「アンデシュ デ・ラ・モッツ」の長篇ミステリー作品
『監視ごっこ(原題:geim)』を読みました。
「ヴィヴェカ・ステン」、
「カミラ・レックバリ」、
「オーサ・ラーソン」に続きスウェーデン作家の作品… 北欧ミステリが続いています。
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あなたに四〇〇ポイント差し上げます―ろくでなしの失業男
「ペテルソン」は絶頂にあった。
拾った携帯電話に届く
“ゲームに参加しますか?”という誘いに乗り、課題をクリアする。
イタズラを実行しただけで、金がもらえるのだ。
しかも彼の
“活躍”動画がネットに公開され、
「クール!」と評価されたのだ。
次第に課題の難易度は上がるが、賞賛の声も爆発的に増える。
が、指令が犯罪の域に達し、悪夢が待ち受けているとは…。
怒涛の日常逸脱スリラー!!
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本格的なミステリ小説ではないのですが、スピード感のある展開で一気に読ませる感じの作品… ゲームの世界と現実の世界が融合して、、、
そして、それをぶち壊したはずなのに、まだまだゲームは続くという恐怖感を残して向かえるエンディングは、なかなか良かった… 気分転換に軽く読むのにピッタリな作品でしたね。
■第一章 ゲームに参加しますか?
■第二章 トライアル
■第三章 本当にゲームに参加しますか?
■第四章 リスクをとるか、とらないか
■第五章 ゲーム開始
■第六章 ハンプティ・ダンプティでさえも……
■第七章 標的
■第八章 真の課題
■第九章 ゲーム失格
■第十章 冒険
■第十一章 ゲームの名前
■第十二章 ゲームの正体
■第十三章 心理戦
■第十四章 シロクマ
■第十五章 本当にリタイアしたいのか?
■第十六章 誰が誰の操り人形なのか?
■第十七章 復帰
■第十八章 本当に復帰したいのか?
■第十九章 潜入
■第二十章 報復
■第二十一章 エンド・ゲーム
■第二十二章 再出発
■訳者あとがき 真崎義博
「HP(ヘンリク・ペテルソン)」は、前科があり、失業中のダメ男… 彼は地下鉄で座席に放置されている携帯電話を見つける、、、
その携帯電話は最新の機種らしく、タッチパネルのスマートなデザインだった… これなら5百クローネくらいにはなるはずだと見込んだHPは、携帯電話を拾って持ち帰ろうとする。
「HP」がその携帯を調べていると、ふいにスクリーンが明るくなる…
「ゲームに参加しますか?」という文字が表示され、その質問の下にはイエス、ノーのアイコンが表示されていた、、、
ノーのアイコンに触れ、メニュー画面を探すが見つからない… そのうち再び表示された画面には
「ゲームに参加しますか?ヘンリク・ペテルソン?」とあった。
どうして自分の名前を知っているのか?不気味に思うHPだったが、今度はイエスを選んでみる… どうせ暇だし面白そうじゃないかと思ったのだ、、、
そこから、
「HP」のゲームは始まった… 画面に表示される通りのイタズラを
「HP」が実行すると、なんとお金が貰えるというのだ!
ゲームの参加者はプレイアーと呼ばれ、
「HP」の他にも大勢いるらしい… プレイアーにはユニークな番号が割り振られ、
「HP」は128番だった、、、
プレイアーはゲームの運営者であるゲームマスターから様々な課題が与えられ、それをクリアすると、ポイントが付与されて、そのポイントと同額のアメリカドルが口座に振り込まれるという仕組みだった… 最初は金目当てだった
「HP」だが、
「HP」の行為を撮った映像がウェブにアップされ、称賛のコメントが寄せられるとその賞賛のコメントが快感に変わっていく。
始めは見知らぬ男の傘を失敬するだけのささいなミッションだったが、やがて殺人未遂、破壊、テロへと課題はエスカレートし、単なるイタズラの域を越え犯罪行為そのものになっていく… それとともに賞金は増え、賞賛の声も大きくなり、
「HP」のランキングも上がっていくが、ミッションに失敗したり、ミッションを拒んだりすると見知らぬ者から自宅を放火されたり、彼に協力した親友
「マンガ」が経営する店舗が襲われたりする被害等が発生し、気付かぬ間に、常に見えない者から監視され、自分の意志でゲームを止めることができなくなる状態に陥ってしまっていた。
コンピューターオタクの
「マンガ」と刑事の姉
「レベッカ・ノルメン」を頼りに、
「HP」は見えない敵と向き合う決意をする、、、
物語は、主に
「HP」と
「レベッカ」の視点で進むのですが… 二人の物語が次第に交差して、前科モノで無職の
「HP」と身辺警護班のエリート部隊アルファ・グループに抜擢された真面目すぎるほど真面目な刑事
「レベッカ」という、まるっきり異なる性格の二人が、実は共通の暗い過去を持ち、強い姉弟愛で結ばれていることが徐々に判明する展開は、なかなか良かったですね。
現実にあるテロや殺人事件って、実は、何の思想もなく、動機もなく、何者かに操られた(監視された)人物がゲームとして参加しているだけじゃないか!? と感じてしまう、不思議な現実味のある作品でしたね、、、
電車に乗ると、乗客のほとんどがスマホの画面を見ていますからねぇ… この異様な光景を見ていると、そのうちの何人かはゲームに参加していても不思議はない感じがするんですよね。
身近に実際にあり得そうで… 読み終えてからゾクっとする怖さを感じました、、、
ゲームと現実の境目がない怖さですよねぇ… タイトルは原題のままの方がしっくりくる感じがしました。
以下、主な登場人物です。
「ヘンリク・ペテルソン(HP)」
失業男
「レベッカ・ノルメン」
警官
「マンガ(マンガリト)」
コンピュータ・ショップ経営。
本名はマグナス・サンドストレム/現在の名はファルーク・アルハサン

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