「横溝正史」の長篇推理小説
『犬神家の一族』を読みました。
「横溝正史」作品は2011年1月に読んだ
『悪霊島』以来… 久しぶりですね。
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信州財界一の巨頭、犬神財閥の創始者
「犬神佐兵衛」は、血で血を洗う葛藤を予期したかのような条件を課した遺言状を残して他界した。
血の系譜をめぐるスリルとサスペンスにみちた長編推理。
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「横溝正史」作品の中では
『八つ墓村』に次いで映像化回数が多い作品で、映画化3回、テレビドラマ化5回という著者を代表する作品ですね。
小学校の頃に観たテレビドラマ… 怖かったイメージがあります。
当時は複雑な人間関係は理解できておらず、全篇を通じたおどろおどろしい印象しか残っていませんけどね。
何度か映画やテレビドラマで観ているので、真犯人やマスクを被った
「犬神佐清」の正体等についてはわかっていましたが、、、
複雑な人間関係(犬神家の系譜)については、読みながら、徐々に思い出してきた感じです。
≪系譜≫
某
┃
┣━━━━犬神佐清
┃
┏犬神松子
┃
┃ 寅之助
┃ ┃
┃ ┣━━━┳犬神佐武
┃ ┃ ┃
犬神佐兵衛━ ╋犬神竹子 ┗犬神小夜子
┃ ┃
┃ ┃ 幸吉
┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┣━━━━犬神佐智
┃ ┃ ┃
┃ ┗犬神梅子
┣━━━━━━━━━━━青沼静馬
┃
青沼菊乃
野々宮大弐
┣………野々宮祝子━━野々宮珠世
晴世
「犬神佐兵衛」の子どもは、
「松子」、
「竹子」、
「梅子」の三姉妹と、
「青沼静馬」の4人なのですが、全て母親が異なるという異常な関係、、、
そして終盤では、
「犬神佐兵衛」と
「野々宮大弐」の関係が明るみになるとともに、
「犬神佐兵衛」に別な子どもがいたことが判明し、一層、複雑な相関関係が明らかになります。
複雑な関係を持った血縁者同士が血で血を争う状況と、真犯人の犯行を知った事後共犯者たちが死体を細工することにより、真相がわかり難くい構成となっており、なかなか愉しめましたね。
長閑な山村を舞台にした残酷な事件や地域の権力者を中心とした淫靡な人間関係、、、
そして、復員兵の心情、戦後の混乱等を巧く取り入れてあるところは
「横溝正史」らしい作品でしたね。
以下、備忘用に登場人物を紹介します。
「金田一 耕助(きんだいち こうすけ)」
飄々とした私立探偵。
「野々宮 珠世(ののみや たまよ)」
犬神佐兵衛の恩人・野々宮大弐の孫。
絶世の美女。
20歳前に両親を相次いで亡くし、大弐を恩人と慕う佐兵衛によって犬神家に引き取られた。
何者かが仕掛けた罠に3度も掛かるが、危機一髪で助かった。
後に公開された佐兵衛の遺言によって、自分が犬神家の遺産相続の鍵を握っていたことを知らされる。
「犬神 佐兵衛(いぬがみ さへえ)」
犬神財閥の創始者。
彼の残した遺言状が惨劇の始まり。
放浪の孤児だった佐兵衛は信州那須神社神官野々宮大弐に拾われ養育された。
生涯正妻を娶らず、娘の松子、竹子、梅子はそれぞれ違う女との間に生ませた子である。
「犬神 松子(いぬがみ まつこ)」
佐兵衛の長女。
夫とは既に死別している。
いつも凛とした佇まいをしている。
佐清を溺愛している。
「犬神 佐清(いぬがみ すけきよ)」
松子の一人息子。
ビルマ戦線で顔に火傷を負い、白いマスクを被った姿で復員。
その異様な外見から、映像化作品ではビジュアルが象徴的に用いられることが多い。
「犬神 竹子(いぬがみ たけこ)」
佐兵衛の次女。
小山のような体型。
直情的な性格である。
反松子。
「犬神 寅之助(いぬがみ とらのすけ)」
竹子の夫。
犬神製糸東京支店長。
「犬神 佐武(いぬがみ すけたけ)」
竹子の息子。
両親似で衝立のような体形。
「犬神 小夜子(いぬがみ さよこ)」
竹子の娘。
珠世ほどではないが美人。
気が強い。
「犬神 梅子(いぬがみ うめこ)」
佐兵衛の三女。
三姉妹の中では、一番美人。
末娘のためか、姉達に対する反感が強い。
反松子、反竹子だが、竹子と結託して松子を責める。
「犬神 幸吉(いぬがみ こうきち)」
梅子の夫。
犬神製糸神戸支店長。
「犬神 佐智(いぬがみ すけとも)」
梅子の息子。
よく動く目が、狡猾な両親に似ている。
「古館 恭三(ふるだて きょうぞう)」
弁護士。
古館法律事務所所長。犬神家の顧問弁護士。
佐兵衛より、遺言状の管理を任されていた。
殺された若林豊一郎に代わり、金田一耕助に調査を依頼する。
やがて金田一耕助に親愛の情を抱くようになる。
「若林 豊一郎(わかばやし とよいちろう)」
古館法律事務所に勤務。
犬神家の遺産相続問題に関して金田一に捜査依頼をするが、金田一と会う前に毒殺された。
「猿蔵(さるぞう)」
珠世の世話役の下男。
もとはみなしごだったため、子供の頃から祝子によって珠世と共に育てられ、珠世が犬神家に引き取られると、下男として犬神家に入った。
珠世に非常に忠実で、生前の佐兵衛から“命に代えても珠世を守れ”と命じられているため、珠世の身辺の世話だけでなく護衛も務め、作中でたびたび珠世を助ける。
「猿蔵」というのは本名ではなく、猿に似ていることから付けられた通称で、本名は不明。
粗野かつ無口で少し思慮が足りないが、力が強く、佐武や佐智も持て余している。
「宮川 香琴(みやがわ こうきん)」
松子の琴の師匠。
目が不自由。
「野々宮 大弐(ののみや だいに)」
那須神社の神官。
珠世の祖父。
故人。
犬神佐兵衛の恩人。
「野々宮 晴世(ののみや はるよ)」
大弐の妻。
珠世の祖母。
故人。
「野々宮 祝子(ののみや のりこ)」
野々宮夫妻の娘で、珠世の実母。
故人。
「青沼 菊乃(あおぬま きくの)」
佐兵衛のかつての愛人。
消息不明。
「青沼 静馬(あおぬま しずま)」
菊乃と佐兵衛の息子。
母同様消息不明とされている。
養子に出されており、本名は津田静馬。
年齢は佐清と同じ。

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