前述の原画展を見るために訪れた両国の回向院(えこういん)は、初めて訪れた場所で興味深いものにあふれていました。
昔は社会公共事業の資金を集めるために興行相撲が行われ、回向院は長くその開催場所だったそう。相撲には縁が深いのですね。

「力塚」なるものがあり、これは日本相撲協会が歴代の相撲年寄の慰霊に建立したもの。
船の沈没や天災で命を落とした方々の供養塔のほか、横死者の慰霊塔もあり、うまく言い表せませんが、慈しみの心を感じました。このようなところは、あまりないと思います。

そんなことはつゆ知らず(たぶん)遊ぶネコたちは、ここの子。
境内には犬猫や小鳥の慰霊碑も数多くあり、これまた珍しい。
塩地蔵、猫塚など、「見どころ」という言葉を使うのは変ですが、稀有なものがたくさんありました。もちろん古くから伝わるものばかりです。
そしてミーハーな私が気になったのは、鼠小僧次良吉の墓。
「汚職大名や悪徳商家からお金を盗んで貧乏人に配った」というのは残念ながら実話ではありません。次良吉は単なる盗人で、江戸時代は罪人の墓を作ることは禁じられていました。しかし、虚構の次良吉が歌舞伎や狂言の演目で人気を集めたため、祈願対象物としての墓の必要性が生じ、供養碑が作られたとのことです。

「次良吉の墓を欠いて財布や袂に入れておけば金回りがよくなる」と言われ、墓を欠く人が相次ぎ、「このままでは墓がなくなってしまう」と懸念されてお墓の前に「お前立ち(欠き石)」が建立されました。成就した人の奉納した欠き石は建て替えられ続けて現在までに数百基! 日本人、こういうの好きですね〜。私も好きです。さっそく欠いてみました。でも、カケラを取るなんて容易ではなく砂が浮いてくる程度。これじゃ持ち帰るのは無理だと思い、手に着いた砂を財布の内側に塗りました。でも、あとで人に話したら、砂状になったものを紙に包んで持ち帰るんだって。なーるほど。はてさて、ご利益はあるかしら?

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