有している戦時中の実況盤を聴いてもそんな印象である。つまり低音感が、いい加減なのだが、実際どんな低音かと言うと締まりの無い音色で、今一つの決め手に欠ける。だから音階もあやふやに聴こえる。それでも大戦末期には、大幅な改善がみられるのだが旧来の装置では、どの様な再生音だったか不明なので検証してみる必要も在りそうである。当たり前の事だが、現在の装置と当時の物は性能に雲泥の差が在る。さて開発に関わった企業は、AEGと言うドイツの家電メーカーである。実は、この企業は、エジソンとの関わり合いがある事は御存知だろうか?発祥について調べてみたら1883年にトーマス・エジソンの特許を取得したユダヤ人実業家・エミール・ラーテナウ(ドイツの政治家ヴァルター・ラーテナウの父親)は、Deutsche Edison-Gesellshaft(略称:DEG)を設立している。つまりドイツエジソン社と言う事だ!その後1887年にAEGへと社名を変更している。そして1994年からAEGは、スウェーデンのストックホルムに本社を置く世界的電機メーカー・エレクトロラックスの傘下となっている。現在は、「AEG」はエレクトロラックスの高級家電ブランドの名称となり、2005年からは、ブランド名を AEG-Electrolux へと変更し、本格的世界進出を図っている。

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WIHG WCD 15 CD 1993


これは、聴覚上だが、1930年代のマグネトフォンの録音と推察されるものである。事実、針音も無く回転系のムラもディスク収録のものとも違う!曲は、「フィガロの結婚」第3幕である。指揮は、クナッパーツブッシュだが、巨匠に在っては、珍しい曲では無かろうか?収録日を見ると1939年の8月21日との記載が在る。歌手の名を見るとMargarete Reining(S),Martha Rohs(S),Esther Rethy(S),Mario Stabile(Br),Ezio Pinaz(Br)の面々なので、ザルツブルク音楽祭の音源と見て良かろう!それで音の状態だが、思ったよりも鮮明な反面、とても不安定である。テープの保存状態は最悪である。音は絶えず変調しており、とても聴き辛い!それも大きくループして音が変動している。おまけに例の婚礼のダンスは途中からテープの片伸びと見られる音揺れもある。終始そんな感じなので演奏について報告するのは無茶かも知れぬが、一応の感想を述べるとスタービレの伯爵は堂々としているが、其の頃の歌手にしては、変な歌い崩しも無く好感が持てる。フィガロは、ピンツァだが、流石に戦前の当たり役を誇っただけの事は在る。軽やかな感じが其れらしい!それと女性歌手だが、配役の記載が無いので、誰が、どの役を歌っているかが全く不明である。従って批評の仕様が無い!巨匠の指揮は、要点を付いたもので、特に不満は無く、寧ろ良い印象が在るが、こうもテープの保管条件が悪いとどうしようもない!困ったものである。尚、CD化にあたっては、余計な補正を行っていないので、良好な箇所だけは鑑賞に耐える。取りあえず是は、現在の処聴ける最古のマグネトフォン音源である。敢えて価値が在るのは其の点だけである。他には、バラの騎士とフライシュツの抜粋が、カップリングされているが、他メーカーでも同様の箇所が既にCD化されており、後に紹介する予定もあるので割愛する。

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"Magnetophon" reel-to-reel tape recorder.
The Allgemeine Elektrizitatsgesellschaft [AEG]1935


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