「向田邦子」の
『蛇蝎(だかつ)のごとく』を読みました。
1981年にNHKの土曜ドラマ向けに書かれた放送台本を
「中野玲子」が小説化した作品です。
「向田邦子」作品は、時々、読みたくなるんですよねぇ… でも、思い起こしてみると2009年3月に読んだ
『眠り人形』以来なので、ほぼ2年振りの
「向田邦子」作品ですね。
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小心・真面目なサラリーマン
「古田修司」は、近く退社するという部下の女子社員と一世一代の不倫を計画していた。
だが、その当日、妻が会社に来る。
娘
「塩子」が妻子ある男
「石沢」と同棲を始めようとしていたのだ。
「遊びか、真剣か」とつめよる
「修司」に
「石沢」は
「遊びだ」とうそぶく。
不倫をテーマに、微妙な人間心理と家族のあり方を描く。
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娘を持っているわけじゃないんですが、、、
主人公の小心・真面目なサラリーマン
「古田修司」に感情移入して読むことができました。
親としての怒りや哀しみ、男としての欲望や苦しみ… 感情移入できたのは
「修司」の心の動きがとてもリアルに描かれている気がしたから。
女性である
「向田邦子」が、男性の気持ちを巧く表現できるのは不思議だけど、それが
「向田邦子」作品に共通することだし、惹かれる要因なんですよね。
好きだけど嫌い、嫌いだけど好き… 矛盾だらけの人間味溢れた魅力ある登場人物たち。
その登場人物一人ひとりの性格が巧く描かれていることや、台詞回しのテンポの良さも、他の
「向田邦子」作品と共通することですね。
作り物ではなく、生身の人間を感じさせる登場人物たち… そして彼(彼女)らの心の機微、特に男性の心の動きを的確に表現されていることには、本当に感心します。
台詞はテンポの良さでけではなく、ユーモアもふんだんに含まれていて、、、
当事者は真剣そのものなんでしょうが、傍から見ていると、クスッ… と、思わず頬を緩めてしまうような台詞があり、さすが
「向田邦子」作品だなぁ。 と感じながら、そして楽しみながら読みました。
あと忘れちゃいけないのが、女性の視点からのドキッ!とさせられる台詞。
女性って、そんな視点からモノを見てるんだ… 怖いなぁ… と思わせる台詞が
「修司」の妻
「かね子」や
「石沢」の妻
「環」から発せられるんですよね。
こんな台詞を読んでいると、男性の方が単純でわかりやすいなぁ… と感じます。
「乃木希典」と
「ステッセル」に例えられた
「修司」と
「石沢」が、たまたま交差点で出会い、握手をしようとした手を同時に引っ込め、やあと手を振って潔く歩み去るエンディングは良かったなぁ。
特にこの二人の関係が良かったし、印象に残った作品でした。

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