「米原万里」のノンフィクション作品(エッセイ?)
『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』を読みました。
2002年度第33回
「大宅壮一」ノンフィクション賞受賞作品です。
-----story-------------
ユーモラスに、真摯に綴られた、激動の東欧を生きた三人の女性の実話!
一九六○年、プラハ。
小学生の
「マリ」はソビエト学校で個性的な友だちに囲まれていた。
男の見極め方を教えてくれる、ギリシア人の
「リッツァ」。
嘘つきでもみなに愛されているルーマニア人の
「アーニャ」。
クラス1の優等生、ユーゴスラビア人の
「ヤスミンカ」。
それから三十年、激動の東欧で音信が途絶えた三人を捜し当てた
「マリ」は、少女時代には知り得なかった真実に出会う!
第三十三回
「大宅壮一」ノンフィクション賞受賞作。
-----------------------
小学生時代(プラハのソビエト学校)の級友三人の過去と現在について、それぞれ一篇ずつ物語が綴られています。
■リッツァの夢見た青空
■嘘つきアーニャの真っ赤な真実
■白い都のヤスミンカ
東欧の歴史や文化、民族、宗教等に関する知識が乏しいので、なかなか頭の中でイメージを膨らませることができませんでしたが、読みやすい文体で、街並みや風景から心理状態までが巧く描写してあり、異性の物語にも関わらず、意外と感情移入できました。
ドキュメンタリー作品として映像化したいなぁ… と思われる感じでしたね。
そして、著者の鋭い人間観察力に脱帽しました。
東欧のことについての知識があれば、もっと愉しめた作品だと思います。
祖国ギリシャの空を
「それは抜けるように青いのよ」と自慢し、勉強が苦手で性的知識が豊富なおませな少女だった
「リッツァ」、、、
実は奥手で晩婚、苦手な勉強を克服し、絶対にならないと言ってた医者になり、ドイツで開業医として活躍。
平気で嘘をつくけど、愛されるキャラクターで、共産主義の理想を主張しながら、自分は特権階級として豪華な邸宅に住んでいるという矛盾をもつルーマニア人の
「アーニャ」、、、
理想としていた共産主義の国を捨て、イギリス人と結婚し、イギリスで旅行雑誌の副編集長として活躍。
クラス一番の優等生で、美人で、絵画の才能も備え、いつも冷静沈着なユーゴスラビア人
「ヤスミンカ」、、、
自国に戻り、サラエボで民族紛争に巻き込まれたかと思われたが、ベオグラードにいて戦火を免れ、外務省で活躍。
(その後、ベオグラードもアメリカとNATOに爆撃されるのですが… )
それぞれ、波乱万丈な人生を歩み、居住地もバラバラですが、著者の粘り強い捜索に運も加わり、無事、三人に再会できたというのは、なかなか感動的でしたね。
でも、最も印象に残ったのは、
「ヤスミンカ」の父親が語る、十五歳でパルチザンに加わった経緯… 愛する生徒を守るために、自らが犠牲になった
「ボグダーノビッチ」先生の思い出話に心を打たれました。
平和な日本に暮らしていると、なかなか気付くことのない、切実な思いが感じ取れる作品でした… 平和ボケになっちゃいけませんね。

0