「小田実(おだまこと)」の紀行
『何でも見てやろう』を読みました。
先日読んだ
「沢木耕太郎」の
『深夜特急』でも紹介されていた一冊です。
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26歳のフルブライト留学生が、欧米・アジア22ヵ国を貧乏旅行したこの旅行記は、ユニークな
「世界現代思想講座」である。
著者が欧米のスマートな知識人と媚びることなく対等につき合い、垢だらけの凄惨なインドの貧困にも目をそむけることなく向き合う姿は、爽快で頼もしい。
アメリカの豊かさとその病根、人種差別を直視する痛烈で優しい眼は、ヨーロッパやアジアにも向けられる。
若者らしい痛快な笑いとセンチメンタルな涙、本物の、上等な知性と勇気のベスト&ロングセラー。
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1959年(昭和34年)、アメリカのフルブライト基金により渡米… その後、一枚の帰国用航空券と持参金200ドルで世界一周旅行に出かけ、一泊1ドルのユースホステルなどに宿泊しながら、世界のあらゆる人たちと語りあった旅を描いた作品、、、
現在のバックパッカーの先駆けともいえる旅…
「小田実」の名前を一躍有名にした紀行です。
■まあなんとかなるやろ―「留学生業」開業
■何でも見てやろう―美術館から共同便所まで
■「考える人」―いよいよ出発
■ビート猫・ZEN猫―アメリカ(猫)の悲劇
■ゲイ・バーの憂鬱―アメリカ社会の底
■アメリカの匂い―さびしい逃亡者「ビート」
■ヒバチからZENまで―アメリカの「日本ブーム」
■ハーバードの左まき「日本人」
―アメリカ人ばなれのした人たち
■幸福者の眼―アメリカの知識人
■松の木の下にウナギ―ニューヨーク貧乏案内
■フランス語を学ぶには―カナダ紀行
■芸術家天国
―ただし、あなたの原稿はハカリで計られる
■黒と白のあいだ―南部での感想
■「月世界」紀行―「文化大使」メキシコへ赴任す
■メキシコ天一坊―シケイロス氏らと会う
■「資本主義国」U・S・S・R
―一日一ドル予算の周囲
■Sick,Sick,Sick......しかし
―そしてオデュセウスの船出
■フィッシュ・エンド・チップス
―「怒れる若者たち」のなかみ
■あいるらんどのような田舎へ行こう
―ズーズー弁英語の国
■「求職」あるいは「おしのび」旅行
―北欧早まわり、オスロからコペンハーゲン
■金髪と白い肌は憧れる―「サムライ」の魅力
■ユース・ホステルの「小便大僧」たち
―ハンブルグ、アムステルダム、ブラッセル
■ビデとカテドラル―アメリカの女の子とパリを観れば
■「反小説(アンチ・ロマン)」の財布
―ロブグリエ氏会見記および世界各国作家清貧物語
■ニセ学生スペイン版―アンダルシア放浪記
■ビザを買う話―貧乏旅行の悲喜劇
■「ルパナーレ」の帽子―イタリア貧乏滞在記
■パン屋のデモステネス君、仕立て屋のアリストテレス氏
―ギリシア無銭旅行
■アクロポリスの丘―ギリシア、そして「西洋」の意味
■腐敗と希望―ピラミッドの下で考える
■ナセル氏「随行」記―エジプトからシリア、レバノンへ
■たがいにむかいあう二つの眼について
―イランの「外人」のなかで
■のぞきメガネ「ヨーロッパ」―テヘランをうろつく
■にわかヒンズー教徒聖河ガンジスへ行く
―ニュー・デリーからペナレスへ
■不可触賤(アンタッチャブル)小田実氏
―カルカッタの「街路族」
■アミーバの偽足―むすび・ふたたび日本島へ
■再訪
■あとがき・1
■あとがき・2
■あとがき・3
■解説 井出孫六
「小田実」が旅に出たのは60年近くも前のこと…
「沢木耕太郎」が旅に出る20年近く前のことですからね、、、
この時代にアメリカの基金を活用し、僅かな現金を持って、
「まあなんとかなるやろ」という心持ちで自由で冒険的な旅を実現できたことは驚きですね… しかも、アメリカに始まり、メキシコからヨーロッパ、アジアと東向きにぐるりと世界を一周して日本に帰ってきたんですからね、ホントに凄いと感じました。
アメリカを見たくなり旅を決意… 特にニューヨークの摩天楼とミシシッピ河とテキサスの原野というばかでかいものを見たかったという動機もなかなか大胆ですよね。
そして感じたのは、西洋(欧米)という一括りが考えてしまう地域も、国によって大きく文化や風習等が全く異なること、、、
便所、食事のマナー、コーヒーの習慣等々、私たちが西洋(欧米)では当たり前と、勝手に思っていることが、実は国によって様々で、洋式トイレと呼んでいる座って用を足すトイレもヨーロッパの南部では和式に近いトルコ式がスタンダードだったり、スープの飲み方や食事中にひじをつくことの是非等はイギリスとフランスで異なっていたり、アメリカでは食事をしながらコーヒーを飲むがフランスではコーヒーは食後に飲むし、そもそも、飲み物だってコーヒーだけでなく、紅茶からチャイ、カフェオレ、エスプレッソ等様々… 私たちが西洋(欧米)の常識と思っていることが、実はアメリカやイギリスでは常識でも、その他の国では非常識だったりするんだよなぁ。
でも、考えてみりゃ、東洋(アジア)だって、中東とインドと中国と日本じゃ全然違うし、もっともっと地域によって多様性がありますからねぇ、、、
ステレオタイプで物事を考えちゃダメですね… それを改めて教わった感じがしました。
読んでいて最も印象に残った地域はインド…
『深夜特急』と同じですね、、、
悲惨なもの、滑稽なもの、崇高なもの、矮小なもの… それらが全て目の前にあり、臭気と虚無感の漂う、他には比べ物のない異文化圏… 自分の中で消化しきれない、そんな胃が重たくなるような印象が残ります。
『深夜特急』と同様に、若い頃の読んでいたら、人生が変わったかもしれない… そんな想いを強く感じる一冊でした。
以下、旅の軌跡です。
【アメリカ】 ハワイ、シアトル、シカゴ、ボストン、ニューヨーク
【カナダ】 モントリオール、ケベック
【メキシコ】
【アメリカ】 ニューヨーク
【イギリス】 ロンドン
【アイルランド】 ダブリン
【ノルウェー】 オスロ
【デンマーク】 コペンハーゲン
【ドイツ】 ハンブルク
【オランダ】 アムステルダム
【フランス】 パリ
【スペイン】 マドリッド、コルドバ、ヘレス
【イギリス領ジブラルタル】
【スペイン】 トレド
【イタリア】 ヴェネチア、ローマ
【ギリシャ】 アテネ、ペロポネソス、ミコノス島、クレタ島
【エジプト】 メンフィス、カイロ
【シリア】 ダマスクス
【レバノン】 ベイルート
【イラン】 テヘラン
【インド】 ニューデリー、ベナレス、コルカタ

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