藤崎竜・銀河英雄伝説13巻はキルヒアイスの悲劇と自由惑星同盟のクーデターである。ラインハルトは傲慢な君主になっている。キルヒアイスの死がなければ修復不可能になりそうである。
ヒルダが原作以上の役割を果たす。以前からアンネローゼと友人であったという独自設定を活かしている。ヒルダが皇后になることは外戚の権力増大の懸念かあり、オーベルシュタインは快く思わないだろうが、本作品の独自設定ではローエングラム家の私的に親しい存在として受け入れやすくなる。
オーベルシュタインは暗殺の首謀者の存在を指摘するが、それをあからさまに冤罪であると言う。オーベルシュタインを権謀術数の権化に描きたいのだろう。しかし、悪にも悪の美学がある。ヴェスターラントはブラウンシュバイク公が第一次的に責任を負うべき問題である。リヒテンラーデ公の陥れは相手も陥れようとしている相互主義の下で正当化される。

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