ガンダムF91はシャアの反乱(第二次ネオ・ジオンに抗争)後の世界を描いた宇宙世紀ガンダム作品である。ジオンに代わる新たな勢力を登場させた。コスモ貴族主義を唱えるクロスボーン・バンガードである。海賊をイメージする点は後の海賊党や尾田栄一郎『ワンピース』のブームを踏まえると先進的であったが、ジオンに匹敵する魅力は持てなかった。
コスモ貴族主義は民主主義が衆愚政治に陥ることへのアンチテーゼである。腐敗した民主主義と名君が統治する君主制のどちらが良いかは田中芳樹『銀河英雄伝説』も取り組んだ重要テーマである。しかし、宇宙世紀ガンダムシリーズで描かれた地球連邦のダメなところは衆愚政治ではない。中央集権的で硬直的な官僚制である。連邦は主権在民ではなく、スペースノイドへの差別と搾取で成り立っていた。この連邦の矛盾をジオンは突いていた。連邦よりもジオンに感情移入するファンが多いことも自然である。
富野監督は『逆襲のシャア』でアムロとシャアの物語に区切りを付けたのだろう。それ故に新たな作品では新たな勢力を登場させたのだろう。

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