「松本清張」の作品のうち、これまで文庫化されていなかった作品を集めた短篇集
『失踪 ―松本清張初文庫化作品集〈1〉』を読みました。
「松本清張」作品を読むのは、昨年の7月に読了した
『昭和史発掘(1)』以来なので、久しぶりですね。
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ある病院の院長と婦長が揃って失踪した。
数日後、今度はその病院の薬剤師が首を吊り、事務長が屋上から飛びおりた。
衰微から再び繁昌しはじめた病院の暗部に迫る叙述ミステリー
『草』、スクープを連発する新聞記者の謎をとく
『詩と電話』など、文庫版初登場の傑作短編ミステリーを4編収録。
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以下の4篇が収録されています。
■草
■失踪
■二冊の同じ本
■詩と電話
『草』は
『黒い画集』の一篇として1960年に発表された作品。
入院患者の視点から、衰微から再び繁昌しはじめた朝島病院で発生した一連の事件(院長と看護婦長の失踪(駆落ち?)、薬室主任と事務長の相次ぐ自殺、病院と麻薬団との繋がり)の顛末が描かれています。
まさか、その入院患者が…
「アガサ・クリスティー」の
『アクロイド殺人事件』に通ずるモノがありましたね。
ミステリー的な要素が強く、この短篇集の中で、イチバン好きな作品ですね。
『失踪』も
『黒い画集』の一篇として描かれた作品で、1959年の発表。
自宅を売却後に失踪した女性を巡る事件。
警察の粘り強い捜査による犯人逮捕を描きつつ、死刑判決を受けた犯人の冤罪を可能性を匂わせつつ終わるルポっぽい作品。
真相は藪の中… ですね。
『二冊の同じ本』は1971年に発表された作品。
偶然、亡き知人が所有していた二冊の同じ本を入手したことから、過去の殺人事件の真相を知ることとなる。
何も知らないと思っていた未亡人が実は真相を知っていた… 予想外で恐ろしいエンディングでしたね。
『詩と電話』は1956年に発表された作品。
地方都市に赴任した新聞社通信員
「梅木」と地元紙の通信員
「小林」の特ダネ争奪合戦… 事件が発生した際、常に他紙の通信員を出し抜く
「小林」に悔しい思いをしていた
「梅木」だが、偶然から
「小林」の情報入手方法の秘密を知り逆襲に転じる。
結果的に特ダネ入手のために、女性の心を弄ぶこととなります… 個人的には、後味が悪く好みではない作品でしたね。
個人的には好みではない作品があったものの、それぞれ十分愉しめる4篇でした。

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