イギリスの作家
「R・D・ウィングフィールド」の長篇ミステリ作品
『クリスマスのフロスト(原題:Frost at Christmas)』を読みました。
『東西ミステリーベスト100』で海外篇の43位として紹介されていた作品、、、
「オリヴァー・ハリス」、
「ジム・ケリー」、
「P・D・ジェイムズ」に続き、イギリスのミステリ作品です。
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ここ田舎町のデントンでは、もうクリスマスだというのに大小さまざまな難問が持ちあがる。
日曜学校からの帰途、突然姿を消した少女、銀行の玄関を深夜金梃でこじ開けようとする謎の人物。
続発する難事件を前に、不屈の仕事中毒にして下品きわまる名物警部の
「フロスト」が一大奮闘を繰り広げる。
構成抜群、不敵な笑い横溢するシリーズ第1弾!
*英国ITVで1992年よりTVドラマ・シリーズ化
*第1位
『週刊文春』1994年ミステリーベスト10/海外部門
*第4位
『このミステリーがすごい! 1995年版』海外編ベスト10
*第8位
『日本推理作家協会全会員ミステリー通大アンケート 20世紀傑作ミステリーベスト10』海外部門
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イギリスの架空の地方都市デントン市を舞台にした警察小説… 1984年(昭和59年)に発表された作品で、名物警部
「ジャック・フロスト」を主人公としたシリーズの第1作目にあたる作品です、、、
よれよれのレインコートにえび茶色のマフラーがトレード・マークで、権威と規律が重んじられるデントン署内では異質の存在である
「フロスト」… きわどい冗談を連発し、服務規定を守らず、地道な捜査と書類仕事が大の苦手、上司の命令を平気で忘れ、叱責されれば空とぼけ、同僚に馬鹿にされればふてくされ、食らいついた相手にはしつこくつきまとい、ひとり暴走してはへまをしでかし、それをごまかそうと冷や汗をかきながら奔走する という、なんとも不器用で、恰好の悪い主人公なんですが、その、とても人間臭いところに惹かれ、そして、その格好悪さが、格好良く感じる、不思議な魅力を持った主人公でしたね。
12月21日、日曜日、ロンドンから70マイル離れた田舎町デントンに、
「クライヴ・バーナード」が降り立った… 彼はこれからデントン警察に刑事として赴任するのだ、、、
ところが彼を迎えに来たパトカーに
「「トレーシー・アップヒル」8歳が日曜学校から戻らず、消息不明」と無線連絡が入り、制服警官と一緒に通報した母親
「ジョーン・アップヒル」のもとに向かうはめになる… 結局、その日は
「トレーシー」は見つからず、日曜学校の周辺に怪しい人物が出没していたという情報もあったため、翌月曜日に警察署で改めて捜査会議が持たれた。
「ところで、巡査部長。会議室の方で「フロスト警部」の姿を見かけなかったかね?」
「いいえ、署長。見ていません」
「では、彼抜きで会議を始めることにしよう」
同じ月曜日、午前9時、
「クライヴ」は颯爽と初当庁する…
「マレット署長」の手が空くのをロビーで待っているとき、薄汚れたレインコートを着た男が駆け込んできた、、、
えび茶のマフラー、よれよれのレインコートとスーツ、だらしない恰好の40代後半の男… どうやら
「マレット署長」の新車のブルーのジャガーに車をぶつけてしまったらしい。
その男に巡査部長が言う、
「署長が、あんたのことを捜していたぞ」
「そうだった、捜査会議があったんだ。なんとまあ、すっかり忘れてたよ」
この胡散臭い男こそが
「ジャック・フロスト警部」だと聞いた
「クライヴ」は、あんな冴えない男でさえ警部になれるデントン警察署のレベルに思いを馳せるのであった… しかし、このときまだ
「クライヴ」は、自分が
「フロスト警部」の指揮下に入るとは夢にも思っていなかった、、、
田舎町でも事件は待ってくれない… 消息不明の
「トレーシー」は見つからず、銀行の玄関を深夜金梃でこじ開けようとする謎の人物出没したり、
「フロスト警部」の小銭が紛失したり、ホームレスの
「サム」が死体で発見されたり、
「トレーシー」の誘拐犯を名乗る男から電話があったり、バスキン・エレクトロニクス社の小型電子計算機の連続盗難事件の捜査を優先的に進めるように指示されたり、手錠をはめた白骨死体が発見されたり、そして、署員の残業手当の申請漏れの対応――と、もうクリスマスだというのに大小様々な難問が持ちあがる。
おりしも、
「フロスト警部」と同じ警部職の
「アレン警部」が体調を崩し病欠となり人出が足りない… ワーカーホリックの
「フロスト警部」は殆ど休憩も取らず、慌ただしく複数の事件の陣頭指揮を執ることになる、、、
「マレット署長」の嫌味をジョークと下ネタでかわし、滞る書類は必ず提出するからと言って待たせ、
「トレーシー」捜索のために大雪をラッセルして捜し、捜査をしている同僚に背後から迫り指でカンチョーをお見舞い… 捜査は混迷、迷走、真面目な
「クライヴ」は翻弄され続ける。
徹夜にも負けず、空腹にも負けず、12月のデントンを駆け回る
「フロスト警部」は、全ての事件を解決することができるのか!?
ある事件を捜査していたら新たな事件がみつかり、新たな事件を捜査していたら別な事件の容疑者を逮捕できたり… と、ドタバタ的な展開ですが、、、
「フロスト警部」は、幸運にも救われながら、一つひとつの事件を解決に導き… そして、白骨死体発見を契機として捜査を始めた、30年以上前の1951年に発生したベニントン銀行デントン支店の出納係
「ティモシー・フォーカス」が行方不明となり、二万ポンドの現金が奪われた事件の真相に辿り着くことで、命の危険に晒される。
第1作目でシリーズが終わっちゃうんじゃないか… と思わせるようなエンディングでしたが、、、
続篇が出ているので、
「フロスト警部」は一命を取り留めたんでしょうね… 面白かった、500ページを超える大作でしたが、長くは感じませんでしたね。
長篇6作品が発表されているようなので、他の作品も読みたいです。
以下、主な登場人物です。
「ジャック・フロスト」
警部。主人公
「アレン」
警部
「ジョニー・ジョンスン」
巡査部長
「ビル・ウェルズ」
巡査部長
「アーサー・ハンロン」
部長刑事
「ジョージ・マーティン」
部長刑事
「マレット」
警視。署長
「クライヴ・バーナード」
巡査
「キース・ストリンガー」
巡査
「ヘイゼル・ペイジ」
婦人警官
「ジョーン・アップヒル」
娼婦
「トレーシー・アップヒル」
ジョーンの娘。八歳
「スタンレィ・ファーナム」
英語教員
「ミッキー・ホスキンズ」
前科者
「マーサ・ウェンデル」
霊媒
「オードリー・ハーディング」
トレーシーの友人
「サンディ・レイン」
記者
「サム」
浮浪者
「ジェームズ・ベル」
教会区司祭
「ティモシー・フォーカス」
銀行の出納担当者
「ルーパート・ガーウッド」
ティモシーの部下
「サミー・ジェイコブズ」
投資コンサルタント

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