銀河英雄伝説15。自由惑星同盟でクーデターが起きる。このクーデターは物語の流れで起こされた不自然さがある。しかし、良い君主制と悪い民主制のどちらがマシかという物語のテーマ上は意味がある。民主制の欠点として時間がかかることが挙げられる。しかし、救国軍事会議のように効率的な意思決定を導入したとしても良い政治になる訳ではない。新銀河帝国の成功はラインハルトやロイエンタールの公正さにある。
ヤン艦隊は惑星シャンプールのクーデターを鎮圧する。藤崎竜版では地上戦が詳細に描かれる。銀河英雄伝説の白兵戦と言えばゼッフル粒子を撒いて斧の戦いが定番であるが、ゼッフル粒子を充満できる密閉空間は限られている。そうではない通常の地上戦の現実を描いている。
その後はルグランジュ提督との艦隊戦を経て、アルテミスの首飾りを攻略する。これに対して藤崎竜版ではルグランジュ艦隊とアルテミスの首飾りは連携して防衛にあたっている。
ルグランジュ艦隊は全滅しないでクーデターが終わった。ヤン艦隊がルグランジュ艦隊全滅は、その後の同盟の戦力を大幅ダウンさせる結果になった。全滅させずに終わらせたことは一見すると賢い選択に見える。しかし、クーデターに同調する軍人は民主主義社会において有害であり、銀河帝国軍人以上に危険という発想がヤンにあったと考える。ルグランジュ艦隊を全滅させる苛烈さにヤンらしさを感じる。
情報部のバグダッシュがヤン艦隊に接触する。石黒版のバグダッシュは神谷明さんの声とあいまって印象的なキャラクターである。これに比べると藤崎竜版は存在感が薄い。

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